就労への不安について(QA)


こころの元気+2017年2月号(120号)の「おこまりですか?」のコーナーより
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Q 就労への不安について

32歳の男性です。
14歳のときにうつになり、21歳のときアスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)と診断されました。

うつで苦しんでいましたが20代終わりから回復し始め、一昨年末からは作業療法にも通い、家事もこなせるようになり、ようやく落ち着いてきました。
しかし、次の展開として社会復帰についての悩みをかかえています。

大学入学資格検定(現在は高等学校卒業程度認定試験)をとって大学は途中まで通いましたし、20代後半には資格取得の勉強もして日商簿記検定の3級と2級、英検の2級もとりました。
作業療法士さんからも「いろいろ今までやっているし、資格も持っているし、社会復帰できると思いますよ」
主治医からも「いくつか障壁はあると思いますが、社会復帰はできるでしょう」と言っていただきました。

それでも、やはり不安になっています。
あいさつはできますし、雑談も作業療法で作業療法士さんや知人の患者さん達とできています。
主治医も業務の会話や軽い雑談ならこなせると認識しています。
しかし『こころの元気+』を読むと、障害者雇用でたいへんな思いをしている方も多く、実状をまだよく知らない分不安になってしまいます。
今まで働いたことがなく、職歴がないというのが大きな不安のひとつです。
もちろん、他にも不安の理由はあるのですが、自分が就労できるのか不安です。
体験やアドバイスをお願いします。


A 根気強く
(宮城県)フカヒレさん

 

はじめまして、私も発達障害があります。
数年前の春から、公的機関で嘱託職員として働いています。
心中お察し申し上げます。
私も、就職するまでは不安な気持ちでいっぱいでした。

私の場合、大学時代の特別支援の職員さんからも主治医からも、「相性の合う仕事が見つかるまで根気強く探し続けることが大事だ」と教えられました。
理由は、発達障害のある人の場合、得意なことと苦手なこととの差がはっきりしており、得意なことを生かせる仕事に就けば能力を十二分に発揮できるからだそうです。

私は、「障害者就業・生活支援センター」などの機関を利用して企業実習を行い、相性の合う企業のイメージをつかんだり、「ハローワーク」で、そのイメージと重なる企業の求人を探したりしました。

また、働き方にもいろいろな形があります。
フルタイムで働く自信がなければ、パートタイムや時短就労もできます。
それでも、フルタイム就労に挑戦したいのであれば、働く練習をすることができる福祉サービスを利用されることをオススメします。
そういったサービスでは、終業時間が早めに設定されているので、無理なく働くことに慣れることができます。
私も、「地域障害者職業センター」で、1か月間だけでしたが通所して働く練習をし、働いて暮らすことのイメージがつかめました。

最後になりましたが、一口に障害者雇用といっても、いろいろな形があります。
相談者様に合ったお仕事に出会えますように。

 


A 自分の経験から
(埼玉県)木内靖雄さん

 

現在61歳男性です。
自営業、会社員、郵便局員などの経験はありますが、健常者の方に比べると社会経験不足は否めません。
私の年齢になると職業の選択はむずかしいです。
そこで「どんな仕事でもとにかく働きたい」と思い、ハンバーガーショップの週1回深夜の仕事に挑戦しました。

しばらく仕事から離れてデイケアに通っていたので、言われたことがわからなかったり、何度も聞いてしまったり、怒られたりの連続でした。
でも、「ありがとうございます」とお客さまを見送る喜びは他に代わるものがありません。

自分の経験から答えを出すとしたら、働くことは 知識やテクニックではなく、自分の実力でいかにやっていくか、「ごめんなさい。教えてください」と言えるかどうかだと思います。
自分の仕事をするときの思いの角度から書かせていただきました。

 


A 要因は何か
(千葉県)まーくん

お気持ち本当によくわかります。
ご質問者様は、作業療法に通ったり、家事をこなしたり、資格試験にも合格されているとのことで、たいへんすばらしく、申し分ないような気がします。
しかし働くとなると、ハードルが高く感じてしまう…というのも、すごくわかります。

