コンボイス:『推しコンボ』


◆『推しコンボ』◆
NPO法人コンボではこれまで様々な書籍やDVDを制作・発行してきました。「推しコンボ」では、関係者による制作裏話、著者や読者による当時や現在の「思い」などとともに、それらを紹介していきます。

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第5回 『精神障害をもつ人のためのわかりやすい障害年金入門~申請から更新まで~』(増補改訂版)
(推す人:コンボ代表理事 宇田川健)
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私がこの本を推す理由は以下のとおりです。

障害年金についての不確かな情報や人からの口伝えの情報でまどわされ、強い不安に襲われていた友人のAさん。Aさんは就労に挑戦しました。今も雇用されています。ただ障害年金が止まるのではないかと、常にとても不安でした。

収入が多くなると年金が止まると人から言われました。Aさんの収入は節約すれば生活できるくらいです。どれくらいの収入金額があると障害年金が止まるのかいつもビクビクしていました。

また、担当のPSWからこのままでは障害年金は止まると言われて、途方に暮れていました。Aさんは、障害年金の手続きをしているのですが、先が見えないので圧倒的な壁を感じてしまっていました。

たとえ一時期収入が増えたとして、障害年金が止まったりしたら、のちに仕事を失って収入が途絶えてしまったときにはどうしようと、いつもとても不安でした。

そんな強い不安に襲われているAさんにこの本をわたしてみました。しばらくしてホッとした声で「担当のソーシャルワーカーさんと読む」と言ってきました。

正しい知識は力だ、知識は武器になると私は思いました。

こういう話は障害年金あるあるなのかもしれません。目次を見ただけでも、障害年金についての不安を払拭されるような一冊です。(個人の感想です)

◎『精神障害をもつ人のための わかりやすい障害年金入門~申請から更新まで~』(増補改訂版) → 詳しくはこちら

 

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第4回 『統合失調症の人が知っておくべきこと』
(推す人:「こころの元気+」編集担当 丹羽大輔)
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コンボは、2007年(今から15年も前のことですが)に『こころの元気+』を創刊した当時から、多剤大量処方の弊害や、それによって引き起こされる身体合併症のことについてさまざまな情報提供を続けてきました。

私はコンボが設立される以前から、どうも精神疾患の人は、身体合併症とか突然死で亡くなる人が多いなあ、と不思議に思っていました。その当時は多剤大量処方が今以上に横行していたので、その原因は大量に服用させられる薬のせいなんじゃないかと思っていました。でも、それを証明するような疫学的な調査は日本では行われていなくて、その因果関係を明らかにする研究もありませんでした。

ところが、その後、海外からさまざまなデータが出てくるようになりました。— 抗精神病薬を服用している人は、そうでない人よりも心臓突然死のリスクが高まる、抗精神病薬の服用量が増えれば、突然死のリスクは高まる、抗精神病薬の併用数が増えるほど死亡リスクが高まる、というものでした。

これには驚きました。日本のように、多剤大量処方という文化のある国では、当事者にとっては、医者の言うままに薬をのんでいたら、健康を損ねてしまう可能性は極めて高いと言わざるをえないのです。かつて抱いていた「薬のせいなんじゃないか?」という疑問は、「やっぱり!」に変わりました。

そうした現状に医師が関心を持たないのであれば、当事者自身がその事実を知っておくべきでしょうし、理論武装をする必要があります。「統合失調症の人が知っておくべきこと――突然死から自分を守る」という直球のタイトルもその思いをそのままタイトルにしたものです。

現在は処方される薬の剤数に制限がかけられるようになっていますが、それでも薬の量が多すぎて副作用に困っている人は後を絶ちません。この本は2013年に発行されたものですが、残念ながら、今現在読んでも必要な情報であるといえる本なのです。この本を引き続き推します!

◎『統合失調症の人が知っておくべきこと』 → 詳しくはこちら

 

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第3回   ACTブックレットシリーズ 1&2
(推す人:ACT-IPSセンター 久永文恵)
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※ACT = 「アクト」

ACTブックレット1 『ACTのいろは』

ACTブックレット2 『ACTの立ち上げと成長』

コンボでも何度も紹介してきたACT(Assertive Community Treatment:包括型地域生活支援プログラム)。コンボの使命のひとつに「科学的な根拠に基づく精神保健医療福祉サービスの普及活動を進める」とありますが、ACTはこのサービスのひとつです。

この2冊はタイトルにもあるように、ACTをわかりやすく解説し、少しでも日本全国に広がるといいなという思いで、ブックレットシリーズとして発行したものです。当時は「ACTって耳にすることが多いけど、なんだかよく分からない」「ACTを始めてみたいけど、何から取り掛かればよいのか…」というような声が多くあり、それに応えるべく慣れない本作りを進めていました。予定していたスケジュール通りに進まず、「早く出版しないと」という気持ちばかりが焦っていたことを思い出しますが、全国でACTを実践している方や利用している方など、多くの関係者の方々の協力・応援をいただいて、無事に完成させることができたものです。特に、ACTの利用者さんがどんなふうにご自身の体験をイラストにするのだろうと、作品が届くのを楽しみにしていました。

でも、どうして発行から10年近く経つのにこの2冊を推すのでしょう?

