コンボイス:リレー連載『リジツレ』第4回


◆リレー連載『リジツレ』◆
コンボ理事のみなさまはそれぞれの分野において第一線で活躍している方々です。
「リジツレ~理事の徒然~」は、そのようなみなさまの人となりが垣間見えるような、アットホームな雰囲気のエッセイをリレー連載するシリーズです。

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第4回『私が取り組んでいること』
宮本有紀さん(東京大学大学院医学系研究科 精神看護学分野准教授)
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(ラベンダーの花言葉は「沈黙、静寂」)

「相手の声に耳を傾けること」(相手の話を聞くこと)、とても大事なことだと思っているのですが、これがなかなかできない、、というのが私の実感です。相手の話を一生懸命聞いているつもりでも、あー自分もこういうことあった、とか、自分だったらこういうときにどうするだろう、とつい自分の考えにひたってしまったり、このあとなんて返すといいかな、なんて考えてしまって気付けば相手の話を聞くことよりも自分の返答を考えることに頭が回転してしまっていたり。

こういうことをしてしまっているということに気付くようになったのは、黙って相手の声に耳を傾ける・黙って相手の話を聞く、という練習を、「意図的なピアサポート」の勉強会やワークショップでするようになってからです。言葉を発さず、ただ黙って相手の話を聞く、という練習をしたときに、いつもだったらなんて返そう、と考えてしまっていたということに、何も言わずに聞く(=何も言うことなく聞いていて良い)という設定の中で気付いたのでした。

また、いつもだったら相手の話から自分の知りたいことを聞きたくなって相手に質問してしまったり、促しの相槌を入れてしまっていたけれど、それをせずに黙ってそこにいて聞いていることで、相手はご自身の中にある自分の声に近づいていけるのだなということに気付きました。これまでの私の質問とか相槌は、必ずしも相手の話したい方向ではなく、相手が話しているときに口を挟むことで相手の話の腰を折ってしまったり方向を変えさせてしまったりしていたこともたくさんあったのだろうということにも気付きました。そして、この練習で自分が話す側になったときに、相手が何も言わずにただ聞いていてくれることで、相手の反応や質問に気を遣って話の方向を変えたりすることなく、自分の心に出てきたことを見つめることができて本当の自分の思いに気付くという、自分の話をただ聞いてもらう側の体験もしました。

黙って相手の声に耳を傾けるという練習をして以来、こんな風に誰かの話に口を挟まずにただそこに存在し、その人が自分の心の声に出会えるような話の聞き方をできるようになりたいなと強く思うようになりました。でも油断するとすぐにいつもの聞き方に戻ってしまい。「話を聞く」って、一見簡単だけど、練習をして修行し続ける必要のある奥深いものだと思っています。

(2022/06/23配信)

 

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