抗うつ薬の離脱・減薬(医師)


「こころの元気+」2016年5月号特集4「抗うつ薬や抗コリン薬の離脱症状と対処方法」より→『こころの元気+』とは

医療法人学而会 木村病院
渡邉博幸


抗うつ薬の離脱と減薬

抗うつ薬を急に中止(断薬)すると、一気に脳内セロトニン濃度が下がって、離脱反応が生じることがあります。
一般的に、中断2日前後に始まり、1週間程度続き、その症状は次のように多彩です。

①吐き気やおう吐、食欲不振といった消化器症状
②発汗や火照り、いつもより暑く感じるといった自律神経系の変化
③寝にくくなったり悪夢を見たりする
④めまいやくらくら感、ふらつき
⑤手の震えや脚のムズムズ、話しにくい等の動作の異常
⑥気分の変動、焦燥不安感、イライラ、困惑などの精神症状
⑦電気ショックを受けたような異常感覚や耳鳴り、音への敏感さなど感覚の変化
⑧疲労感、全身倦怠感、筋肉痛、頭痛といったインフルエンザのような症状

特にSSRIで注目されるようになりましたが、セロトニンを増やす作用を持つ抗うつ薬ではどれでも生じうることを念頭に置いて、上記のような症状がみられたら、直前に抗うつ薬を減量・中止していないかを確認しましょう。

抗うつ薬減量スケジュール

抗うつ薬をのみ始めて4週間以下の場合は、離脱反応が形成されていないので、減量は不要のことが多いです。
それ以上長く服用している場合は、離脱反応を起こさないようなゆっくりした減らし方を計画します。

1 漸減法
離脱反応が強く現れた場合は、いったんもとの量に戻し、ゆっくりと時間をかけて減量を試みます。
1回の減量で減らせる量については、抗うつ薬の半減期(薬の血中濃度が半分になるまでの時間)が影響するかもしれません。
半減期が比較的短い抗うつ薬(パキシルやイフェクサー)を減らすときは、特にゆっくり少しずつ減量します。

減らす間隔については、定まっていません。
私は、少なくとも2~4週間かけて最小剤型量分を減らすようにしています。
たとえばパキシル40㎎を減らす場合は、トータル4~5か月をかけて、まず2~4週間で30㎎、次の2~4週間で20㎎、さらに2~4週間で10㎎として、その後5㎎の期間を挟んで0にしています。
このくらいの、ゆっくりした減らし方がコツかもしれません。

2 抗うつ薬の切り替え
半減期の短い抗うつ薬では、漸減法で慎重に減らしていっても、どうしても離脱反応が出てしまう場合があります。
半減期のより長い抗うつ薬に切り替えてから、ゆっくり減らす方法もあります。

しかし、外国で用いられるプロザック※のように4~6日というきわめて長い半減期をもつ代替薬はありませんので、この方法に対して過信は禁物です。

離脱反応を理解する大切さ

薬を減らしたための症状悪化と捉えて、健康やセルフコントロール感に自信を失くしてしまい、「一生薬に頼らなくてはいけない」とあきらめてしまう方がいます。
医療者が減薬をすすめても、断固として服用にこだわる方も少なくありません。

一度、再発と思いこんでいる体調変化を、ふり返って整理してみてください。
抗うつ薬(特にSSRIやSNRI)をのんでいる方で、もし前のような症状が薬をやめてすぐに現れたときは、離脱反応の可能性があります。減薬の可能性やタイミングについて、担当医と相談してみましょう。


※プロザック:成分名フルオキセチン。
日本では未承認(2016年4月時点)の選択的セロトニン再取りこみ阻害薬(SSRI)