特集2 働く場で自分のことを伝える工夫


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著者:建石幸子
一般社団法人ルンアルン  ルンアルン1 就労支援員)

一般社団法人ルンアルンが運営している多機能型事業所ルンアルン1に所属している建石です。
就労支援を担当しており、メンバーさんの就職活動や仕事のある生活を応援しています。

メンバーと雇用主の声

精神疾患がある方の就労支援に携わる中で、こんな声を聴いたことがあります。

メンバーさんからは、
「職場に自分のことを伝えるのはむずかしい」
「どこまで伝えていいのか、わからない」
「『言い訳じゃない?』って、捉えられそうで言いにくい」
など。

一方、雇用主側からは、
「働いている姿を見て気になることがあったら(例・手が震えている)…ご本人に確認するのは失礼にあたりますか?」
「あまり自分から話されないので、困っているのかがわからない」
「こちらの印象で仕事内容を決めることはできないので、自分から『できる・できない』を教えてほしい」
など。
メンバーさん、雇用主側、両方のお話をお聴きする立場の者としては、
「働き続けるために自分自身のことを伝えるのは、すごく重要なことだけれど、すれ違いも起きやすいところだなぁ」
と感じています。

働く場で自分のことを伝えるためにできること

では、自分自身のことをどのように伝えたら双方が安心できるのでしょうか。
その人らしさや性格などは、働きながら場や時間を共有することで、徐々にわかってくる部分が多いと思います。
一方、得意なこと、苦手なことも働きながら気づくことがありますが、これから就職活動をされる方や働き始める方は、事前に雇用主側にお伝えできていると安心です。
ただ、雇用主側はどんなことを知りたいのか、どの部分を心配しているのか…、考え出すときりがありません。

●就労パスポート

その際に活用できるツールとして厚生労働省が発表した「就労パスポート」があります。
就労パスポートは厚生労働省のホームページから内容や使い方をダウンロードすることができます

先に述べた雇用主側から聴かれた声をふり返ると、就労パスポートに記載されている体調管理・コミュニケーション面・作業遂行面(仕事の取り組み方)にあてはまるのではないかと思います。
就労パスポートは、雇用主側が知りたいポイントがギュッとまとまっているので、アピールポイントや自分の特徴、必要な配慮を具体的に洗い出すことができます。
また自分自身で対処できることをあわせて考えておくと、ご自身の見えない努力や工夫が伝わり、かつ雇用主側も安心されるのでおススメです。
まずは、頭の中でぼんやりと考えるだけではなく、雇用主側が知りたいのはこのポイントか…とイメージしながら、
「紙面に書き出し、端的にまとめてみる」
「チェックだけでも入れてみる」
ことで、考えるきっかけになったり、伝えるポイントが少し見えてきたりするかもしれません。

いつでも何回でも

働き続ける中でも定期的に雇用主側と話をすることが大切です。
なぜなら、働き続ける中で得意なことが見つかったり、くり返し経験することで苦手なことへの対処方法がわかったり、
「こんな方法があったのか!」と棚からぼたもち的に気づいたりすることがあるからです。

ただ日々の業務の中では、ゆっくりと話をするタイミングがなかったり、上司が忙しそうで遠慮してしまったり、そもそもシフトがかぶりにくかったりすることがあります。
そのため、
●定期的に面談する
●退勤時にふり返り時間を設ける
●業務日報を使用してやりとりする
●何気ない雑談
など、ご自身・雇用主側にとって有効で、かつ負担の少ない方法を探っていけるとよいと思っています。

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