身体・脳・こころを整える  知っておくべき身体合併症(186号)新連載


新連載
身体・脳・こころを整える
知っておくべき身体合併症(186号)

※「こころの元気+」2022年8月号より
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著者:尾崎紀夫
(名古屋大学 精神疾患病態解明学 特任教授)

※お知らせ →くわしくはコチラ
尾崎紀夫先生が、10/29のリカバリーフォーラム2022のランチアワースペシャル
こころの元気+活用セミナー「ここの元気+まつり」で講師をつとめてくださいます。


第1回 自己紹介を兼ねて

今回のポイント
◦私は身体・脳・こころの関係を考えながら、診療、研究、教育をしてきました。
◦「こころの元気」を保つには、脳を含む身体を整えることが大切です。
◦生活や人生、そして命を支えるために、身体や脳とこころの整え方について、この連載をとおして一緒に考えていきましょう。

 

こんぼ亭で話した想い出

私は、2016年の1月にコンボ主催の講演会こんぼ亭で、
遺伝? 育ち? 精神疾患はどうして起こるのか? 研究成果にもとづく遺伝カウンセリング」と題したお話をしました。

雪の降る日でしたが、多くの方々に熱心に聞いていただき、質問の時間ではたくさんの方が手をあげられました。
「遺伝のことで悩んでおられる」方々から、可能ならすべてお話を伺おうと考え、また個人的な内容もあろうと思い、会場の外に机と椅子を準備していただき、皆様からのご質問にお答えしたことが強く記憶に残っています。

 

こころに関心を持ち、精神科医になるため医学部へ

私は「人のこころのありよう」に対する興味から「精神科医になりたい」と考えて医学部に入り、学生時代は身体や脳にはあまり関心を持っていませんでした。
1982年に大学を卒業して医師としての勤務を始めましたが、その当時「精神科医になるのであれば最初から精神科で勤務して訓練を積む」という「研修」の方式が一般的でした。
しかし私の卒業した名古屋大学は「卒業後は、大学病院以外の病院でいろいろな診療科で勤務して、さまざまな疾患の知識や技能を身につけてから、専門とする診療科での研修をする」という方式(この研修方式が今では一般的です)をとっていました。

また、最初に勤務した病院の精神科部長に「最初の研修はどのようにすればよいでしょうか」とたずねたところ、「今後精神科医になるなら、精神科以外のことを学んでほしい」と言われました。

 

いろいろな診療科で勤務して感じたこと

そのため卒業後の2年間は、精神科以外の内科、脳外科、産婦人科、小児科と救急科で勤務しました。
学生時代には思いもよらなかったのですが、この2年間で、身体の病気をもっている方々は、こころの問題をもっていることも多いと知りました。
その中には身体、たとえば腎臓や肝臓の状態が悪くなって脳に影響を与え、それがこころの問題として生じる場合があることも経験しました。
さらにいろいろな診療科に、精神科の患者さんが受診していることもわかりました。
しっかり身体や脳のことを知り、そのことを踏まえた精神科診療が必要だと実感しました。

 

大学病院を含む総合病院の精神科での経験

いろいろな診療科での研修を終え、精神科医としての勤務を始めて以来、今までずっと、さまざまな診療科がある「総合病院」の精神科で働いて来ました(この経歴は精神科医の中では少数派です)。

その間、身体の病気をもっている方々の脳やこころの問題と精神科の患者さんの身体的な問題を、日々の診療で当事者・ご家族と一緒に考えると共に、診療上の課題や疑問点を解決するための研究を実施してきました。

たとえば精神疾患をもっている方は、心臓病や糖尿病を起こしやすく、寿命も短い傾向があることが世界各国から報告されています。
私達は、肥満傾向があり、イビキをかいている当事者の方々には、睡眠中に呼吸が止まっている方が多いことを報告しました。
この「睡眠時無呼吸症候群」については改めてお伝えしますが、心臓病や糖尿病にもつながり、寿命を短くする可能性が高いことがわかっています。

このような身体・脳・こころのことを考えた診療や研究をしていくには、いろいろな診療科の医師やさまざまな研究者と協力して進めることが必要です。
そこで医学生達がどのような方向に進むにしろ、精神疾患に関して以下の4点の理解が必要と考え、教員になってからは精神医学だけではなく、遺伝学・薬理学・公衆衛生といった講義も担当してきました。

精神疾患に関して必要な4点の理解
①誤解・偏見の解消の必要性
②身体、脳とこころの要素を考慮する必要性
③発症頻度が高く、大きな社会的損失をもたらしていること
④身体疾患の患者は精神疾患を合併する頻度が高く、精神医学的介入が身体疾患の患者の予後改善に重要であること

 


※研究にご意見・ご希望を

尾崎先生より:当事者・ご家族から、精神医学研究への意見や希望を伺うサイトを運営しています(下記)。
このサイトにアクセスし、ご協力いただければ幸いです。皆様からの研究に対するご意見・ご希望をぜひお寄せください

http://prenatal.nupsy.jp  ログインID:nagoya-u パスワード:sk25ugsk を打ちこんでログインしてください。

 


筆者プロフィール
尾崎紀夫(おざき のりお)
名古屋大学 精神疾患病態解明学 特任教授
1957年、京都生まれで、人の「こころのありよう」に興味を持って医学部に進み、現在関わっている臨床・教育・研究、いずれも関心事であることはありがたいことです。
研究面では、「精神科領域で生じる日々の臨床疑問の解決」とともに、「精神疾患の病態を解明し、病態に即した診断、治療・予防法の開発」をめざしており、自閉スペクトラム症、統合失調症、双極性障害、うつ病、認知症、摂食障害など、多様な精神疾患の診断・治療法や病態を、生物心理社会的な観点から研究しています。

 

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