親なき後に備えて私ができることは何か(本人)


こころの元気+ 2010年5月号特集より


特集1
親なき後に備えて私ができることは何か


■質問1
私は、今のところ生活力が弱いのです。
すべて親に頼っていることに気がつきました。食事のこと、体調管理のこと、家の掃除、ゴミ出しのことなど、いろいろなことを親に頼り切っています。
親がいなくなったら、一人でできるのかが心配です。
どうしたら生活力がつくでしょうか。また、それを手伝ってくれる人がいるでしょうか。


家族の立場から
東京都/ハイジさん


実のところ、親の立場からの回答がうまくできるかどうかはわからないのです。
というのも、私は、ハンデがある息子のためにと、先回りして、あれもこれも手や口を出していました。
それは、うまく育ててあげられなかった親の負い目や不憫さから、なおさらのことでした。

いつも、そう意識しているわけではなかったのですが、やはり根底にはあったのだと思います。
それが、自立の妨げになっていると人から聞き、「そんなことはない」と言い返したかったのですが、過剰なまでの手の差しのべに、息子は牛丼とチョコレートだけを食べ、風呂や着替えは7から10日に一回、昼夜逆転、ゴミの山 …確かに、「そんなことはない」とは言えなくなっていました。

それまでは、
「悩みは外部には言わないでおこう。自分だけでなんとかしよう」
と抱え込んできていた私でしたが、支援者の方たちの話に、やっと耳を傾けるようになりました。

息子は一年半デイケアに通った後、宿泊訓練のため、今、親から離れて、単身生活体験をしています。
「想像以上にがんばっている」とスタッフから聞き、不安はあっても、勇気を出して送り出してみる大切さを知りました。
またこれから、次のステップを考えていかなくてはいけませんが、息子に寄り添うだけが愛情ではないのだな、と少しずつわかりかけているところです。


■質問2
私は、親と一緒に暮らしています。両親がいなくなった後の心配は、お金のことです。
私は、父親はおらず、現在は母の年金と私の障害年金(二級)だけで暮らしています。私は普段は、どこにも通うことができず、自室にこもっています。
母が亡くなったら、今のアパートを引き払ったりするのもお金がかかると思うし、私の障害年金だけでそうしたやりくりができるのでしょうか。誰に相談したらいいのでしょうか。


病院の専門の相談員に
佐賀県/闘夜さん


私は、統合失調症の三〇歳の男性です。現在、母親と私の二人暮らしです。

私は、事情により、障害年金をもらえないので、母親が亡くなったらどうしようか、と不安です。
なので、少しずつですが、ハローワークの専門援助員(サポーター)にお世話になりながら、就職活動をしています。
それでも、もし仕事に就けても、フルタイムでは働けないので、その収入だけでは、やっていけないでしょう。なので、自分の稼いだお金と、将来的には、生活保護をもらうことを念頭に置いています。

相談する人ですが、病院のソーシャルワーカーさんなど、病院にそういう専門の相談員の方がいる場合は、その方に相談するのがよいと思いますし、地域で精神保健センターなどの相談窓口があるなら、そこに相談に行けばよいと思います。

今のうちにどういう社会資源があって、どこに相談に行けばいいのか、調べておくとよいと思います。
普段、外出できないのならば、病院に通院した際に、主治医か、ワーカーさんに相談してみてください。


障害年金と生活保護があります
岡山県/倉田真奈美さん


私も、長いこと生活保護と障害年金できちんと生活していました。

障害年金で足りない生活費は、生活保護を申請すればいいと思います。管轄の福祉事務所に申し立てたらいいと思います。
今は生活保護がほしい人が多くて、審査がきびしくなっているので、いきなり一人で行かず、専門家に相談してから行くことをおおすすめします。

