休み方がわかりません(Q&A)


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「こころの元気+」2018年11月号(141号)より

うつ病Q&A「うつむいていてもリカバリー」

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第3回 休み方がわかりません

Nさんからの質問

 3か月前にうつ病と診断されて休職中の30代女性です。
 私の家は、私の両親と兄、父親の両親と三世代で暮らしています。
 私の母親は姑と仲が悪くて、ときどき険悪な雰囲気になります。そのせいで、すごく面倒で騒がしい家です。
 居心地がよくないので、病気になる前は、できるだけ私は夜遅く帰宅して、食事をすませるとさっさと寝ていました。
 うつ病になって、あまり外に行くエネルギーがなくて、たいてい家にいます。
 医師は、ゆっくりと休むように言います。うつ病の本を読んでも、休むように書かれています。
 私は、常に忙しくしてきたせいか、休み方がよくわかりません。休めと言われても、どうしてよいのかわからないのです。また、自分の家も居心地がよくありません。
 うつ病になったときの休み方というのは、
「とにかく寝る」ということなんでしょうか?
 とても基本的なことだと思うのですが、よくわからなくて、質問をしました。


精神科医からの回答
菊地俊暁先生(きくち としあき)
慶應義塾大学病院勤務/認知行動療法研修開発センター理事/日本精神神経学会精神療法委員会委員

「休みましょう」と我々医師は言いますが、簡単ではないですよね。自戒をこめてそう感じました。
「休む」というと横になって寝ることと思われますが、休養と言い換えてみてください。この「養」は養生を意味します。本来の力を養って取り戻していく、というイメージでしょうか。 
 江戸時代の学者、貝原益軒の本『養生訓』には、養生法の一つに「山水を眺め、月花をめで、草木を愛し」とあります。なかなか現代人にはきびしいですが、いかに心地よい時間を作れるか、ということでしょう。
 横になっていると気持ちが休まるのであれば悪くありませんが、むしろいろいろ考えてしまってよくない、という方もいます。
 その場合には、起き上がって空を眺めたり、陽の光を感じるのもよいでしょう。誰かと話して楽になることも、一人でパズルをすると余計なことを考えなくてすむということもあります。
「家が居心地よくない」とのことですので、家全体が休まらないのか検討し、楽になれる場所や時間、ものごとを探してみるのはどうでしょうか。
 少しでも気持ちが軽くなれる、そんな「心の休み時間」を自分に作ってあげられるとよいですね。

当事者でピアスタッフからの回答
黒川常治さん(くろかわ じょうじ)
うつ病患者。現在、社会福祉法人巣立ち会ピアスタッフ。グラフィックデザイナー

一言に「休む」といっても、いろいろありますよね。
 寝るのは身体的な休養なのでしょう。でも気が休まらないと「ゆっくり」した気になれないですよね。
 たぶん医師は、身体的にも気持ちの面でも休むことを勧めているのだと思います。

 今の環境だと気が休めていないのかなと思います。
 まず「自分が落ち着く=気が休まる場所」がどんな所か、どこだと静かに、そして心おだやかにのんびりできるのかを探すことだと思います。
 図書館が落ち着く方も、ネットカフェが落ち着く方もいるでしょう。地域生活支援センターなどでも、居場所を提供していることがあります。
 あまりお金をかけず、気をつかわず過ごせる場所がいいと思います。
 僕も発病後、静養で家族のもとに帰りましたが、病気への理解が得られず、「ここでは、よくなるものもよくならない!」と求めた居場所が「グループホーム」でした。
 グループホームではゆっくりした時間が流れ、一人の時間も大切にでき、自分らしく暮らしながら休めました。僕のリカバリーの出発点は、そのグループホームでの時間と空間でした。
 安全で安心な時間と空間に身を置くことで、普段いかに自分がいろいろ気をつかい、せかされ、疲弊しているかに気づかされます。家族という一見安全のような場所でも、意外に気をつかい、我慢もしているものです。

 また、普段忙しいのに慣れていると、「何もしない」ということがむずかしくなります。「だらしなくしている」と考えてしまう方もいます。
 普段、力んでしまっているほうが、力を抜くことがむずかしいことと一緒かと思います。
 かくいう僕もそうです。でも最近はプールでウォーキングすると、体の力みが減り、考えすぎている脳も休んでくれているようで、睡眠の質も変わりました。
 一気に「何もしない」ができなくても、少しずつ「やっていること」を減らして、変えてみてはいかがでしょうか。そして自分なりの「休み方」を見つけて、ゆっくりできるようになったら、少しずつまた「できること」を増やしていったらいかがでしょう。
 自分なりの「休み方」が見つかると「他にもないかな?」とアンテナをはるようになります。
 おだやかに過ごせる場所は、また疲れたときの癒やしの場所にもなり、リカバリーへとつながります。
 ぜひ、自分なりの休み方を見つけてみてください。