ちょっと知りたい! 均てん化(220号)


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第123
均てん化(220号)

○「こころの元気+」2025年6月号より
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筆者
橋本亮太 
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 
精神疾患病態研究部


「均てん化」とは?

国立がん研究センター「がん情報サービス」のがん統計の用語集では、「(がん医療の)均てん化」に「全国どこでもがんの標準的な専門医療を受けられるよう、医療技術等の格差の是正を図ること」と書かれています。
この「標準的」な専門医療とは、科学的根拠にもとづいた観点で現在利用できる最良の診断・治療という意味です。
このような治療が全国どこでも受けられるようになると理想的ですよね。

 

精神科領域でなぜ必要とされているのか

一方、精神科領域の治療では当事者の個別性が重視されがちであり、その結果大きなばらつきがあります。

たとえば統合失調症のガイドラインでは、抗精神病薬の単剤治療(1種類だけの抗精神病薬で治療を行うこと)が「標準的な」医療として推奨されています。

しかし、全国の44病院で退院時の統合失調症患者の処方を調べると、単剤治療率は平均57%で、一番高い病院が100%である一方で、一番低い病院は0%でした。

このように、精神科領域では「標準的な」医療がむずかしく、均てん化が不十分とされています。

しかし、近年はがんなどの領域と同様に、科学的根拠にもとづいて作成された「統合失調症薬物治療ガイドライン」などが標準的な医療として公開されるようになりました。

 

EGUIDE(イーガイド)プロジェクト

精神科領域においても「均てん化」のため、精神科治療ガイドラインの普及・教育・検証活動であるEGUIDEプロジェクトが2016年に立ち上がりました。

現在、全国47大学320医療機関が参加し、延べ4800人がガイドラインの講習を受講し、「均てん化」が進みつつあります。

EGUIDEは、コンボやみんなねっとの後援を受け(2024年12月から)、その期待を背負って精神医療の世界を変えるための活動を行っています。

また、医療は当事者と医師が共に考えて決めていくものです。
これを共同意思決定といいますが、そのためには、当事者が標準的な医療について理解する必要があります。
そこで、簡単に理解できるガイドライン一致率というツールを開発しました。
これを用いて、全国どこでも、一人でも多くの当事者の方と一緒に標準的な医療を考えていけるようになる世界をめざしています。

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