気持ちはゆっくりと変化します (本人)


こころの元気+ 2010年3月号特集より 「こころの元気+」とは?→コチラへ


特集4
気持ちはゆっくりと変化します


何度もほめられて
宮崎県/ならんさん


数年前、ニュースやネット上で「ニート」という言葉が流行りました。
その当時、私は仕事をやめたばかりだったのですが、この言葉にずいぶんと心を痛めました。
ニートである自分は、社会にとって不必要で、この世にいる資格もないような気までしてきて、自殺未遂をしてしまい、入院となりました。

「ダメ人間の私なんか …」と絶望していた私に、看護師さんや同じ病気のある友人たちは、
「ありがとう」、
「よかったよ」、
「助かるわ」、
「あなたにはこんないいところがあるよ」
と、さりげなく何度もほめてくれました。

そんなせっかくの温かい言葉にも、最初は「えっ?私に取り柄なんてない」と、うれしく受け入れられなかったのですが、根気よく一所懸命に話してもらうたびに、「私なんてそんなことないよ」という気持ちから、「私ってこういう人間なんだ、これでいいんだ」と、少しずつ自分の生き方を認めようと考えだしました。

退院したその後、私はカウンセリングを受けるようになりました。
今年でもう三年目です。
そのなかで、ゆっくり、ていねいに「自己を見つめる」作業を行っています。

私たちは誰でも、好ましい、プラスの感情だけを持つことはできません。
自分が持っている、みにくいマイナスな面も、よい面も両方認め、自分のありのままの気持ちを正直に受け入れることを、カウンセラーの先生は私自身に気づかせてくれました。
そして、いやな感情や不得意なことばかりに目を向け、落ち込むよりも、得意分野を伸ばそうと思っている今は、時にはもがきながらも、幸せに生きています。


ダメだを誇ってもいい
奈良県/榎田伸也さん


「僕はつくづくダメな人間だなあ …」

今まで、私はこのセリフを何百回つぶやいたことでしょう。
実は幼少期から、私は自分への評価がとても低く、自分をいじめ抜いていました。
それがいつ頃からでしょうか …「ああ、これでいいんだ」と思えるようになっていったのは …思いはいっぺんには変わりませんでした。
今思えば、ものすごく長い時間がかかったような気がします。
まさしく、「薄皮」がはがれるように、ちょっとずつちょっとずつ、自分のなかのガチガチになった「こわばり」が、ゆっくりゆっくり溶けていくような感じでした。

そして今になって、その「こわばり」は、「自分は常に完ペキでなくてはならない」、「失敗を絶対に人に見せてはならない」などという、自分でつくりあげた「思いこみ」に過ぎないことにやっと気づいたのです。
私たち当事者は、こうした「思いこみ」にとらわれ、とてもつらいのだと思います。

誰も彼も、たとえ当事者でなくても、人は皆、「不完全さ」を抱えているんだと思うと、「ああ、お互いさまなんだなあ」と納得がいきます。
たとえ「自分はダメだなあ」と思っても大丈夫です。
それだけ自分に実直だからです。
悩みは時の経過に委ねましょう。
実直だからこそ、「ダメだ」それ自体を誇ってもいいんですよ、きっと。