ピア・スタッフのココがイイ! ココがたいへん!(本人)


こころの元気+ 2011年8月号特集より  →「こころ元気+」とは(見本など)


特集5 ピア・スタッフのココがイイ! ココがたいへん!

ピア・カウンセラー 黒川常治


ピア・スタッフのイイところ

最近「ピア」という言葉を、福祉の場であたりまえのように耳にします。
なかでも「ピア・スタッフ」という方が、いろいろな地域の福祉施設で活躍しています。僕もそのうちの一人でした。
「ピア・スタッフ」とは、地域生活支援センターなどの精神保健福祉の施設で働く精神疾患当事者の方のことです。
働き方はさまざまですが、おもに退院促進やピア・カウンセリングの場面で活動されている方が多いようです。

それでは、ピア・スタッフの役割とは何でしょうか。
症状、副作用、生活での困りごとなど、相談するのはおもに医者や専門職の支援者(健常者)だと思います。
でも、どこかうまく伝わっていないような、気づいてもらえていないようなことを感じたことがありませんか?
これが当事者同士だと、同じ病名であったり同じ症状を体験していたり、同じ薬を服用しているなど、似たような困りごとを経験していて、情報交換ができます。かゆいところに手が届く感じです。言いづらい病気のことや、生活での困りごとなどの相談をできるのが、「ピア・スタッフ」なのです。
また、何気ない会話のなかに、当事者だからこそ気がつける困りごとに、使っている当事者だからこそ提供できる社会資源のことなどの情報提供も、ピア・スタッフならではの役割です。

相談する方と相談を受けるピア・スタッフとの関係は対等なので、安心して話すことができます。ピア・スタッフにも守秘義務がありますから、家族や支援者に言えないことも、話を聞いてもらえると思います。
ピア・スタッフの経験や知識のなかから、よい解決策が出るかもしれません。また、答えを簡単に出せないことも、ピア・スタッフに話し、共感し合えたことで、ほっとできることでしょう。
「話せてなんか楽になった。ありがとう」と言われることがあります。
ココがピア・スタッフのイイところです。

ピア・スタッフのたいへんさ

でも、ピア・スタッフも現役の精神疾患の当事者です。常にタフであることはできません。
相談内容に共感し過ぎたり、体調の悪いときに相性の悪い人からの相談を受けたりすることで、体調を崩してしまうことがあります。
先ほどピアは、「対等」ということを書きましたが、相談の場合、どうしても話し手、聞き手という関係になります。それは立ち位置が違うだけで、上下関係はないのですが、答えを急ぎ過ぎ、ピア・スタッフの話が「絶対」に聞こえてしまうこともあります。この「絶対」が命令に聞こえてしまい、お互い違和感を感じることもあります。

また、複雑な人間関係のなかで、何人かの相談を受けたとき、誰の「味方」なのか「敵」なのかということを要求されてしまうことがあります。板挟みの狭間に立った当事者は、たいへんなストレスになってしまいます。

ピア・スタッフは働いているわけですから、当然、給料をもらいます。そうしたことから、うらやまれることもあります。
また、そういう手当をもらうがゆえに、「自分は本当にピア・スタッフとしてみんなに役立っているのだろうか?」と自責の念に追い込まれる方もいます。
ココがピア・スタッフのたいへんなところです。

そんなたいへんなピア・スタッフでも、最近は地域を越えてピア・スタッフ同士で情報交換を行い、お互いを確かめ合う機会があるようです。
ピア・スタッフがどうあるべきか、ピアでできることは何か、みんなで探しているのです。ピア・スタッフも「ピア」を求めているのです。

たいへんなことも多いピア・スタッフですが、当事者からの相談のしやすさ、お互いを認め合えること、共感し合えることができることは、とても重要なのです。そしてお互いを鏡のような存在にして、自分自身を見つめながら次のステップへ進めるのです。

すでにピア・スタッフの方も、なりたい方も、ピア相談を受けたい方も、お互いの存在を大切にしながら、自分を大事にしてください。