特集2 セルフケアって何?(227号)


特集2
セルフケアって何?(227号)

○「こころの元気+2026年1月号より
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筆者白石弘巳
埼玉県済生会 なでしこメンタルクリニック院長


理想は「一無二少三多」

こころと体のセルフケアとは、「人が自分の健康を維持・回復・改善するために主体的に行う行為」を指します(WHO〔世界保健機関〕の定義)
その理想は、日本生活習慣病予防協会が提唱している「一無二少三多」の生活かもしれません。

ここで
一無」とは禁煙、
二少」とは控えめの飲酒と腹八分の食事、
三多」とは、「多動」「多休」「多接」すなわち、「よく活動し」「よく休息し」「よく人と接する」ことです。

よい生活習慣は、よい体を維持し、ストレスに強いこころを作るという意味でこころのケアにもなります。

ただ、これは誰もがめざすべきセルフケアの「理想」です。
その大切さは言うまでもありませんが、「優等生」になるのはけっこう大変です。

 

「アドリブ」のセルフケア

こころと体のセルフケアを考えるときには、「アドリブ」のセルフケアが必要です。

「アドリブ」とは、演劇などで台本にないせりふや演技を、その場の雰囲気に合わせて即興で加えることを指します。
「アドリブ」のセルフケアとは、そのときの自分の状態に合わせて、そのときにできる方法で行うセルフケアです。

たとえば、
「今日は疲れたな」と思ったら、いつもと違う(ちょっと高級な)入浴剤入りの風呂につかってゆったりと体を伸ばすことなどは、体だけでなく、こころのセルフケアにもなります。

「アドリブ」のセルフケアは、「一無二少三多」を参考にしながらも、その人ならではのスペシャルなケアです。
そして、始まりは「アドリブ」でも、自分によいものを「元気に役立つ道具箱(※)」にたくわえていけば、いつかは「セルフケア名人」と呼ばれるようになる日が来るのではないでしょうか?

(※元気に役立つ道具箱自分の元気を回復するための行動計画「WRAP(ラップ・元気回復行動プラン)」で作る、自分が元気になるための方法や工夫をまとめたもの)

 

こころがネガティブになったときのセルフケア

日常生活では不安や後悔などネガティブな感情がぬけず、つらい思いをすることが少なくありません。
そうした場合のセルフケアについて考えてみたいと思います。

ポジティブ見つけ

まず、つらい感情に向き合い、その感情が生じた事実を客観視して、自らその意味に関する認識を変えることが有効です。

たとえば、「コップに水が半分」という事実に対して、
「半分しかない」とみると悲観的な感情が生まれますが、「まだ半分もある」とみると「だから心配いらない」という安心の感情が生まれます(認知行動療法的アプローチ)。
経験からポジティブな意味を見つけることがうまくなると、ストレスに負けにくくなることが期待されます。

時間稼ぎ

また、他に目を転じることにより、不安や後悔などの影響を減らす試みも有効です。
そうした感情はふつう時間が経つと薄れていくので、それまで時間稼ぎをする感じです。

具体的には、音楽を聴いたり、映画を観たりするような目や耳などの感覚器官を使う活動
散歩やストレッチなどの運動器官を使う活動
おしゃべりなどの言葉を使う対人交流などがあげられます。

さまざまなレパートリーの中から、そのときの自分の状況にあった方法を選ぶとよいでしょう。
これらを行って一晩よく眠ると、翌朝にはだいぶ気持ちが楽になっているはずです。

 

セルフメディケーション(自己治療)は医師と相談

最後に、セルフケアの一つの方法とされるセルフメディケーション(自己治療)について触れておきます。

セルフメディケーションは「自分自身で病状を判断し、医薬品を用いて回復をはかること」です。

症状に気づいたら、軽いうちに服薬をして早期に回復させることは大切ですが、薬の中には依存性があるものや副作用が問題になるものもありますので、薬を用いるセルフケアについては、主治医の先生と相談して行うようにしてください。

 


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