特集2 具合が悪い人への関わり方の基本(183号)


特集2  家族やまわりの方へ
具合が悪い人への関わり方の基本(183号)

※「こころの元気+」2022年5月号より
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著者:高森信子(SSTリーダー)

 

▼Aさん(母親)の相談

昨年のことですが、家族SST(※)で長いおつきあいのあるご家族Aさん(母親)から相談を受けました。
(※家族SST:回復力を高める家族の接し方のトレーニング)

「38歳の次女が、親友の突然死の知らせを受けてから調子を崩し始め、アルバイトも辞めてしまいました。
主治医からは強く入院をすすめられています。
娘は大学2年で、統合失調症を発症以来、調子の波はありましたが、薬をのみながら今まで入院せずにやってきました。
私は主人の協力もあるので、何とか入院させずにこの危機を乗り越えられたらいいなと願っています。
娘も『入院したくない』と言っています。私達夫婦に必要な心構えを教えてください」と。

こんな相談を受けたのは、私も初めてです。
あえて看護の重荷を背負い、娘さんを守ろうとするAさんの覚悟に、私は胸を打たれました。

▼私の提案

〇娘さんは服薬できる人なので、病状に関しては主治医に報告しながら指示を受けること。
〇「治してやる」の姿勢でなく、娘さんのレベル(現在位置)に合わせて今を認める。
〇とことん話を聴いて、寄り添って共感する。指示、忠告、指導をしない。
〇理不尽な要求でも、実現できることなら、その希望に添ってあげる努力をする。
〇不安そうなときは、そばにいてあげる。「大丈夫よ。守ってあげるよ」と言う。
〇不調のもとは脳の疲れだから、脳を休ませることに意識を持っていく。
〇「今は充電するときだから、がんばらなくていいんだよ。ゆっくりしていいんだよ」と言う。

以上のことを伝えた後、私はAさんご夫妻の娘さんに対する関わり方を確固とするために、よい精神科の先生が急性期の患者さんにどう接しているのかを知ってほしいとの思いで、
『急性期治療を再考する』(発行・日本評論社)の中の横田泉先生(オリブ山病院)の文を読んでいただくことにしました。

▼3か月後Aさんから

3か月経ってAさんの笑顔と出合いました。
Aさんの報告です。

「3か月かかりましたが、娘は入院せずに、すっかりよくなりました。
私が決心してやったことは、とことん娘の話を聴いたことと
『家のまわりにストーカーがいるので怖くて家にいられない』と言うので、1週間ほど2人でホテル暮らしをしたことです。
結果として親子の信頼関係がしっかりできて、娘は統合失調症の発症前に戻ったようです。
主人の協力はとても助かりました。
横田先生の力は、よろけそうな私の背骨をしっかりと支えてくれました。
本当にありがとうございます。これで私も親として、少し成長したと思います」

この報告に私もどんなにうれしかったか。
私もAさんと一緒に成長したと思います。

▼薬をのまなくなったBさん

次は薬をのまなくなったBさん(40歳男性)の例です。

あるとき突然Bさんのお母さんから電話がかかってきました。
初めてのことです。

「助けてください。息子が薬をのんでないのです。
動作が荒々しくなって、落ち着かなくて、主治医は『もう入院しか手がない』と言うんです」
切羽詰まった声でした。

Bさんは、以前SST(社会生活スキルトレーニング)に参加していた方で、家業を手伝うようになってからは、時々メールで近況報告が来たり、つながりのあるメンバーさんです。
私は仕事帰りに、Bさんのお店に寄り、お母さんと3人で話し合うことにしました。

Bさんの主張は、
「僕はここのところ、薬を少しずつ減らしてきて様子を見てきた。
今、最後の段階に入って薬なしの自分になった。
僕の希望なんだからお母さんは黙っていてほしい。
僕だって薬なしの日々は不安なんだよ。つらいんだよ。
でも、薬のいらない自分にしたいんだよ」
とのこと。

健康な心とは

私が
「健康な自分になりたいんだよね。お母さんだって、私だってそう思う。
で、今の話に関連した話なんだけれど、精神科医の小倉清先生が
『健康な心とは、
①不安のコントロールができる、
②怒りのコントロールができる、
③状況変化に対処できる、
④人への気配りができる…』
って話されたんだけれど、Bさんは、④の人への気配りは100点よね。
後はどうかな?」と聞くと、
Bさんは、
「僕を一番理解してくれた近所のおじさんが最近孤独死して、すごいショックを受けて、不安がある」
と言うのです。

私は、
「あ、それは大好きなおじさんが亡くなったという状況変化に対処できなくて不安になったということ。①と③に問題ありなのね」
そして私が、
「ではここで場面を変えます。
ここは診察室。Bさんは精神科の先生。
ここにBさんという患者さんが来て、今のおじさんの孤独死と不安の話をしたら、先生のあなたはどうする?」
と問いかけると、
Bさんは「薬を出します」と言うのです。

賢明なBさんです。

以来Bさんは、自分が精神科医の目で自分を見て、薬を必要としてのんでいます。

薬を嫌がる当事者の方は、命令されると反発します。
小倉先生(クリニックおぐら)の「健康な心とは」のこれらの言葉を利用して、
自分から答えを出させる工夫に、ご家族やまわりの方も挑戦してみませんか?


▽この特集の著者、高森信子さんの本とDVD

①コミュニケーションの基本がつまったコンボのロングセラー
書籍『あなたの力が家族を変える
著:高森信子  定価:1467円(税込)

高森信子さんは、接し方に特化した研修会を数多く行っています。そのため、人がどのように接したら病気の方の回復力が高まるのかということを熟知しています。
接し方にはコツがありますが、自分ではなかなか見出すことができません。
そんなコツも含め、具体的な内容が数多く紹介されています。
なお、この特集は、この本とあわせてお読みいただくとより理解が深まることでしょう。

②高森信子さんの「こんぼ亭」講演会のDVD
DVD『回復力を高める関わり方の基本

施設職員、医療関係者にもぜひ知ってほしい
こんなことをお伝えするDVDです。
●ほめて認めてあげてください。
●相手の気持ちをわかるための大切なポイントを伝えてください。
関心表明、反復確認、話が具体的になる質問、共感の言葉、自分の考えなど
●指導員にならず、支援者になってください。

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電話047-320-3870でも申し込めます。

 

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