ちょっとオススメ
「マンガでわかる!うつの人が見ている世界」(198号)
うつ病だけでなく、双極性障害や統合失調症のうつ症状など、「うつ」はよく知られるようになってきたと思います。
でも体験したことのない方には、実際にどんなふうに感じているのか、どうすれば回復するのかは、よくわからないと思います。
私はかつてうつ病になったことがあります。
そのときは「自分はなんてダメなんだろう。こんなにダメなのに会社から給料をもらうなんてまわりの人に申し訳ない」とばかり考えていました。
その極端な考え方は、そのときにはすごく自然に感じていました。
そんなふうに、うつの人だけが見たり感じたりしている世界があります。
まわりの人には理解できない世界です。
でも、まわりの人がその世界を見ることができたらどうでしょうか。
この本はうつの人だけが見ている世界をマンガで表現しています。
つまり、見えない人のために可視化してくれる本です。
「身体に岩が乗ったように重くなる」
「音や光が襲ってくる」
「頭がおわんをかぶったように重くなる」
「同じ考えが終わりなく、ぐるぐる続く」
「死をそばに感じて意識してしまう」
そうした世界をまわりにいる人達が実感を持って知ることができると思います。
この本には、7人の登場人物の見ているうつの世界と、そのまわりの人達のとまどいが描かれています。
冒頭で監修の大野裕先生がこんなふうに書いています。
「うつ症状を体験している人の『わかってもらえない』という絶望感と、周囲の人の『わかれない』という苦しみのために、お互いの関係がギクシャクしてきます。うつの治療にとって何よりも大切な、人と人とのつながりが断ち切れてしまうのです」
うつの人が感じたり、見たり、経験していることをまわりの人も感じることができる本。
これはやっぱりマンガならではだな、と思います。
そして私がうれしいな、と思ったのは、この本を監修しているのが『こころの元気+』に連載をしている大野裕先生とコンボであることと、中に出てくる体験談は『こころの元気+』の読者の方であるということでした。
それを知ってより身近に感じました。
もしまた私がうつ病になったら、この本をまわりの人に読んでもらいます。
(岡山県 丸矢丈次)
監修:大野裕・NPO法人地域精神保健福祉機構(コンボ)
マンガ:工藤ぶち
発行:㈱文響社
定価:1738円(税込)