このブックレットを発行したときに比べると「アウトリーチ(訪問型の支援)」の実践が広まってきたという印象があります。アウトリーチによる支援を受けたことがあるという方々も周りに増えてきました。「ACT」と耳にすると、ACTのプログラムの「型」を作らなければいけないと考えがちですが、このブックレットにはアウトリーチを実践する上での大切な基本姿勢やスキル、チーム作りの苦労や工夫など、役立つ情報が満載です。地域で利用できるサービスが増えること、そしてアウトリーチが当たり前のサービスのひとつになることを願いつつ、この2冊を「推し」ます!

ACTブックレット1『ACTのいろは』 → 詳しくはこちら
ACTブックレット2『ACTの立ち上げと成長』 → 詳しくはこちら

 

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第2回 『メンタルヘルス相談室』
(推す人:「こころの元気+」編集担当 丹羽大輔)
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皆さんは、メンタルヘルスマガジン『こころの元気+』の中に、「おこまりですか? では他の人に聞いてみましょう!」という連載コーナーがあるのをご存じでしょうか? このコーナーはいわゆるQ&Aというやつです。読者から寄せられた生活上の悩みに、読者が回答する、というものです。

このコーナーは世間一般のQ&Aとは一味も二味も違っています。普通のQ&Aは、1つのお悩みに、1人の専門家が回答する、というものです。ところが、このコーナーは、1つのお悩みに、5人の当事者が回答するのです。ある意味、前代未聞のQ&Aと言っても過言ではありません。

なんでそんなスタイルになったのか? その答えは簡単です。悩みに対する対処方法というのは1つだけじゃないからです。しかも、回答している当事者は似たような体験を潜り抜けてきているので、自分なりの対処方法を伝えることができるわけです。5人の回答者がいれば、5つの答え――というか体験を共有することができます。

5つの答えがあると、おもしろいことがおきます。たとえば、「〇〇をした方がよいだろうか?」という質問に対して、1人は「した方がよい」と答えるし、1人は「しない方がよい」と答えるし、1人は「両方の折衷案がよい」と答えるし、1人は「どっちでもよい」と答えるし、1人はまったく別の方法を提示するし、いくつもの道が見えてきます。

コンボでは、この連載を1冊の本にまとめた「メンタルヘルス相談室」という本を出版しています。実はもう11年も前に出版した本ですが、生活上の悩みは何年たっても変わらないわけですから、内容はまったく色あせていません。質問総数36に対して回答総数は はなんと167もあります。

この本は、仲間の悩みに大勢の仲間が答えるというスタイルで、これもピアサポートの1つだと思います。

何か生活上のことで困ったときに、手元に置いておくと、心強い本だと思いますので、『こころの元気+』の編集に長年携わった私が、皆さんにぜひぜひご活用いただきたいと思って、推します!

◎『メンタルヘルス相談室』 → 詳しくはこちら

 

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第1回 まんが『うつまま日記。』
(推す人:コンボスタッフA)
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『うつまま日記。』は、その名前のとおり、うつ病をかかえながら育児をしている原作者まつもとあけみさんの体験をマンガにしたものです。
この本のテーマのひとつに「産後うつ」があります。発売当時、チラシを置いていただけないかと、いくつもの産婦人科に電話をしましたが、引き受けていただけるところはほぼありませんでした。
その理由として「赤ちゃんができて家族じゅうで喜んでいる時に、「うつ」の話なんか持ち出せない」ということをおっしゃった方がいました。
「産後うつ」が何か「タブー」のように扱われているのだろうかと思ったのをよく覚えています。
時は流れ、現在では子育て支援の一環として産後うつについての情報提供もすすんできているようです。まつもとあけみさんが体験した「うつまま」としての悩み、苦労、そして子育ての喜びは、今も変わらず、沢山の方に共感していただけると思います。
推しです!

◎『うつまま日記。』 → 詳しくはこちら