じょうずなホームヘルプサービス活用術(専門職)


こころの元気+ 2011年3月号特集より


特集5
じょうずなホームヘルプサービス活用術

桃山学院大学社会学部社会福祉学科
栄セツコ


ホームヘルプサービスとは何か?

精神障害をもつ人のホームヘルプサービスは、地域における自立生活を実現するために二〇〇二年四月から始まりました。
具体的には、日々の日常生活において困りごとをもつ精神障害をもつ人に対して、ヘルパーがご本人の自宅に出向き、清潔保持・外出支援などの「身体介護」、食事・掃除・洗濯などの「家事援助」、それらの支援の基盤となる「相談助言」などを行うこととされました。

ホームヘルプを活用したAさんが教えてくれたこと

Aさんは母親と二人暮らしでしたが、母親が骨折し入院したため、Aさんは一人暮らしをすることになりました。
家事を母親に任せていたAさんにとって、一人暮らしはとまどいの連続でした。
特に調理とごみ出しが苦手で、一か月後には食事もままならず、部屋にはごみが山のようになっていました。

そこでAさんは、通院先の精神保健福祉士に相談し、ホームヘルプサービスを紹介してもらうと、早速利用手続きをすることにしました。
ヘルパーが初めてAさん宅を訪れた日、Aさんの不安気な気持ちをくみながら、生活上の困りごとについて話を聞いてくれました。
Aさんはヘルパーに相談するなかで、「料理は好きだけれども段取りよく調理することが苦手で、ごみ出しは指定されたごみに分別することが苦手」ということが確認でき、「段取りよく調理できるようになりたい」ということと、「ごみ出しは支援してほしい」と希望することができました。
「段取りよく調理する」ことについて、まず、ヘルパーは調理手順を絵に描いて、お手本を見せてくれました。
Aさんに調理の段取りのイメージができてくると、次は具体的な調理方法を示しながら一緒に進めてくれました。

ある日、Aさんは「お母さんの誕生日にクッキーを届けたい」とヘルパーに希望しました。
苦手なごみ出しをヘルパーにまかせることで、Aさんの心にゆとりができてきたのです。
Aさんはもともとお菓子づくりが得意で、病気になる前はよくクッキーを焼いていました。
ヘルパーが見守るなか、Aさんはクッキーを焼きあげると、その足で母親の入院する病院に向かいました。
Aさんがつくったクッキーを喜んでくれる母親の姿をみて、Aさんは好きなお菓子づくりをしながら、自分ができることを増やしていこうという思いが募り、ヘルパーにごみ出しもできるようになりたいと希望しました。

このように、Aさんは苦手なごみ出しをヘルパーに任せたことで、心のゆとりが生まれ、得意なお菓子づくりに時間を使うことができました。
そして、そのお菓子を母親が喜んでくれたことがAさんの自信となり、新たなことにチャレンジする勇気につながりました。
Aさんは、「自立とはすべて自身でできるようになることではなく、できないことを他者に任せながらも、自分のしたいことに時間を使うことである」と教えてくれます。

ホームヘルプを利用するには

ホームヘルプの利用窓口は市町村ですが、障害程度の判定を受ける必要があります。
ホームヘルプは、障害者自立支援法に規定されたサービスですので、利用料は一割負担です。
ただし、所得に応じた上限額や、軽減される場合もありますので、窓口で相談してみてください。