抗不安薬・睡眠薬の適正な使用について(医師)


こころの元気+ 2014年3月号特集より→『こころの元気+』とは 

特集7 抗不安薬・睡眠薬の適正な使用について

ちはやACTクリニック
渡邉真里子


抗不安薬・睡眠薬はどの科でも処方される身近な薬です。

日本で33万人に行った調査で、成人の5・0%の方に抗不安薬が、4・7%の方に睡眠薬が処方されていると推定されました。20人に1人は抗不安薬・睡眠薬を内服していることになりますね。

ところで、睡眠薬が抗不安薬と同じ文中で扱われていることに疑問を持つ方がいらっしゃるかもしれません。
実は、睡眠薬の多くが抗不安薬と同じベンゾジアゼピン系の薬物です。
これらは大脳辺縁系に働きかけ、不安を落ち着かせて睡眠を促す働きをしてくれます。
この薬剤の中で、抗不安効果より睡眠効果が勝っているものを睡眠薬、睡眠薬の中で、より作用時間が短いものを睡眠導入剤と位置づけているのです。

 

抗不安薬・睡眠薬の効果・問題点と処方の現状

抗不安薬・睡眠薬(以下、抗不安薬等)の一番の特徴は即効性があることです。
抗精神病薬や抗うつ薬が数日かけて徐々に効いてくるのに対し、抗不安薬等は数時間で効果を発揮し、不安を和らげたり眠気を誘います。
抗不安薬等は、この作用で、他の薬が効果を発揮するまでのつなぎ役を果たします。

一方で、抗不安薬等の問題点として依存性があります。
また副作用として、眠気・筋肉に力が入りにくくなる・記憶がなくなる(健忘)・頭がぼんやりする(認知障がい)などが出ることがあります。これらの副作用は高齢の方により出やすい傾向があります。

こうした問題があるため、抗不安薬等は原則として短期間や頓服での使用がすすめられています。
しかし、実際にはやめられず、むしろ量が増えることがあります。
平成25年6月に、厚生労働科学研究班から「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」が発表されました。関心がある方はインターネットで検索してご覧になってください。
(平成30年度にベンゾジアゼピン系薬物の1年以上の処方に制限(診療報酬の減算)がかかりました)

 

適正な使用に向け、自分でできること

抗不安薬等が他の向精神薬とともに処方されたときにおすすめしたいのは、お医者さんに「出された薬の中で自分にとって一番大事な薬は何ですか?」と尋ねることです。
この質問で大切にするべき薬がわかります。そのうえで「他の薬はどうなったらやめていけますか?」と聞いてみましょう。
その中に抗不安薬等が入る可能性が高いです。

現在、3種類以上の抗不安薬または睡眠薬の処方は再検討が推奨されています(平成23年厚生労働省「向精神薬の処方に関する実態調査結果を踏まえた対応について」)。
(平成30年度時点では、抗不安薬を3種類以上、睡眠薬を3種類以上、抗不安薬と睡眠薬を合わせて4種類以上出すことに(診療報酬をへらすという)制限がかかっています)
処方量を検討する1つの目安として、ジアゼパム換算という方法があります。
これは、外国のお金を円に換金するように、各々の抗不安薬の効果を、ジアゼパム5㎎を1つの単位としてそろえて考える方法です。適切な量は、ジアゼパム換算で1日15㎎までです。

ただ、抗不安薬等を急に減量すると、逆に不安になったり、眠れなくなることがあります。これは、くせになったため起こる『離脱症状』と呼ばれるものです。
毎日内服されていた方は、数か月かけてゆっくりと減らす必要があります。でも、減らしたい気持ちがあれば、必ずできますので根気よくがんばりましょう。

 

終わりに

抗不安薬等は、量と期間が適切であれば、さほど怖い薬ではありませんが、やめるタイミングを逸している方が多いのも事実です。
お医者さんや薬剤師さんと相談しながら、よりよい処方をめざしましょう!