復職でうつ病が再発しないか?(Q&A)


「こころの元気+」2018年10月号(140号)より

うつ病Q&A「うつむいていてもリカバリー」

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第2回 復職で再発しないか?

丸矢さんからの質問
 40代の男性です。うつ病と診断されたのが3か月前。それから2週間後に休職となりました。
 今は抗うつ薬1剤を1日3回、寝る前に睡眠薬を1錠のんでいます。
 発病時には、何か月も眠れない日が続いていたのですが、睡眠薬のおかげでよく眠れるようになりました。抗うつ薬は、効いているのかよくわかりません。

 でも、今一番心配なのはこれからのことです。
 できれば同じ会社に復職したいと思っています。少人数の会社なので、私の復帰を待ってくれています。
 でも、仕事や会社の経営状態などのプレッシャーが発病の原因だと私も医師も判断しているので、病気が改善して同じ環境に戻ったら、元の木阿弥で再発してしまうのではないかと、それが心配なのです。

 医師からは「環境は変わらないが、自分が変わるという手もある」と言われましたが、その意図が今ひとつよくわかりません。
 同じ環境に戻って、再発せずにやっていけるものでしょうか?

精神科医からの回答
菊地俊暁先生(きくち としあき)
慶應義塾大学病院勤務/認知行動療法研修開発センター理事/日本精神神経学会精神療法委員会委員

もとの職場への復職を想像すると、さまざまなことが不安ですね。
 実際に戻ってみると「想像していたよりもスムーズだった」「取り越し苦労だった」とおっしゃる方が多いのも事実です。
〝案ずるより産むが易し〟ということでしょうか。
 でも、職場から距離がとれている今だからこそ、対策を練っておくとハードルは下がります。

 対策の一つは環境に働きかけること。
 段階的に負荷を増やすことが再発を防ぐ原則です。責任のある仕事を少なくし、他人のサポートから始めると負担が少なくてすみます。
 主治医と協議し、どんな形で戻るのがよいか職場とも相談していきます。

 もう一つの対策は、自分の取り組み方を見直してみること。
 自分で追いこんでいなかったか、一人でかかえていなかったかなど、休む前をふり返り、今後同じような状況のときにどうするのがよいか考えておきます。
 それが医師の言う「自分が変わる」ことになると思います。
 もちろん今までのやり方を変えるのは簡単ではありませんが、実際に取り組み方が変わると再発率も大きく低下するといわれています(Evans et al., Arch Gen Psychat, 1992)。
 相談できる人を想定しておいたり、他人のやり方を参考にしたりするのもよいかもしれませんね。

当事者でピアスタッフからの回答
黒川常治さん(くろかわ じょうじ)
うつ病患者。現在、社会福祉法人巣立ち会ピアスタッフ。グラフィックデザイナー

僕がうつ病になったきっかけも仕事でした。まわりからの期待と自分に意欲があったので、がんばっていました。
 しかしキャパオーバーになり、睡眠のリズムが狂い、不眠症になり、緊張状態の連続が響き、うつ病になりました。
 やっととれた休暇で復職も試みましたが、以前と同じようには働けず、仕事が生きがいだっただけに、辞めるとき悔しかったのを思い出します。
 でも、もとの会社に戻りたい気持ちはよくわかります。自分のことをよく知っていてくれている同僚や上司は宝物ですし、今まで築いた大切なご縁でもあります。

復職に大切なこと
 ただ、以前のように踏ん張りのきかない自分のことを理解し配慮してもらえるか、自分が自分のサインに気づけるかがカギになるかと思います。
 復職にあたってのウォーミングアップ、仕事の内容の調整が可能なのか、また、薬をのむ生活に対しての理解も得られるのか、ということも大事でしょう。何がしんどかったかも伝えられるといいと思います。
 具体的には、
復職し始めの時短勤務や通勤混雑を避けること、
残業の回避などの時間的工夫や、仕事の分量を2人に分けるなどの仕事量の調整などです。
また、仕事上のお酒の席も、薬のことを考えると今まで通りにはいかないかもしれません。
 しかし、順調に回復していけば、できることも増えるはずなので、必要な配慮も減り、変わってくるでしょう。

 自分も今まで以上に身体をいたわり、がんばるときと休むときなどのペース配分も気をつけ、対処法を知っておくことが大事になってきます。
 自分が体調を崩すきっかけや、崩し始めるサインにいち早く気づくことです。
 睡眠のリズムや質の変化はその代表例です。睡眠時間が短くなったり、早朝覚醒、中途覚醒、また起きづらさなどがあげられます。
 僕は特に季節の変わり目が苦手で、春はいつも睡眠が乱れます。そんなときは銭湯などに行き、お湯の風呂と水風呂に交互に入る「交互浴」をしています。交感神経と副交感神経に働きかけるようです。また残業が重なると生活リズムが乱れるので、会社に時間的配慮をしてもらっています。
 このように、自分なりの対処法を探ることは大切な要素でしょう。

 また、意外に忘れがちなのがユーモア、リフレッシュ、休養です。特に休養は「何もしない日」を設定すると無理せず過ごせるかと思います。
 復職はぎこちない面もあるかと思いますが、あせらずゆっくり挑んでください。