特集7 当事者として、東日本大震災後の今と備え


特集7 当事者として、東日本大震災後の今と備え

石巻地域若者サポートステーション  
総括コーディネーター 内海章友

━━━━━━━━━━━━━
あの日から8年
━━━━━━━━━━━━━
 2011年3月11日金曜日14時46分。これは東日本大震災が発生した時刻です。
 このとき皆さんは、どこで誰と何をしていましたか?
 最近、マスメディアから「記憶の風化」という言葉が多く聞こえてきます。
 しかし、震災でたくさんの人やものを失った被災者の1人として、東北―宮城・福島には決して風化も忘却もないと感じています。
 宮城県石巻の自宅跡地は盛り土され、高い防潮堤の再建が進んでいます。
 もう1つの故郷、福島県本宮では、原発汚染土の入った真っ黒で巨大な袋が、あちらこちらにうず高く積まれています。
 両親が県外避難している都内公営住宅では、故郷への帰還を決意する人、帰還しないと決めた人など、さまざまな想いが交錯しています。
━━━━━━━━━━━━━
災害は自分事
━━━━━━━━━━━━━
 近年も全国各地で集中豪雨や巨大地震などの大規模災害が続き、多くの地元住民から、
「まさか、こんなことが起こるとは」
「自分達のところはだいじょうぶだろうと思った」などのコメントがマスメディアを通じて多く聞かれます(正常化バイアス)。
 誰しも、災害で大きな被害を受け、喪失体験をしたり、苦悩をしたくはありません。「自分はだいじょうぶ」と不安にふたをしても、災害は他人事ではなく自分事。
 災害大国日本に暮らす私達は、これらを直視する勇気が求められます。
 仕事や家族、友人、日常風景などなど、どれ1つとっても、これからもずっと変わらずあり続ける保証など、どこにもないことを知りました。
生きにくさをかかえる私達も、命ある限り、ただひたすらに生き抜く覚悟を持ちたいものです。
━━━━━━━━━━━━━
気づきやヒント
━━━━━━━━━━━━━
 たまたま自衛隊に救助され、避難した小学校で震災翌日から10日間弱の時間をサバイブした僕から皆さんへ、今後の防災への気づきやヒントになることがあればと、8年前の僕自身の反省をもとに、いくつか書き出してみました。
 ぜひ自分流にアレンジして、いざというときに活用していただければ幸いです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
防災への気づきやヒント こころの元気+編集部がまとめたものです
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□ お薬手帳(説明書、診察券など)
 避難先で手持ちの薬が切れ、誰もが冷静になれない状況で医療スタッフが巡回した際、客観的情報として、その重要性を感じました。
□ ヘルプカード(ヘルプマーク)
 市町村などから無料で配られています。
 二つ折りのヘルプカードに疾患名やかかりつけ医、
緊急連絡先などを記入しておくと安心です。
□ みやぎ医療福祉健康共通IDカード(MMWIN: http://mmwin.or.jp/index.html)
 震災後にできた宮城県内の医療機関や薬局間での情報を共有するシステムです。本人のデータ(処方薬や受診状況など)が、希望により医師や薬剤師などへシェアされます(皆さんの地域にも同様なシステムがないか調べておくとよいでしょう)。
□ 処方薬のストック
 日頃から主治医とよく相談し、災害緊急時用の常用薬2~3日分と服薬のための水などを準備しておくことをおすすめします。
□ 支援(避難)体制の確認
 自治体より要援護者の認定を受けた際には、担当する町会役員や民生委員などと災害発生時の対応や避難の流れを共有しておきましょう。
□ 避難ルート・避難先について
 日頃から、家族・友人・知人・親族らと、福祉避難所の有無やルート、避難先について共有しておきましょう。
□ 避難所生活での留意点
 自身の疾病や障害に対する配慮事項等を、早めに避難所スタッフの教員や自治体職員、町会役員、ボランティアなどのキーパーソンへ伝え、協力を依頼しましょう。
□ PTSD(心的外傷後ストレス障害)への留意
 避難所生活での避難者同士の会話や自力での捜索を継続する場合、時としてそのリスクを大きくしかねないので、留意が必要です。
□ 安静とセルフケア
 非常時ゆえに心身のストレスは予想以上です。周囲の理解を得たうえで、不眠・不穏・不安などの症状が再び悪化しないように努めましょう。
□ 避難するときに持っていく物
 持ち出したい貴重品や薬などは、常に同じ場所や入れ物へまとめて保管しましょう。
□ 日常生活の中でできること
「今この瞬間、○○が起きたら自分はどうすべきか」など、家庭や福祉事業所、精神科デイケアの仲間とともに災害について知恵や工夫を出し合うなど、防災意識を忘れない。