東海道新幹線内殺傷事件の報道について緊急要望書を提出


2018年6月9日、東海道新幹線内で起きた殺傷事件の報道について、コンボでは、マスコミ各社に下記の緊急要望書を提出しました。皆様にご報告いたします。
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東海道新幹線内殺傷事件の報道について
緊急要望

2018年6月11日
認定NPO法人地域精神保健福祉機構

日頃、貴社におかれましては社会正義のため迅速で正確な報道のためご尽力されていることに対し深甚なる敬意を表します。
私たち「認定NPO法人地域精神保健福祉機構」は、2007(平成19)年1月に設立したNPO法人であり、通称をコンボと申します。 私たちは、「精神障害をもつ人たちが主体的に生きていくことができる社会のしくみをつくること。そのために地域で活動するさまざまな人たちと連携し、科学的に根拠のあるサービスの普及に貢献すること」を使命とし、精神保健福祉関係者、ご本人・ご家族の皆さまに、ご指導・ご支援をいただきながら活動しております。
6月9日東海道新幹線内で起きた殺傷事件について、被害にあわれた方の一日も早い回復を願うとともに、亡くなられた方に対し深く哀悼の意を表します。またご家族の皆さまの驚きや悲しみをお察し申し上げます。
さて、この事件で逮捕された男について、一部報道では、「発達障害」や「自閉症」との診断名や、精神科入院歴などが報じられています。このような特定の疾患や障害、精神科入通院歴に関する報道に対して、私たちは、偏見の助長につながる問題報道であると深刻に受け止めています。
今後の裁判での動向もわからないのに、警察発表のままに速報で報道を行ったためだと思われます。そのため、ネット上でも偏見の声が上がっていることに私たちは非常に懸念を持っております。このまま精神障害者を排除するような世論形成、行政の動き、立法府の動きに報道機関が加担しないことを望みます。
2016年7月26日の相模原事件でも措置入院の過去があったと報じられ、措置入院の見直しが盛り込まれた精神保健福祉法改正の動きへとつながりました(その後衆議院の解散により廃案)。
この法案は、治安目的の法改正であり、地域で生活する精神障害者を管理・監視のもとに置くということで、精神保健福祉法の趣旨を逸脱したものとコンボでは声明を出し、また精神障害者関係者からも激しく抗議がありました。事件の詳細が明らかではない時点で、法改正へと突き進んだ政府・厚労省は論外ですが、報道機関にも責任の一端があるのではないでしょうか。
「精神科病院に入院」していたことや「発達障害」「自閉症」といったことがたとえ事実であっても、いまだ事件との関わりは不明であり、責任能力に関しても裁判で初めて明らかになることです。しかしながら現在の報道では、精神疾患について、事件との関わりを読者・視聴者に強く想起させ、それを原因と受け止めてしまったり、精神疾患を持った人は「怖い」「危険」「何をするかわからない」「社会から排除すべきである」「監視の対象にするべきだ」といった偏見・予断を助長させてしまいます。
報道機関は、社会的偏見の形成や是正に多大なる影響力を保持しています。また、行政や立法機関からも、マスコミ報道を利用して、精神障害者を管理・監視する仕組みづくりを行うという、言い訳としても使われる、そうした自らの影響力を考慮した報道をお願いいたします。
発達障害の方たちは、日常生活に生きづらさを感じながら生活しています。そのことがひきこもりや社会的孤立につながる原因ともなっています。事件報道によりさらに社会の中で肩身の狭い思いを強いられることになりかねないと危惧します。
そうした人たちの立場や気持ちにも配慮した報道を重ねてお願いいたします。

 

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