特集1 孤独とは何か、孤立とは何か


特集1 孤独とは何か、孤立とは何か
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著者:山田幸恵
(東海大学 文化社会学部 心理・社会学科 教授)

 

孤独とは何か?

「孤独」は心理学の分野で「孤独感」として研究されています。「孤独『感』」とつくことでわかるように、孤独は主観的な体験です。

どのような体験かというと、
「個人の社会的関係のネットワークが、量的あるいは質的にある重要な点で不足しているときに生じる不快な体験」です。
その人が持ちたいと望んでいる社会的関係のネットワークと比較して、少なかったり、不満だったりするときにも感じます。

孤立とは何か?

「孤立」は社会福祉学の分野で「社会的孤立」として研究されています。
社会的孤立とは客観的な状況です。

どのような状況かというと、
「意味のある社会的関係のネットワークが欠如した状況」とされています。
これは家族親族関係、友人関係、近隣関係といった社会的関係が少ないという状況です。
具体的には、
日常生活の困りごとがあったときに援助してくれる人がいない、
困りごとや悩みごとの相談者がいない、
緊急時に援助してくれる人がいない、
といった状況になります。

孤独と孤立

社会的に孤立していると孤独を感じる可能性は高まりますが、必ずしも孤立している人が孤独を感じているわけではありません。
逆に、社会的に孤立していなくても孤独を感じる人もいます。
つまり、同じ状況で孤独を感じる人もいるし、感じない人もいるということです。
これは、状況自体が孤独感を生み出すのではなくて、その状況を個人がどのように考えるか(認知するか)が孤独感を生み出すということです。

たとえば1人で食事をしている状況を考えてみましょう。
これは、客観的に孤立した状況といえます。
この状況を、
“人と話をしながら食べたいのに1人だ”と考えれば「孤独」を感じるでしょう。
一方で
“1人で好きなように食べられる”と考えれば「孤独」ではなく楽しさを感じるかもしれません。

孤独・孤立は問題なのか?

社会的関係のネットワークはストレスを緩和する要因の1つでもあります。
たとえば何かストレスがあったときに、人に話すと落ち着く、といった経験がありませんか?
話す相手は誰でもいいわけではなく、やはり安心して話ができる友人・仲間がいいですね。
この仲間の不在と孤独感のつながりが強いといわれています。
そして孤独感は心身の不健康との関連があることが示されています。

○ソロ活

ところで、最近「ソロ活」という言葉をよく聞きます。
これは、あえて1人を楽しむという意味合いで用いられる表現です。
「ソロ活」はあえていえば、自分から孤立した状況を作り出すことです。

人にとって社会的関係のネットワーク、つまり人間関係は重要であることは間違いありませんが、それ自体がストレスの原因になることもあります。
「ソロ活」はそのようなストレスから解放されるというポジティブなイメージの言葉です。
つまり、孤立している状況それ自体が問題というよりも、それによって孤独を感じている場合に問題になるといえます。
孤独を感じて、その孤独に苦しんでいる」ということが問題なのです。

孤独・孤立とのつきあい方

経済協力開発機構(OECD)の調査によると日本人は、
「(仕事以外)人とのつきあいがない」と回答する人の割合がOECD諸国の中で最も高いそうです。

これは、個人の性格の問題というよりも、日本の文化的特徴が大きく影響していると考えられます。
日本人は仕事上の役割としての関係が先にできている場合は別として、関係がまったくない状態から人と交流することが苦手な人が多いようです。

コロナ禍の中で人と会うことが制限されている現在、どのように孤独を軽減することができるでしょうか?
現在の状況についての考え方を変えてみるのも1つの方法でしょう。
また、自分にとって心地よい人と心地よくつながる新しい方法を模索するのも1つです。
今まで経験のしたことのないコロナ禍の中で、今まで経験したことのない“新しい”人との関係を見つけられたらいいですね。

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