経験談


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精神科を受診する前に、自分でできることは何でしょうか。普段の自分を思い出すことはとても大切です。もともと自分はどんな性格だったり、人格だったり、自分はどんな人だったのかと思い出してみましょう。どんな変化が出たのでしょうか。そのもともとの自分を思い出すコツやヒントを「こころの元気+」51号の特集から見てみましょう。

筆者の所属は執筆時の所属先です。


特集4
よいところを見つけるコツ
久留米大学医学部精神神経科学教室
坂本明子


はじめに

自分のよいところはどこですか?と聞かれて、恥ずかしくて答えられない人もいれば、自分にはよいところがないと思っていらっしゃる方もいます。
精神科の病気をして、こんな自分にいいところがあるはずがないと思っていらっしゃる方も多いようです。
でも、そんなことはないのです。よいところは「ない」のではなくて、「見つけられない」、「認められない」でいるだけです。まずよいところは誰にでもあることを信じてください。
さあ、それでは、「こころの元気+」をガイドに、よいところを見つける旅のスタートラインに立ってみてください。まだ見えていないのだけれど、必ずや自分のよいところがあると思って。
そうそう、旅のお伴には、メモとペンがおすすめです。準備はできましたか?それでは、スタートです。


ステップ1 私は私のままでいい

「病気をする前の自分なら、よいところがあった」、「仕事ができるようになったら見つかると思う」なんて思っていませんか?過去と、めどの立たない未来ばかりに目をむけて、今の自分を認めることができない。いろいろなことができない自分に、よいところはないと思っていませんか?
実は、人のよさは、何ができるか、何を成しえたかだけではないのです。得意なこと、能力は自分のよいところですが、性格、嗜好などその人の特徴を表すものでもあると思います。
ですから、できることにこだわらず、いろいろな角度から自分を見つめてください。どんな自分でも、今の私のままで、よいところはたくさんあるのです。


ステップ2 完璧を求めない

「いつもできるわけではないけれど …」、「わりと …」、「ちょっとは …」という言葉から始めて、思いつく自分のよさをあげてみましょう。
常にそうである必要はないし、他の人と比べて見劣りするから当てはまらないと思う必要はありません。
たとえば、「プロ級じゃないから、ピアノが弾けることは、よさには入らない」なんて思わないでください。「結構パソコンを使っているから、他の人に表作成の相談をうけることがある」なんてことがあれば、もうこれは間違いなく「パソコンが使える」、「パソコンにくわしい」あなたのよさです。「たまには怒ることもあるけど、めったなことでは怒らない」という人は、「穏やかさ」、「気長」などが自分のよいところだと思っていいのではないでしょうか。生まれてこの方、怒ったことがない人なんていないですからね。
ほんの少しでもそう思うなら、もうそれはあなたのよいところなのです。


ステップ3 自分の好きな所を見つける

自分のよいところは、なかなか思い出せなくても、自分の好きなところは案外出てきます。さあ、考えてみてください。自分の好きな所は、たとえば、お調子者、いたずら好き、こだわりがない、むきになる、涙もろい、誘われたらことわらない、電化製品にくわしい、孤独を愛している、鉄道マニアなどなど。普段、誰かに注意されていることだってかまわないのです。
他の人が好きと思っているかなんて、論外。自分が気に入っていることが重要なのです。ユニークな自分が見つけられましたか?


ステップ4 なりたい自分を考えてみる

壮大な目標でも、小さな心がまえでも、あこがれでもいいのです。たとえば、「目標に向かってこつこつやっていく人でありたい」、「小さな喜びを幸せと思って生きていきたい」、「キムタクのように、かっこよくなりたい」など、どんなことでもいいのです。
なりたい自分をあげてみると、意外に自分のよさがそこには盛り込まれていませんか?そしてそのよさや特徴を伸ばして、輝きたい気持ちが、なりたい自分であったりします。
「いやいや、ないものねだりです」という方、それでもなりたい自分をめざすうちに、手に入れることができるかもしれませんよ。もちろんいくらキムタクをめざしていても、キムタクの顔になれる保障はありません。
でも、あこがれの人を真似ているうちに、立ちふるまいがかっこよくなってきたとか、おしゃれになったとか、変わってくるところもあると思います。


