行動の理由(本人)


こころの元気+ 2014年10月号(92号)特集2より


あのときの行動には理由があったんです


私が大声で叫び、暴れる理由は
佐賀県 渡辺順郎さん

私が大声で叫んだときや暴れたときにはそれぞれ理由がありました。
大声で叫んだときは、何者かわからない人間の声から、家族や自分を救うための意味がありました。
幻聴だということは、自分でも日にちが経つにつれてわかってはいました。
しかし、「皆を殺してやる」という幻聴があると、私は、包丁をステレオ用のコードで一つに縛り、プロパンガスのボンベの前で、見えない人の声に対抗するために大声で刃向かうしか方法がありませんでした。
そして、その見えない人間に攻撃を加えるために、天井裏に行くしか方法がありませんでした。
大声で叫び、暴れたのは、見えない相手に、「自分はお前よりも強いのだ」ということを見せつけるしか私には術がなかったからです。
精神科医や健常者は、こういう私を見てすぐに病気だと考えますが、パニック状態の人間は、皆私と同じような行動をとると思うのです。
怖いから、恐ろしいから、大声を上げて暴れるのだと私は思います。
皆症状は違いますが、それぞれの意味があると私は思います。
ただ異常だと決めつけないで、精神科医は患者の話をよく聞いてほしいと思います。診察が一時間以上かかっても。それで、本当の医療が可能となるのですから。


自傷モードは
神奈川県 向山淳子さん

私は今、区の生活支援センターに通っています。
何事もなく過ごしているのに、突然自傷モードに入ることがよくありました。ガラスや缶のプルトップで傷つけようとしたり、トイレの中で大声で泣き叫んだり…。食べた直後に指を入れて吐いたりもしました。
言葉にできなくなった不安やつらさ。
「わかってほしい」のに「わかってもらえない」.心の葛藤は行動化するしかなかったのです。一番てっとり早かったともいえますが….。
スタッフは、声をかけてはくれました。
「どうしちゃったの? 頓服はのんだの?」と。
でも、ひどいときは話を聞くでもなく「今日はもう帰ってください」と荷物ごとつまみだされたこともあります。
そのときの記憶はリアルに残っています。雨の中、びしょぬれになり、歩きながら「見捨てられたな…。もう行くとこないよ」と悲しかったです。
私は話を聞いてほしかったです。落ち着くまでそこにいさせてほしかったです。
「帰ってください」と追い出すのではなく、「つらいんだね」と受け止めてほしかったです。
今、ふり返って思うこと。そのままの私を認めてほしかったということです。


兄弟ゲンカの理由は
奈良県 井上和哉さん

最近、弟と大ゲンカの毎日です。
僕はそのときに「お前の言い方に問題があるんじゃ」などと叫んでしまいました。
弟は酒を飲んでいて、僕は「酒を飲まないと会話ができんのか?」と言いました。僕がそう言ったのは、僕も度胸が足りないけど、弟が酒に飲みこまれていくんじゃないかと思ったからです。
でも、考え方を変えるとそれは押しつけでした。
僕が一番伝えたかったのは、仕事がつらくてしんどくて悩んでいる弟の姿を見て、がんばってほしいと思ったことなのです。
弟は何も言いませんでした。心の中に突き刺さるような発言をしてしまったことに、後悔をしています。
「どうしてあのとき、僕は弟をなぜ支えてあげられなかったんだろう」
深く悩みました。
兄弟ゲンカをする度に、弟の意欲が低下しているんじゃないかと、いつも心配です。
「仕事を辞めたい」って話しながら、毎晩、大量のお酒を飲む弟のことが一番心配です。


他人をどなるのは
新潟県 やまっち

私は数年前、煙草を吸っている高校生たちをいきなりどなりつけたり、郵便局で順番待ちしていて割りこんだ女性をどなりつけたりしました。
また、スピード違反の若者をどなりつけて相手と取っ組みあいになり、相手が逃げたため、車のナンバーを警察に通報して警察署に相手と呼ばれ注意されたり、コンビニで障害者専用の駐車スペースに車を斜めに停めた若者をどなり、警察を呼び、警察署に行き、注意されたりもしました。
そして、自宅で急におかしくなり、ガラスを割りまくり、手足が血だらけになったときも、やはり自分で通報し、精神科病院で診察され、特定不能の精神病性障害だといわれ、措置入院となり、75日間入院しました。
自分は、ルールやモラルを守らない人が許せなかったのです。
自分はかなり他人から見たら異常に見えたかもしれませんが、会社を辞めたり、離婚したりしてストレスがあり、イライラしていました。ただ、間違った行動をした人が許せなかったのです。


職場でのビンタは
東京都 がちゃぴんさん

仕事で部署の配置転換をしたときのことでした。
たしかに最初から、配置転換した新しい部署は、頭よりも気をつかう仕事だなとは思っていました。
一人のかかえる仕事の量が莫大でした。そのうえ、ものすごく気をつかう仕事で、若い人向きの仕事だとも思っていました。
でも、私は仕事に慣れるため、疲れるとは思いながらも一生懸命仕事をしていました。
そんな中、上司にあたる人が、私が病気であることをパートの人たちにまで隅々報告していました。
そのため、私のことを快く思っていない人が、陰で私にも聞こえるように悪口を言っていました。
最初は、気にしていませんでしたが、悪口が余りにも甚だしく、あるとき怒りが頂点に達し、その人をビンタしてしまいました。
まともに頬にあたらず、メガネがずれただけでした。
でも、そのことが上司の耳にも入り、仕事を辞めざるを得なくなったのです。
頭を使う部署から、気をつかう若い人向けの仕事の部署に配置転換したことを、何より反省しています。


ネットでの暴言は
埼玉県 Sさん

自分はネットにはまり、暴言をネットに書きこんでいたことがあります。
自分には性的なマイナスなスパムコメントや、いやがらせのコメントなどが多く、イライラしていました。
イライラが感染して愚痴をブログやツイッターに書くと、一言一言が気に障る内容をツイートしてきて、たたかれまくって、2チャンネルにさらされ、気が違っているとされ、それは今もネットのキャッシュに残っています。
薬の影響で性的感覚が少ない人間ですので、ただでさえ弱い感覚にアダルトサイトが自分をダイレクトにフォローをかけてきてつらかったです。
「いやらしい言葉がいやなのは女性だけじゃない」と自分は一言つぶやきたいのです。
薬も効かず半分再発しかけましたが、ネットも、父の協力を得て半分デジタルデトックスをしました。
今はリアルの生活に没頭し、いやな思い出をネットには載せずに書かないで忘れるよう努力しています。今は非常に充実しています。作業所で午前からフルタイムで働いて1年以上経ち安定してきました。
将来ヘルパーの資格を取るか、A型作業所に通うか、いろいろと模索して絵の投稿を続けながら人の幸せとは何かを研究している毎日です。