精神科の薬による肥満問題と食生活(専門職)


こころの元気+ 2011年7月号特集より


特集7
精神科の薬による肥満問題と食生活

桜ヶ丘記念病院薬剤部
佐藤康一


メタボリックシンドロームについて

肥満は、容姿だけでなく健康への影響もあることから、飽食の現代では多くの方々が気にしている一般的な問題といえます。
近年では、肥満や高血糖、脂質異常症(高脂血症)、高血圧症などが複合したメタボリックシンドロームの健康への影響が問題視されており、メタボという言葉も広く浸透しています。

精神科の患者さんは、精神疾患や精神科の薬の影響によってメタボリックシンドロームが生じる率が一般人口に比べて高く、比較的長期にわたる治療のなかで患者さんの健康を脅かすことがあることから、精神科ではより重要な問題として扱われることがあります。
また、容姿を気にする患者さんでは、健康に影響のない軽微な体重増加であっても、精神科の薬による影響をいやがって服薬を中断してしまう場合があり、その後の回復に影響を及ぼす場合もあります。
さまざまな患者さんのニーズをくみとり、できるだけ要望に沿った対応が必要とされるわけですが、医療者側の対応だけで問題が解決できない場合もありますので、運動や食事などに関して、患者さんに協力をお願いする場合もあります。
今回は、肥満を生じやすい薬と対処法についてお話しして、どのような点に注意したらよいかを説明したいと思います。

肥満の問題を生じやすい薬

精神科の薬で、肥満の問題が生じやすいものとしては、新規抗精神病薬があります。
個々の薬によって影響に差があります。
影響が大きいものとしてクロザピン(商品名クロザリル)やオランザピン(商品名ジプレキサ)があげられ、中程度のものとしてクエチアピン(商品名セロクエル)やリスペリドン(商品名リスパダール、リスペリドン)があげられます。

なお、糖尿病の人に対してオランザピンやクエチアピンは禁忌で使用できないことになっており、クロザピンも原則禁忌となっていますので、過去に糖尿病と言われたことがあったり、家族に糖尿病の方がいる患者さんは、あらかじめ医師に申し出ておくとよいでしょう。

一方、新規抗精神病薬でも肥満への影響が少ないものとして、アリピプラゾール(商品名エビリファイ)やブロナンセリン(商品名ロナセン)などがあげられます。
新規抗精神病薬以外で、体重を増加することが知られている薬としては、クロルプロマジン(商品名ウインタミン、コントミン)などの低力価抗精神病薬、バルプロ酸ナトリウム、三環系・四環系抗うつ薬などがあります。

体重増加への対処法

体重の増加は、服用開始から一年弱で落ち着く場合が多いのですが、その後も増加が続いてしまう場合もあります。
現在の薬で調子が安定しており、体重増加がゆっくりな場合や軽度な場合は、薬は変更せずに生活面の見直しを行うことが一般的で、適度な運動をしたり食生活の見直しなどの対処を続けることが効果的です。
一方、急激な体重増加を示したり、清涼飲料水を多く飲んだり、過食になっている場合には、健康への影響が心配されますので、早めに主治医に相談しましょう。

肥満を生じやすい薬を使用していて、生活面での対処を続けても充分な効果が得られない場合は、体重増加を起こしにくい薬への切り替えについて主治医に相談してみるとよいでしょう。
薬と患者さんとの相性もありますので、どの薬にも切り替え可能とは限りませんが、効果と副作用のバランスから最適と思える薬について検討してくれることと思います。

まとめ

肥満を避けたい患者さんには、なるべく肥満の問題が生じにくい薬から使い始めることも薬の選び方の一つです。
さまざまな理由によって、肥満を生じやすい薬を使い始めた場合は、その後の数週間は体重や食欲の変化に注意して、変化が急激な場合には早めに主治医に相談しましょう。
薬だけが肥満の原因ではありませんので、普段から健康的な生活を心がけましょう。