復職しようと思っているのですが…


Q 私は三五歳の女性です。コンピューターで製図の仕事をしていて、夜中になることもあたりまえの環境です。負けず嫌いの性格で、男性社員と同じようにバリバリと仕事ができることに生きがいを感じていました。しかし、そのうち体調をくずしてしまいました。最初は内科の病院に行きましたが、そこから紹介された精神科のクリニックでうつ病であることがわかりました。三か月間休職をしましたが、完全に復調したわけではありません。でも、会社に戻らないと自分の居場所がなくなってしまう気がして、早く復職したいという気持ちも強いのです。
 また、これ以上長く休むと、解雇されてしまうのではないかと不安です。でも、私の職場は、メンタルヘルスの観点からいえばひどい状況で、精神的にすりきれてしまい、やめていく人は後を絶ちません。人事担当者を含めた会社側も、改善をする雰囲気はまったくありません。復職しても、前と同じようなペースで仕事をすることを求められたら、同じように病気になってしまうと思うのです。私はどうしたらよいのでしょうか。専門家の方や、同じような体験をした方のご意見をお聞かせください。

A 障害者手帳はお持ちでしょうか?/もくれんさん(千葉県)

こんにちは。私は統合失調症を患う三四歳の男性です。コンピューター関係のお仕事とのことですが、この方面のお仕事は、労働条件がきびしい方もおられるようですね。健康な人でもつらいお仕事ですから、ましてや病気を抱えながら働くのはご自身にとってよくないと私は思います。そこでうかがいたいのですが、精神保健福祉手帳(障害者手帳)はお持ちでしょうか?障害者手帳を持つことは抵抗があるかもしれませんが、私は手帳をお持ちになることをおすすめします。理由は、病気をオープンにして、求職活動ができるからです。

 ハローワークの障害者部門に行くと、システム・エンジニアなどのコンピューター専門職の障害者向けの求人がたくさんあります。あるいはコンピューターがお得意なら、その系列で事務職などには興味はありませんか? エクセル、ワードなどが使いこなせるのであれば、ご自身としては納得いかないかもしれませんが、事務職などはいかがでしょう。これも、ハローワークの障害者部門に行くと、かなりの求人があります。
 これまでコンピューターの専門職をされていた、ということなので、企業からみたら、即戦力として期待されると思います。以上、何だか押しつけがましい回答になってしまい申し訳ありません。よく療養されて、今後、ご活躍されることをお祈りしております。

A 自分と相談しながら/白戸さん(東京都)

 私も相談者の方のようにCADで図面を描いたり、設計の仕事をしていました。そして男性と対等に働けるようにと思い、がんばって働いていました。仕事が自分の生きがいでありライフワークでもありました。ところが三七歳のとき、統合失調症になりました。せっかく続けていた仕事だったのですが、私のいた業界も残業はあたりまえで病気にとっては劣悪な環境だったので、治療に専念するために会社を退職しました。
 病気さえよくなれば、以前と同じように働けると思っていました。そしてリハビリのため、いろいろなバイトをしましたが、病気の後遺症で理解力・作業能力の低下が残り、仕事をするうえでは致命的な問題でした。現在は病気をオープンにして働いています。相談者の方は三か月休職していらっしゃるそうですが、まだ完全に復調していないとのこと。あまり無理はなさらないほうがよいのではないでしょうか? それがあせりとなり、ストレスとなって、病気が再発する可能性もあります。体調がよくなり、復職できるときがきたら、人事担当の方とよく話しあって、仕事内容から考えていってはいかがでしょうか? まずは図面の修正からはじめるとか、短時間労働にしてもらうとか、残業はなくしてもらうなどが、よいのではないでしょうか。
 一日も早く職場に戻りたいという気持ちもわかりますが、お互いに専門職の経験者なので、気持ちに折りあいをつけるのがたいへんなのはよくわかります。たとえ病気でも、自分の好きな仕事は続けていきたいですよね。夢をあきらめず、自分の状態と相談しながら、自分のできる範囲でがんばってみてはいかがでしょうか。

A 働くことの意味を改めて考えるチャンスにする/香田真希子さん(作業療法士)

 EAP(Employee AssistanceProgram)などの職場でのメンタルヘルスをサポートする機関が徐々に企業に入り始めていますが、残念ながらまだそのようなシステムがない企業もあるのが現実です。ですが、今一度EAPが入っていないか、産業カウンセラーや産業医がいないか、確認してみることをおすすめします。もしかしたら、ダメとあきらめている会社でも、徐々にそのサポートが入り始めているかもしれません。会社がメンタルヘルスのサポートシステムを持っていなくても、あなた個人が復職支援のサービスを利用してみるという方法もあります。
 クリニックなどで、復職支援を始めている機関も急激に増えつつあります。一人でがんばるのではなく、専門家の助けを借りながら、共同作業で復職にトライするのもよいでしょう。また、上司や同僚、友人など身近にいる人に、勇気を出して今の状況を話してみてはいかがでしょうか。意外なところにサポーターがいるかもしれません。いずれにしても、一人でがんばりすぎないのが復職へのコツです。うつという病気になったことを、あらためて自分自身にとって働くことの意味や生きがいなどを考えてみるチャンスにしてみませんか。あなたにとって、「働く」ことの意味はなんでしょうか? もともと仕事を志したときの想いは? 身体を壊してでも今の仕事環境を継続することが、自分にとってどんな意義があるのか、問い直してみるのもよいかもしれません。うつ病の場合は、自分の生活スタイルを見直すことが再発予防につながるとも言われています。
 うつ病の再発にはパターンがある場合が多いです。たとえば「仕事を一生懸命やりすぎてしまい、ストレス発散が苦手」という点であれば、次からはそのパターンを変えてみるのもよいのかもしれません。そのためにも、自分にあうストレス対処法を増やしてみませんか。あなたの元気の素はなんでしょうか? この「こころの元気+」でも紹介されたWRAP(元気回復行動プラン)もおすすめです。WRAP研究会で出している「リカバリートピック」の「仕事に関すること」には、「自分にあった仕事を見つけるために必要なステップ、現在の仕事の状況を変える」などのワークもできるようになっています。