私の働く生活ストーリー(本人)


こころの元気+ 2013年11月号 81号
私の働く生活ストーリー 連載68回

株式会社福島美装
栃木県 福田一夫さん


私の病気は非定型精神病という原因不明の難病で、躁うつ病と統合失調症の病状をあわせもつという特徴に彩られた疾病です。
現在の残遺障がいとしては、体温の調整がつかず、疲れやすく根気に問題ありというところです。

新しい職場に就けて思うこと

年間在職した郵便配達の仕事を退職して早6年が経ちます。
約1年半前から現在の会社に雇われておりますが、この間の求職活動はうまくいきませんでした。
郵政民営化のおり、いたずらに自分を追いこんだ感はぬぐえませんが、労働組合運動がらみでの自己主張があったのも事実です。
新しい職場では、頭を下げ、詫びを入れてすがる気持ちで仕事をもらい、もう二度とわがままじみた自己主張はせずに真面目にやるんだと念を押しておりました。
現在の仕事は、一人仕事で、突発で休むことは許されません。
スーパーの清掃ということもあり、店員さん、お客さん、360度ガラス張りの仕事で、精神障がい者の仕事としては不向きだとも思われます。
上司は面接をしていただいた方です。
職場には2人の先輩がいて、障がいを気にすることなく接してくれています。
もちろん、店員さんも同じです。
仕事を進めるうえでの際立った配慮は一切ございません。
障がい者だからパフォーマンス(能力や成果)そこそこというわけにはいきません。若干のきびしさがあります。

仕事を続けていくうえで心がけていることは、決して我を張らないこと。
前職でも我を張って勤務したことが、病気の再燃につながりました。
休めない仕事で、無理をしないということは、いつ辞めてもいいという覚悟を意味します。
それは、仕事をやりつくして思うということではありません。そのぐらいのゆとりを持って、仕事に従事しようという意気ごみです。
だからといって、二度と同じ失敗はくり返せません。
この年で学習した生き方を実際に実行していけなかったら、失われた年の真価が問われるでしょう。
挑戦のチャンスは今回のみで終わるはずがありません。

障がいをオープンにすることには、若干の恐れが伴います。
精神障がいという言葉の持つ響きがそうさせるのでしょう。
しかしこの弱みを強みに変えられたら、心の自由度が広がり、働き方も解放されます。

特に通院日を確保する努力を会社にゆだねられることは、勤務するうえで最も重要な合理的配慮だと思います。
私は、通院の曜日を週休日として、融通して固定してもらっています。
職場の先輩には感謝しております。
休日が決まることで、働きやすい環境が整っています。
体調の管理・調整も週単位で考えられるように組み立てられています。

精神障がい者の仕事として若干の不向きを感じてはおりますが、働きやすい職場だと感じています。
先ほど述べたように、しがみつく思いはさらさらありませんが、不本意に自分から職場を去ろうとは考えておりません。

もう一度

最後に、私から後に続くであろう精神障がい者の皆さまに伝えたいことがあります。
それは、若干の無理は覚悟のうえで、果敢に挑戦してほしいということです。

再発予防と就労の機会を天秤にかけ無難な選択ばかりしていたのでは、就職にたどり着くことはむずかしいでしょう。
職にたどり着けたならば、屁理屈や泣き言を言わず、まず勤めてみてください。
だからといって我を張るような無理は禁物。
職に就けたなら引き際を考えておくべきでしょう。

自分のやれることから、自分のやり方で自分の夢に挑戦して、自己実現につなげていってほしいと思います。
自己実現の本質は、単なる社会進出や社会参加ではありません。
自分自身が成長し、その成長が社会から承認され、当然就労では何らかの報酬を伴い、なりたい自分に近づくことです。

精神障がいを理由に夢をあきらめてはいませんか。
もう一度、希望と野心を持って切り開こうではありませんか。
精神病は、自分で気づいて築かなければ何も現状を変えられません。
あきらめた顔のまま、汗も流さないで、ただ老いぼれていくだけの人生は御免です。