対話のヒント2


精神科での治療が始まると、精神科医との対話(カウンセリング)と薬物療法が中心です。患者である私たちは薬について苦労することが多いのですが、どんな風に話をすれば、うまく自分の状況を伝えられるのでしょうか。またうまく精神科と付き合うための対話と自分の薬を自分に合ったものに変えるために話し方のヒントになることはなんでしょうか。

「こころの元気+」の特集から見てみましょう。筆者の所属先は執筆時のものです。


お医者さんとのやりとりでちょっと工夫してみました


憂うつ度をグラフにして
神奈川県/須藤仁志さん

主治医に診察を受けるときに最初に聞かれるのが、「いかがですか?その後の調子は?」。答えは「だいぶ気分がよくなってきました」とか「そんなに変わりません」。
あとは、「睡眠はどうか」とか、「食欲がどうか」など、ひどかった頃の症状がでていないか確認して、薬を処方してもらう。
時間もだいたい5〜10分ぐらいで、あの話で何がわかったんだろうと本当は疑問でした。処方された薬の効能・副作用も、主治医に質問もしません。ただ受け入れるのみです。
休職中、医療復職プログラムに通っていたときのこと。睡眠・食欲・身体症状・気分・興味・集中力・認知、それぞれで、でてきやすい症状が、自分にでているかチェックしていました。
また気分については、毎日の憂うつ度を0〜100に数値化し、グラフ化してみました。そうすると、それまで主治医に調子がよい・悪いとあいまいに表現していたことが、実はいろいろな症状があるとわかってきたのです。
主治医には、口で説明するより見せた方が早いだろうと、その記録を持っていったところ、双極2型の疑いもあると、薬の処方も変わりました。それ以降、私自身、あまりよくわからなかった薬の効果を、実感できるようになっています。
現在は、診察の際にはツールを見ながら症状を説明するようにしています。主治医にも自分の状態が伝わりやすいし、薬の処方の考え方もわかるようになってきました。
病気とは長いつきあいですが、病気を自分で理解し、また人に伝えられるということで、ツールの活用は有効だと思います。


私の診察に欠かせないイラスト
静岡県/milkteaさん

イラストは、自分の感情を素直に表現します。そして、イラストを用いることで、医師と、目に見える形で情報を共有できます。描くのは、おもに症状と、そのときにとった行動や気持ちです。以前は診察の際に、うまく説明しようと意識するあまり、緊張してしまい、思うように話ができませんでした。
でも、つらかったときの状態を、正直に描いたイラストを医師に見てもらうことで、言いづらい気持ちも、ありのままに伝えられるようになりました。また、イラストを間にはさんで医師と向き合うと、互いに絵を指さして「このときが一番苦しかった」、「次回はこうしてみては?」とやりとりをするなど、双方向の「対話」が生まれます。
口頭の説明では、すべての言葉が均等に流れて行きます。イラストは、いつでも一目で問題点がわかるので、会話がぐっとスムーズになります。診察の雰囲気がなごやかになり、時には笑いも生まれます。
自分をイラストにすることで、客観的に症状や日常生活を振り返ることもできます。絵に関しては素人ですが、私の描く一コマ一コマは、私以上に多くの感情や言動を物語り、今では診察に欠かせない存在です。


こころの元気+30号 特集より