ステップ5 信条、大切に思っていることをあげる 

ステップ4と似ているのですが、自分の信条、大切に思っていることがあなたのよさにつながることもあると私は思います。
だって考えや価値観は、人を形づくるのですから。
自分の信条などを意識して行動しているのであれば、やはりよさだと思います。
たとえば「有言実行」、「誠実」、「努力」、「楽しい生活をおくる」とか、日頃気をつけていることでもいいと思います。
「楽しむ」ことを何より大切にしたい人は、楽しいことに敏感です。常に楽しいことを計画したり、仕事や家事などやらねばならないことでさえも、楽しくできる工夫をされているかもしれません。
そして、楽しい時間を、何とかつくって楽しんでいるときのあなたの笑顔はとても素敵で、そんな楽しそうな姿は、周囲の人たちに幸せな気持ちをもたらしているのでは?ほら!よいところでしょ。


ステップ6 人の意見を信じる

次は、他の人の力を借りてみましょう。ご自身のことをよく知っている人に聞いてみてください。
あるいは、「よく気がつくね」とか「あきらめない人だねえ.」とか、以前誰かが自分に言ってくれたことを思い出してみましょう。
そのとき大切なことは、相手の言葉を信じることです。たとえ自分がそう思っていなくても、です。
人は、自分の気づかないようなところを見てくれています。いろいろな人に、私のよいところを書いてもらうのもいいですね。


ステップ7 欠点を長所に変える

まず、自分が欠点と思っていることをあげてみましょう。これなら、得意と思っていらっしゃる方も多いかもしれませんね。
そして、その言葉を肯定的な言葉に変えてみてください。高度な技ですから、肯定的な言葉が見つからない人は、他の人の力を借りてやってみてください。
たとえば、欠点の「のろま」を肯定的な言葉に変えると、「じっくりと物事に取り組むことができる」、「ていねい」などになります。「わがまま」は、「自分の考えをきちんと持っている」、「自己主張できる」です。「落ち着かない」、「じっとしていない」は、「行動的」、「フットワークが軽い」などです。
見方を変えれば、ダメだと思っているところが、よさに変わります。特定 の価値観にしばられないことです。
欠点を長所に書き換えることはできたけれど、でも何かするのに時間がかかることは、やっぱりまずかろうと思っているあなた。
あなたが時間をかけて、ていねいに何かをやってくれることで、短時間でやるけど、あわててやっている人には注意が向かないことに気がつき、そんな人のミスをカバーしていることだってあるのです。


ステップ8

 さて、八番目は、あなたが書き足してくださるところです。あなたのアイデアをぜひ教えてください。

もし、書き加えられた方は、アイデアが浮かぶところ、情報通であること、あるいは普段よく工夫している人なのかもしれません。それが、あなたのよいところかもしれませんね。工夫が思い浮かぶことがなくても、大丈夫。ゴールは目前です。


おわりに

さあ、自分のよいところを書きあげることはできましたか?ゴールまできちんと読んだけれど、思いつかない方、いらっしゃいますか?
それは、自分のよさを「正直」に、「慎重」にじっくりと考えてくださったからかもしれません。
あるいは人の意見については、「批判的な目を持っている」からかもしれません。とすれば、そこがあなたのよさかもしれないと私は思います。
実は、「いいところ」を探すということは、自分のよさを見つけ、それをいかしていくことであって、結局は自分探しなのだと、私は思っています。
そして、宿題です。よいところメモをこれからもときどき見て、確認してみてください。メモをながめていると、なんだかうれしい気持ちになって、自分ってまんざらじゃないと思えてくるかもしれません。さらに、可能であれば次は自分のよさをいかせる場所を見つけたり、よさをいかす方法を実行してみてくださいね。もっともっと、あなたのよさがきらりと光って、あなたらしく輝けることを祈っています。


こころの元気+51号 特集より