ちょっと知りたい! 定型発達(185号)


ちょっと知りたい! ※過去の内容→コチラ

第89回 定型発達(185号)

※「こころの元気+」2022年7月号より
○戻る

著者:佐藤直人
(新潟市域 発達障害者自助グループ「@HOTASの会」主宰)


定型発達とは?

「定型発達」とは、発達障害に対する「ふつうの人」を意味する言葉です。
つまり、自閉スペクトラム症・注意欠如・多動症(注意欠陥多動症)・限局性学習症(学習障害)などの「発達障害」を伴わない人という意味です。
この定型発達の方々が大多数を占めているのが、私達が普段生活する社会です。

発達障害の成り立ち

定型発達を理解するには、発達障害の成り立ちを知る必要があります。

そうですね…お皿に水を張り、そこに水滴をひとしずく落としたとします。
水面には水滴が落ちた位置から水紋が円を描いて広がります。
子どもの発達とは、この水紋のようなものだと思ってください。

年齢が上がるごとに水紋は大きく広がるのです。
知識が増え、あなたと私のような関係性も広がっていく、
でも、お皿にスプーンを置いたら、スプーンの位置で水紋の動きが止まってしまいます。

このスプーンが発達障害を引き起こす原因になる障害物です。
スプーンが置かれる位置により、
文字や数字の理解がむずかしかったり、
一点に集中して作業にあたれなかったり、
あなたと私の関係性の理解がむずかしかったり…という発達障害の目に見える症状が現れるということです。

このお皿の上の水紋の広がりを妨げるスプーンが存在しない、
あるいは小さいので、水面にきれいな水紋を描けた人が定型発達だということです。

世の中のふつう

世の中の多くの方は、このきれいな水紋を描けた人達なので、社会はその大多数の方々に都合よく発展してきました。
ですから世の中のふつうとは、きれいな水紋を一定の大きさ以上で描けた方の視点で表現されるのです。

障害ゆえに水紋がゆがんだり小さくなってしまい世の中のふつうに届かないと、それが違和感と映ることがあります。

問題は、定型発達の方には水紋の広がりを妨げる大きな障害物が存在しないので、
なぜ発達障害者がふつうにできないのか、
ふつうに考えられないのかを理解できないことです。
お皿の上に置かれたスプーンを取り除けば真円の水紋が描けるほど、発達障害は簡単ではありません。

定型発達の方々には、ご自身のお皿にスプーンがなかったことで相対的な優位性が保たれていることを知ったうえで、スプーンがある人との接し方を考えていただければうれしいな…と、発達障害者の私は願っています。

 

※「こころの元気+」2022年7月号より
○戻る