親との関係に悩んでいます


Q 私は、三八歳の男性です。統合失調症になって、九年がたちました。もともと学校の教師をしていましたが、気がつくと病気になっていました。外出するのは診察とデイケアに行くときだけです。私が勤めていた学校は割と近くなので、昔の教え子や同僚に出会ったりするのがいやで、外出もあまりしません。この九年というもの、両親との関係は悪くなる一方でした。
両親は病気のことを理解せず、「体が満足なのだから働いたらどうなのか?」「たまには外に出たらどう?」などと言います。そう言われると私はとてもつらく感じます。私の親はもしかしたら、私のことをうとんじているのではないか、と感じてしまうことすらあります。できれば関係の改善をしたいし、親の気持ちも知りたいのです。皆さんがどうされているのか知りたいので教えてください。

A 自分が変わる/川北誠さん(三重県)

三七歳、男性。通院歴一三年です。今では母との関係も良好ですが、発病直後はたいへんでした。家で寝てばかりいて、母から注意されて衝突ばかりでした。やがてデイケアに通うようになり、母はとても喜んでくれました。しばらくすると、仕事に行くことを求めてきて、それが負担となりました。今では仕事が順調にいっていて、母との関係も良好です。相手の言動を嘆くのではなく、自分が変わると、相手も変わるのだと思います。母に僕のことをどう思っているのか、書いてもらいました。
「高校、大学、大学院とストレートに入り、一流企業にも入社。これで一安心と思った矢先、心の病におかされた我が息子。当初はとまどいと心配の連続。以来一〇年あまり。今では色々な人とつき合い、自分なりの生き方をみつけたようです。子供の心配をしない親はいないと思いますが、この病に一番必要なのは子供を信用すること、無理にいろいろ問いただすことをせず、あまり気をつかいすぎず、あせらず自分から話してくれるのを待っています」
今まで心配をかけた分、これから親孝行のつもりで、元気に生きていきたいと思っています。このように僕が変わったのは、人との出会いがあったからで、その結果、母も変わりました。子をうとんじる親なんて、いないと思いますよ。きっと、親なりに子を心配しての愛情表現だと思います。親にも親の人生があるのだから、それを楽しんでほしいです。もちろん、子には子の人生があると思いますよ。

A お互いに線引きをする/富山恵梨さん(神奈川県)

この世の中にさまざまな想いがある中で、親が子を想う以上の想いはないと思います。私が病気になり、親は親なりの精一杯の対応をしていたんだろうな、と今は思います。うつがひどくひきこもり状態の私は外出どころか、自分の家の庭にすら出ることができませんでした。いつも親には「外に出たら」、「何かしたら」と言われ続けていました。苦痛でした。精神疾患になるとまず、親の理解と協力が必要になるとは思います。本人もパニックです。親もパニックです。

親と子の間には折り合いや線引きはとても大事だと私も思います。きちんと話し合い、ここからここまでは自分でする。けれど、できないときは協力してね。こんな感じはどうでしょうか。ご両親との接し方について、とても苦しまれていると思います。ご自身の病気にも苦しまれています。二つのいじわるなパワーは疲れてしまいますので、一つ背中を押してくれるパワーを追加いたしましょう。それは痛み、悲しみ、苦しみ、怒り、すべて親に精一杯届けてみてください。理解を得る、得ないで考えても結果がついてこないこともあります。ですが家族は、こっちの愛情のためにあっちの愛情は消す、ということはしません。ありのままのあなたをご両親に届けてみてください。何も変わらないと思えたりしても、何かは変わってしまいます。今まではご両親と向き合う準備期間だったのかもしれません。誰にでも親はいて、誰でも親の前ではいつまでも子供です。ちょっと、わがままになってみませんか?

A 親は将来が心配なのです/ここりんママさん(岐阜県・母親)

病気になられ九年、つらい経験をされましたね。大学を卒業され、教師になられ親ごさんにとってはご自慢の息子さんだったと思います。発病時の親ごさんのショックはたいへんなものだったと察します。それ以上にご自身も苦しんでこられたと思います。
今は症状も落ち着かれ、年月も経過されたので心配するあまり、あなたに色々助言したいのだと思います。親はいつまでも若く元気でいる保証はないので、何とか子供は社会で一人で生きていってほしいという思いから、ついついわずらわしいことを言ってしまうものです。決してうとんじているわけではないですよ。家に引きこもりがちな子供を社会とつながりを持たせたい、親なき後、お金に困らないように少しでも働いてほしいと心配しているだけです。
でも、毎日くらいに言われることはつらいですよね。主治医か、病院のケースワーカーや看護師さんから親ごさんに、あなたのつらさを説明していただいたり、地域の家族会に親ごさんの参加をすすめてもらったらどうでしょう。きっと親ごさんも悩みや心配を誰に話すこともなく心痛めていることと思います。「這えば立て、立てば歩めの親心」で親は期待してしまうものです。期待は再発にもつながるので、親も気をつけなければ…と思うこの頃です。

A 単身生活を始める予定/ピーチツリーさん(茨城県)

私も親子関係で悩んでいる統合失調症の女性です。私は日々、親には細心の注意を払って接してもらいたいと思っています。たとえば、両親にとっては言った記憶さえないような些細なことでも、こちらは何十年たった今でさえもそのとき受けた傷による痛みに苦しんでいたりするからなのです。
私は、近々、生まれて初めて親元を離れての単身生活を始めることで親子関係の問題解決の一歩を踏み出す予定でおります。幸いここ数年、医師や病院、施設等の方々にたいへん恵まれ、家の中だけで独り苦しんできた自分が、次第に目も足も外へ向くようなり、その結果、親とのあつれきも多少減ったように感じております。
そこで、質問者様もご両親と過ごす時間を少なくする工夫をされることをまずおすすめします。私自身は不安だらけで単身生活の準備をしておりますが、長かったトンネルに出口が存在することがわかってきました。そして、今、足踏み状態ではなく明らかに物事が前進していることをひしひしと実感しています。私は、病気への悪影響が少なくなるような親子関係を築くための礎を求めて、新たな第一歩を踏み出します。

A 病のことを知ってもらう/伊東久雄さん(兵庫県・父親)

自分の息子が病で苦しんでいるときに、あなたのご両親と同じようなことを言いましたが、そのときは息子が一人前に自立してほしいとの願いばかりが先立って、統合失調症のことをほとんど理解していませんでした。
精神科病院に入院させてから薬物療法で病の陽性症状は次第に落ち着き、主治医の話や本からの知識、家族会での同じ悩みを持つ人の体験などから学んでようやく息子との折れ合いがよくなってきました。親は子どもを愛すればこそ、なにかと願うものですが、病であれば、その病を知ろうとするはずです。
しかし、統合失調症の場合、そのありのままを受け入れるまでの時間が長く必要な場合もあるようです。あなたの両親の場合九年もたっているとのことに驚きます。「心の元気」の雑誌を読んでもらうとか、何かの研修会を教えらるなど、一緒に当事者の気持ちや病の知識につい学びあえればと願います。そして、むずかしいことですがお互いに「付かず離れず」の親子で、程よい距離を保つことが大切と思います。