病識のない息子(Q&A)


「こころの元気+」2011年1月号(47号)「おこまりですか? では他の人に聞いてみましょう!」より

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Q 病識のない息子への対応


私は統合失調症になって6年目になる息子の父親です。

息子が、どうしても病識を持つことができず(自分が病気だと思っておらず)困っています。

昨年、3か月ぐらい無理矢理のように医療保護入院させたのですが、退院が早すぎたのか、結局しっかりした病識(自分が病気だという認識)を持つことができないまま退院したため、1,2か月は服薬・通院をしていたのですが、どう説得しても服薬も通院もしなくなり、親が代わりに病院に行き、現在の病状を伝えて薬をもらっている状況です。

だから薬も、本人には内緒で食べ物に入れている状況が昨年から続いています。
しかし、いつまでもこの状況を続けるわけにもいかず、本当に困っております。
どのようにすればよいのか途方に暮れています。
何かよいアドバイスをお願いしたいと思います。


A 知ることから始める
小松達也さん(千葉県)

まずは、息子さんと一緒に統合失調症に関する本などを読み、「科学的な医学知識」を「共有する」ことから始めてみてはいかがでしょうか。
でも、病識のない息子さんは、机に着くことさえいやがるかもしれません。
しかし、「自分の何かがおかしいな」ということにはきっと気がついていると思います。
だから、押し付けにならないように、「ともに」という気持ちをお父様がしっかりと持って、根気強く働きかけを続けることが必要だと思います。

息子さんは、きっと孤独感を強く持っています。
そんなときに、「いつでもあなたとともに」という気持ちが伝われば、きっと息子さんの心は、徐々に病気へも開かれていくと思います。

どんなことにも通じることですが、ある物事に納得してそれを受け入れるためには、その対象に関する正しい知識が必要だと思います。
特に精神疾患の場合、いざその病気になってから存在を知るということも珍しくないのです。

だから、「知る」ことからだと思います
「知る」ことで、すべてが解決するとまではいえませんが、私の経験上、人生におけるさまざまな問題は、その物事を正しく知らないことから発生するのだと思います。

 


A 病識は必要なの?
もっちゃん(高知県)

統合失調症の36歳女性です。
病識は、持ってないといけないものでしょうか?
「あなたは心の病気なんだよ!」と言われてうれしい人がいるのでしょうか?

私は入院もしましたし、確かに病名はついてますが、病名を知ったときは死にたいって思いました。
でも決して軽い症状だったわけではなく、病名も知らないから(10年くらいたって、きける状態になってから主治医に聞きました)、楽しいはずの20代は、友達が働き遊んで彼氏もいて、という状態をただ見ているだけしかできませんでした。

たまに、お金がないのにパチンコに行くしか楽しみがなくて、お金を友達から借り、結局親に返してもらいました。
親孝行どころか「入院費で貯金が全部なくなったよ!」と、のちに冗談で父に言われるほど迷惑をかけました。

しかし病識がなかったおかげで、障害者年金をもらいながら作業所に行くという選択肢は私のなかにはなく、落ち続けても一般就労ばかり、ささいな求人の張り紙も毎日見逃さず、アンテナを張り巡らせて、初めてパートが決まったときの喜びは忘れられません。
そのときも「パートできればそれでいい! 社員とかは無理だろう」と思ってました。

時がたち …。
今はいろいろ仕事も変わりましたが、パートでがんばっていた仕事で社員になれました。
この仕事がない時代にです。
もちろん病名は、私にとってはマイナスなのでクローズなので、あまりいいことではないかもしれません。

ただ今は、お小遣いをもらっていた私が、少しといえども家にお金を入れられるようになり、部屋にテレビの地デジを買ったり、迷惑かけた分、父にパソコンをプレゼントすることにしました。
父は、泣くほどうれしいと言ってくれました。

息子さんに、「薬はのんだ方がいいけど、基本的に好きに生きたらいいよ」と言ってあげてほしいです。
変に病気って言われ、いろいろ制限されるより、できる範囲でいろいろ挑戦させてあげることのほうが大事だと思います。

父は、よく症状がひどかったときの私に、「お前は大切だから」と声をかけ続けてくれていました。
無理とわかっていても、仕事の面接にいくときは、「がんばってきなさい」と送りだしてくれました。

そのときは、あまり感謝もしていなかったけれど、仕事でがんばって帰ってきたとき父の笑顔をみると、私を送り出してくれていた頃のことを思い出します。
今は病識も持てていますが、逆に病気だから社会に出られないってことはないんだ!と思えます。


「こころの元気+」2011年1月号(47号)「おこまりですか? では他の人に聞いてみましょう!」より

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