特集1 自分にできることを発見する(191号)


特集1
自分にできることを発見する(191号)

こころの元気+2023年1月号より
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著者:ユキ・アボカド
(メンタルヘルス・インフルエンサー)

 

3つのパターン

「私は役立たずだ」という考えは、当事者、当事者家族、支援者など、立場を問わずかかえうる苦しい考えです。
これがあると居心地が悪くなり、生きづらささえ感じてしまいます。

きっかけや状況は人それぞれだと思いますが、私の場合、自分が「できていない」「役に立てていない」と感じやすい状況が3パターンあります。

役に立つ隙がない

1つ目は、役に立つ隙がないときです。
空間が狭いなど物理的な制限があったり、タイミングがうまく見計らえず入る隙がなかったりして、みんながいろいろやっているのに自分だけ役に立てておらず、苦しくなるという状況です。

●私の対処法

この場合、私は「ただここにいるだけ」という対処法を使っています。

まず〝貢献しなければそこにいてはいけない〟というルールがあるか考え、そのようなルールがない場合も、「何か手伝えませんか?」と聞いてみて、「大丈夫だよ」と言われたら、ただそこにいるだけで自分の役割は十分に満たされていると考えます。

もしそこにいるだけでよいなら、「ここにいること」が役割となります。
こじつけのように聞こえてしまうかもしれませんが、私はこれを思うだけで少し居心地の悪さが減って、「ここにいても大丈夫だ」と思うことができます。

 

できなくなった

2つ目のパターンは、以前できていたことができなくなってしまったときです。

たとえば私は、冬になると体調を崩しやすくなるので、夏にはできていた家事や仕事ができなくなったり、朝起きられなくなったりと、夏の自分と比べてやるせない気持ちになることがあります。

●私の対処法

この場合は、生活の基準を今できることに再調整することで対処をします。

たとえば私なら、夏の自分に基準を合わせると必然的にできないことのほうが増えてしまうので、仕事の量を「冬の容量はこれくらい」と設定しなおして引き受けたり、運動の頻度を減らしたりして調整しなおします。
そうすると、できていないことが何となく減っていき、何だかちょうどいい生活をおくれているような気分になれるのです。

 

慢性的に続く感覚

3つ目のパターンは、自分には役割がないという感覚や、つらい無能感が慢性的に続いている場合です。
このパターンは、1つ目や2つ目と異なって「これが原因でこういう気持ちになっている」という前後のつながりが見えづらいので対処法も判断しづらいように思います。

●5つのこと

また、いろいろな不調が関わっている可能性があるため、私はこのパターンのときは入院中にナースに言われたことを守るようにしています。
それは「5つのことだけできていれば十分」というもので、
その5つとは、

①バランスのよい食事をとる
②夜眠る
③水分をとる
④おトイレに行く
⑤お薬を正しくのむことです。
「これさえ守れていれば十分」と言ってくれたナースを信じて、この5つを大切に守って生活します。

●小さな貢献

そして少し余裕が出てきたら、「小さな貢献」を探します。

たとえば私は入院中、病棟で買えるお茶にベルマークがついていたので、ベルマークを集めていました。
ベルマークを切り取っては集めて、外出の際に近くのコンビニのベルマークボックスにそれを入れて「少しだけ貢献できた」という気持ちをぎゅうっと大切にしていました。

たまたま身近にあった「小さな貢献」がベルマークでしたが、これが「おばあちゃんの肩たたき」や「ゴミ拾い」などでも、おそらく同様の効果があったのではないだろうかと思います。

 

できている心強さ

このように、体調にもよりますが、「私はだめだ」と思うときは、だいたいこの3つのパターンにあてはまることがわかったので、それぞれに使えそうな工夫を使って対処をしています。

無能感を感じる状況を完全になくすというのはむずかしいですが、感じる状況下でも、自分にできることを発見できると、少し心強いのです。

 

こころの元気+2023年1月号より
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