支援があれば働けます(専門職)


こころの元気+ 2009年9月号特集より

特集3 支援があれば働けます

西南学院大学  舘暁夫


働く力を社会に知ってほしい

こんにちは。私はこれまで教員をしながら、当事者、支援者、事業所を対象に、精神障害のある方の就業促進の啓発活動をしてきました。
精神障害の方の雇用が一番遅れていることもさることながら、精神障害のある方の働く力を社会に知ってもらいたいと思っているからです。

「支援があれば働ける」はいつも使う言葉ですが、十数年前家族会の集会で、ある施設の利用者がご自分の働く生活を紹介してくださったとき、頭に浮かんだものです。
その方は障害を持ちながらも、支援者のサポートと施設の給食と金銭管理サービスを受けて、何と十数年、町工場で働いていました。
支援がいらなくなることが自立だと思っていた人間(私)にとって、それは「目から鱗」でした。
それから、支援があって、働けるのであれば、支援を用意すればよいという単純明快な考えに至ったというわけです。

「支援」とは?

それでは、「支援があれば働ける」の「支援」とはなんでしょう。
支援を得て働く場合、「働きたい」という気持ちと、「病気を隠さない」ということが前提です。

私が考える支援の第一は、支援を受けて、働く生活の準備をすることです。
働く生活では、体調管理、生活技能やビジネスマナーが求められます。
これらは練習によって獲得できますし、苦手な場合、先ほどの例のように誰かに支援してもらうこともできます。
さらに、実際の職場で支援を受けながらインターンシップ(職場研修)をして、就職できるそんなやり方もあります。

二番目の支援は、マンパワーです。
「ジョブ・コーチ」という言葉をお聞きになったことがあるでしょう。
職場に入るときに、仕事を教えてくれたり、不安な気持ちを静めてくれたり、職場との架け橋になってくれる人のことです。
一人で心配しなくてよいのです。
そのうえで、事業所にも理解のある上司や仲間が増えると、支援の輪が広がります。

三番目の支援は、事業所の支援(配慮)です。
これには、たとえば、就業時間、休息、仕事の工夫、等が含まれます。
さらに、マンパワーでもふれた理解ある上司や仲間の存在も改めて加えてもいいでしょう。

四番目は社会的なもので、雇用率制度や厚生労働省が行っているさまざまな雇用促進の施策や働き方などです。
仕事だからといって、週四〇時間働かなければいけないということはありません。週二〇時間の短時間労働も厚労省は公認し、障害者雇用率にも算入できるようになっています。
他にパート、アルバイト、自営、グループ就労などさまざまな働き方もあります。
精神に障害のある人が雇用率の対象になってから、これまで一般就労というと中小企業がほとんどでしたが、ここ数年大手企業も雇用するようになってきています。
それらの例をよくみると、皆さん何らかのよい支援を必ず受けています。

支援を体調や生き方と組み合わせる

これら四つの支援を、ご自分の体調や生き方とじょうずに組み合わせて、自分なりの納得のいく働く生活を実現してみましょう。
「支援があれば働ける」。そのためには、利用している施設、ハローワーク、職業センター、就労支援センターの職員によく相談してみてください。
賢い働き手は、また賢い支援の利用者ともいえるでしょう。