実は私も、30歳で病状もけっこう回復していて、だけど、就労はしていないという段階の人間です。
私がもしそのように不安になってしまったら、まず、自分がここまで改善してきたその要因は何かを考えて、並べてみることにしています。

人生でも、こういった精神科の病気でも、放っておいたらいつの間にか幸せになっていた、全快していたということはほとんどないと思うんです。
必ず、病状の悪いときの自分とは、何か違う行動をしたり、違う考え方をしたりしていると思います。
その要因を考えて見つけ出せれば、「私は、こういう行動や考え方をしているからこれまで成長してきたし、これからも成長できるんだ」と思えて、そして、
「だから、その延長線上で、必ず時期が来れば働けるようになる」さらには、
「もっとその改善の要因を増やせるかも?」と思えるかもしれません。

ちなみに、私の場合ですと、
「人に感謝を持って接するようになった」とか「人にやさしくするように心がけるようになった」というのが根本的な改善要因に思います。


A 一歩を踏み出すには
(千葉県)高橋麻貴さん

今までお仕事をされた経験がないと、企業で働くイメージを持つこともむずかしく、一歩を踏み出す勇気がなかなか持てないですよね。就労に向けての不安は、私も経験があります。

私は、精神疾患を発症してから何年も働くことができない期間がありました。
たびたび働くことにチャレンジしてみたのですが、病状悪化ですぐ辞めてしまう結果に。

そんな中、デイケアに通い始め、就労支援を受けることになりました。
就労プログラムに参加する仲間達と「働くとは」ということについて、たくさん話をしてきました。
また、障がい者雇用で働く仲間から、話を伺うこともできました。

約2年のリハビリを経て、障がい者雇用で一般事務の仕事に就くことができました。
就職したものの、デイケアの世界と職場はまったく別世界でした。
今まで当事者や医療関係者としか交流のなかった私は、不安でいっぱいでした。

しかし、休まず誠実に業務に取り組むことで次第に周囲の信頼も得られ、職場の方達には、とてもよくしていただきました。
障がい者雇用で約4年働き、働きながらPSW(精神保健福祉士)の資格を取得。現在は就労支援の仕事をしています。
働くまでも、そして働いてから現在も、働く当事者の仲間達とのつながりや経験の分かち合いを大切にしています。

不安なときは、同じ「働きたい」という希望を持つ仲間と想いを分かち合う、また、すでに働いている仲間から仕事の話を聞いてみる。
そういったことで一歩を踏み出す勇気を持てるかもしれません。

 


A 一つひとつ不安の解消を
(千葉県)雨さん

 

相談者様は、資格取得やあいさつ・雑談などで努力を重ねられてきたのですね。
主治医や作業療法士から「社会復帰できるでしょう」と言われても、初めめて働くときは不安になるものだと思います。
が、相談者様の強みは、すでに不安を解決する鍵を自己分析されていることです。
不安は「実情をまだよく知らない」こと「今まで働いたことがなく、職歴がない」ことに発しているのですね?

私は、相談者様に就労移行支援の事業所に通所(役所に利用申請)されることを提案します。
就労移行支援では、あいさつ、体力づくりのための体操、ディスカッション、パソコン、電話対応の実地練習等に加えて、面接練習、履歴書等の書き方指導など、実践的なプログラムが用意されています。
障害者の合同面接会などの情報源としても役に立ちますし、就職経験者の話を聞く機会もあったりと、障害者雇用の実情を知るよい機会になります。
面接時に同行してもらったり、就職後も相談にのってもらえたりもします。

私が通った事業所では、提携先の企業で実習するプログラムもありました。
実習等は、職歴がないことによる不安を解消する一助になるかもしれません。

他にも、就労継続支援A型事業所などで就労経験を積むのも一案です。
相談者様に適した事業所で職歴ができれば、自信がつき、さらなる挑戦の土台になると思います。
相談者様は努力して準備されているので、一つひとつ不安を解消すればよい結果につながると思います。応援しています。

 

※障害者就業・生活支援センターなどの就労の福祉サービスについては、「こころの元気+」2016年8月号を参照してください。

 

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