コンボイス: リレー連載『リジツレ』


◆リレー連載『リジツレ』◆
コンボ理事のみなさまはそれぞれの分野において第一線で活躍している方々です。
「リジツレ~理事の徒然(つれづれ)~」は、そのようなみなさまの人となりが垣間見えるような、アットホームな雰囲気のエッセイをリレー連載するシリーズです。

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第11回『渡り鳥生活』
桶谷肇さん(NPO法人コンボ理事)
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(日本海の夕陽)

コロナ禍により、リモートワークが一般的になり、多くの職場で導入されました。

1980年にベストセラーとなったアルビン・トフラーの「第三の波」では、来るべき情報化社会ではリモートワークが一般的になると予想していました。当時は、ようやくワープロ専用機が普及しだしたころで、インターネットもなかった時代でした。1995年にWindows95が発売され、インターネット普及のきっかけになりますが、トフラーは何年も前からそれを予想し、40年後にその予言が現実化したということになります。

私自身も、コロナによる緊急事態宣言が出される1か月ほど前に2週間ほど入院することがあり、そのままリモートワークになりました。地理的な束縛がなくなったので、誰も住んでいない実家の管理と療養を兼ねて夏の期間は田舎で過ごすことにしました(最近では2拠点生活というらしく少し流行っているとか)。

リモートワークは、働き方の自由や生産性の向上といった効果をもたらす反面、社交性を奪っていくようなところがあります。夏の田舎暮らしでは1日30〜40分程度の散歩と近くの小さな畑に通うのが日課です。感染の心配は少なくなりますが、人との交流は薄らいでいくばかりです。昨年3月で定年退職してからは、さらにその傾向が高まっており、もともと社交的でもない性格がますます固定されていくような気がします(それはそれでいいと思っていますが…)。

緑豊かな自然に囲まれ、心地よい日差しや風景、穏やかな暮らしといった田舎ならではの暮らし方は、とても新鮮です。春の山には、ワラビやゼンマイ、ウド、タケノコ、山椒、野いちご、桑の実などが採れます。畑では、トマトとなす、キュウリ、スイカを作りました。海にも近い砂地のようなやせた土地で、さらには天候に左右されるので、収穫は予想以上に少なく、買った方が安いのではという話もありますが、それはそれでよしとしています。田舎暮らしを堪能してみるというのがそもそもの目的だからです。

夏は田舎、冬は関東での生活という渡り鳥のような生活をしてみて、異なる視点から人生を見つめ直す機会になりました。社会的な変化やライフスタイルの選択肢が増える中で、柔軟で自由な生き方が、より多くの人にとって魅力的に映るのも納得です。

今後、この渡り鳥生活がどうなるのか、いつまで続くのか、それとも何か新しい道が見つかるのか、結論が出るまでは続けることになりそうです。

(2024/01/19配信)

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