外に出たいと思ったら、私たちがお伺いします(専門職)


こころの元気+ 2012年6月号特集より


特集5
外に出たいと思ったら、私たちがお伺いします

日本社会事業大学大学院
大山早紀子


窓の会の訪問活動

窓の会とはあやめ会(川崎市精神障害者家族会連合会)が「精神障害があり、ひきこもり状態にある人たち」を対象に訪問支援を目的に始めた活動です。
現在、窓の会は地域活動支援センターとしてスポーツや音楽を通した交流などさまざまな活動を行っており、訪問活動はあやめ会からの委託という形で行っています。
訪問活動の大きな特徴は、家族会が設立主体であること、活動は学生や市民ボランティアが中心になっていることです。

今回はこの窓の会の訪問活動を通して感じたことを、ボランティアの視点でお話ししたいと思います。
窓の会の活動は、あやめ会を通じて受け、ご本人やご家族の希望を伺い、年齢や性別などを含めて顧問医の先生と相談をして決めます。一回だけの訪問もありますし、継続することもできます。

最初はお互いに初対面ですからボランティアも緊張します。お互いの趣味のこと、生活のこと、好きな食べ物や音楽のことなどさまざまなお話のなかで共通点を探します。

私たちボランティアのなかには、精神保健医療福祉に従事している人もいますが、窓の会ではボランティアですので、病気の話やお薬の話は基本的にはほとんどしません。
「一緒にいる時間を楽しく過ごすこと」を目的にしており、そのためには「ボランティア自身も楽しむ」ことが大切だと私は思います。
同時に「一緒に楽しむ」ためには「安心できる関係」をつくることが大切です。しかしこれは、すぐに築けるものではなく、長い時間がかかります。決まった形もありません。

なかには一〇年近くかけてようやく自宅近くを一緒に散歩できるようになったという人や、家のなかで過ごすことがほとんどだったのが、電車やバスに乗れるようになった人もいます。
このような人がなぜ、一時期休止していた社会とのつながりを再び持つことができるようになったのでしょうか。
それを言葉にするのはとてもむずかしいです。あえて言葉にするならば、ボランティアと安心できる心地よい空間を共有することができたからではないでしょうか。

 

ボランティア訪問の役割

なかなか外に出られない人のなかには、何かきっかけがあれば外に出たいと思っている人は少なくないでしょう。しかしそのタイミングはさまざまです。
だからこそ、そのタイミングを逃さないようにすること、つまり時間をかけることは大切だと思います。

上記の例では「出たいと思ったとき」にボランティアの訪問があったことが考えられます。本人の希望に合わせたタイミングで「そのとき」を大切にした訪問が「ゆるやかな形での社会との再会」を実現できたのではないかと思います。またそこには、専門家ではなくボランティアという敷居の低さがあったのではないでしょうか。

窓の会は、社会から孤立しがちな人がこのようにゆるやかな「人との再会」を通して、「人としてつながること」に喜びを感じるきっかけ、タイミングを見つけるヒントになる活動といえます。ボランティアと個別に外に出られるようになったことを応用して、社会とふたたびつながっていくお手伝いを間接的にさせていただくのがボランティア訪問の役割だと思います。

窓の会の活動例
①本人や家族の希望を聞き、先生と相談して誰がいつ訪問するか決める。
②何回か訪問し、ボランティアと「一緒の時間」を楽しむ。
③一緒に散歩などを楽しむ。