特集2
支援の第一歩 コミュニケーションと信頼関係 (228号)
○「こころの元気+」2026年2月号より
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筆者:山根俊恵
山口大学 名誉教授
NPO法人ふらっとコミュニティ 理事長
▼ひきこもりとは
ひきこもりとは、さまざまな要因が重なることで誰もがなり得る状態です。
何らかの生きづらさを感じている人が、さまざまな環境下において人間関係で心が傷つき、疲弊した結果、働けない(不登校を含む)状況におちいり、一時的に安全な家にひきこもるようになります。
◆自身を守る行為
それは回避行動というよりも自身を守る行為であり「元気になれば再び働こう」と思っているのですが、家が安全な環境でない場合(過干渉、先回り、決めつけ、無視など)は、さらに心を閉ざして部屋から出てこない、あるいは感情のコントロールができなくなります。
▼親子の関係性
子どもがひきこもると、親は、最初はやさしい声をかけて何があったのか耳を傾け、本人が動けるようになるまで見守って様子を見ます。
しかし、一向に動く気配がなく、気づいたら数年が経過します。
何らかの病気があるようにも見えず、一見ふつうです。
本人の根性が足りないから、甘えているからじゃないかと思ってしまいます。
「親だから、何とかしなければ…」
「この子のために…」と、家族は「言って聞かせよう」としてしまいます。
親として、それは当然のことです。
「こうあるべき」
「ふつうは…」と一般論や価値観を押しつけ、説教、説得をしてしまいます。
何とかして働かせようとします。
◆気づかず、知らないと
なぜなら本人の生きづらさに気づかないからです。
「この方法がまずい」と薄々気づいていても、他に方法を知らないからやり続けてしまいます。
その結果、親ががんばればがんばるほど、子どもの心が遠ざかります。
しゃべらなくなる、姿を見せなくなる、足音すらもしない。
一方で、苦しさの表現が暴言や暴力になり、手がつけられなくなってしまうこともあります。
こうして、家族のコミュニケーションが取れなくなってしまうのです。
▼ひきこもりの状態像
山根(私)は、ひきこもりを
「さまざまな要因によって、社会や人と一時的に距離を取った結果、徐々に社会とのつながりがなくなり、家族以外の人、または家族とのコミュニケーションの機会が減ってしまった状態である。さらに、この状態が長期化することによって自尊感情が低下し、社会参加が難しくなった現象概念である」と定義しています。
◆イコール病気ではない
自尊感情(Self-esteem)の低下は「自分は価値がない人間と感じ、自己否定によって自己効力感(Self-efficacy)の低下」を引き起こします。
その結果、
感情コントロール不全
抑うつ症状
対人恐怖
コミュニケーション障害
強迫症状
感覚過敏
生きる力の低下
セルフネグレクト(自己放任)
などの症状が目立つようになり、自身の力での回復は難しくなります。
誤解してほしくないのは、これらの「症状=病気」ということではありません。
▼ひきこもり支援のあり方
ひきこもりに関する相談窓口は増えたものの、
「話は聴いてくれるがどうしたらいいか教えてもらえない」
「たらい回しでしかない」
「『本人を信じて待ちましょう』と言われ数年が経過した」
「家族会に入り一時的に楽にはなったが、何も変わらない」
「暴言・暴力が怖い。保健所に行けば『警察に行け』、警察に行けば『保健所に行け』と言われ、どこも対応してもらえない」
などの訴えが多く、機能しているとは言い難いのが現状です。
◆親を直接支援
伴走型支援「山根モデル」は、本人を“無理やり連れ出す”のではなく、
『家族が安心して支え方を学び
→本人が信頼を取り戻し
→地域と小さくつながり
→社会へ…』
というゆるやかな循環型の階段をつくるのが特徴です。
家族心理教育基礎編(6回プログラム)では生きづらさの理解、先回り、心の声に耳を傾ける、適度な距離、心配を押しつけないコミュニケーションなどを学んでもらいます。
実践編(月1回)では、家族会のあたたかい雰囲気+楽になる+学び合う場の提供を行っています。
親を直接支援することで、親の向こうにいる子どもに間接支援を行っています。
家族支援を行うことで、家族関係に変化をもたらし、本人支援にたどり着きます。
多くの方に笑顔が取り戻せ、リカバリーし、本人らしい生き方を始めることができています。
〈参考文献〉
1.山根俊恵:「親も子も楽になる ひきこもり“心の距離”を縮める コミュニケーションの方法」、中央法規、2021
2.山根俊恵:「8050問題 本人・家族の心をひらく支援のポイント」、中央法規、2024