資産があるともらえないので、車を手放したり預貯金をゼロにすることを求められることがあります。車は地域によっては必需品ということで、認められることもあります。
仕事に就くために車が必要だと申請したら、私も車が持てた時期がありました。二級ということであれば障害加算もつくし、ギャンブルや外食ばかりしたりして散財しなければ生活できますよ。ご安心ください。


何でもお母さまと一緒に
東京都/手風琴さん


これは専門家に相談することが一番です。まず、お母さまと地域の行政窓口か保健所へ出向き、くわしく説明してもらうといいでしょう。さまざまな方法があると思います。

自室にこもりきりとおっしゃっていますが、親がいなくなったときを心配するのなら、お母さまの後にくっついて、どこにでも出かける勇気を持ってください。
きびしいようですが、人はどんなに弱っているときでも、ふんばらなきゃいけない時ってあります。

年金や医療費、アパートの契約云々、これからは全部お母さまと一緒にやってみてはいかがですか?


■質問3
私は、もしも親がなくなったら、まず、精神的な支えがなくなることでのつらさを想像してしまいます。
病気のことも含めて、最大の私の理解者が親だと思っているからです。
夜中に不安になったとき、一人でどうしたらよいのか、想像もつきません。
そうした孤立感や、不安な気持ちから立ち直ることができるのか、今から心配です。


人とのふれあい
高知県/もっちゃん


三六歳の統合失調症の女性です。
親なきあと、私も孤独とは戦っていかないといけないなあ! と日々感じています。
結婚もしていないし、親も高齢になってきていて、親がいなくなったら、一人ぼっちになってしまいます。

私は、意外と近所の人とのふれあいとかもいいんじゃないか? と考えています。
私の住んでいる地区の人も高齢化は進んできているのですが、小さいときから知っている人ばかりだし、年末に機会があり近所の人との飲み会に参加しました。
そのとき、ものすごく温かい気持ちになり、びっくりしました。小さい頃の話をしてくれたり、普段日常生活のなかで忘れかけていたような感覚を味わい、
「人っていいものだなあ!」と感じました。
「私は一人ではないんだ!」と思えました。

あと、友達も私は大切にしています。健常者の友達、同じ病気で苦しみながらもふんばっている友達!いろいろな視点から話が聞けたり話したり、そういうのも大切にしていきたいです。

私も以前は、
「病気になってしまって、体は生きているけど、心は死んでいるようなもんだ!」
と自分を責め、悲観的になったりしていましたが、意外と世の中いいこともあります。
私もこれからは、何か一人でも打ち込める趣味なんかもみつけられれば、とか、もっといろいろな場所に参加して、もっとたくさんいろいろな友達をつくっていけたら、とか前向きに考え生きていきたいと思ってます。
相談者の方に、笑顔の未来が待っていますように。


ネコに癒されながら
鳥取県/ピクチャ~さん


私は統合失調症の、今年三十路を迎える女性です。
もともとの性格もあってか、友達づくりが苦手で、対人関係は家族や親戚づきあいがほぼすべてです。
特に母親に対しての信頼が強く、また癒しを求めてペットに猫を飼っています。

母親は、自分の死後の私の人生を案じている思いをときどき口にしますが、私は、
「寿命は同じぐらいまで生きようね」
と冗談まじりに話しています。
それでも、いつか親がいなくなるときがきたら …考えたくない気持ちで、今一緒にいられる時間を楽しく過ごそうとしています。

想像しかできませんが、親がいなくなる頃も、きっと私は第何代目かの猫を飼ってかわいがっているだろうと思います。孤独を忘れさせてくれて、温かい気分にさせてくれるからです。
そして、ネットでいろいろなサイトを見て、同じ趣味の人の日常を知ったり、好きなアーティストの情報を仕入れて、楽しいという心を持続できるものと信じていたいです。
本当につらいときは、冷静に立ち返りつつ、きょうだいや数少ない友達に手紙やメールを送ることもあるでしょう。カウンセラーの先生の存在も、忘れないでいくつもりです。