リカバリーの視点から『カッコーの巣の上で』を観てみる(専門職)


こころの元気+ 2013年12月号特集より


特集5
リカバリーの視点から『カッコーの巣の上で』を観てみる

東北福祉大学せんだんホスピタルS─ACT当事者スタッフ
鈴木司


1975年度アカデミー賞主要5部門を独占した不朽の名作『カッコーの巣の上で』は、メンタルヘルス映画としてはあまりにも有名な作品ですが、改めてこの映画をおさえておきたいと思います。

1963年のある日、オレゴン州立精神病院に一人の男が連れられてきます。
彼の名はマクマーフィー。
彼は刑務所の強制労働を逃れるために精神疾患を装っていました。
そこで彼が目にしたのは、絶対権限を持って君臨する婦長によって運営され、無気力になっていた患者たちでした。
ジャック・ニコルソン演じる主人公の、さまざまな手段で病院側に反抗する姿に、いつしか患者たちも心を取り戻していきます。

古い映画の中で描かれている病棟の様子は、十数年前に私が入院していた閉鎖病棟と似ているところも少なくありません。
食後のナースステーションの前での服薬、タバコの管理、週間プログラムの病棟ミーティングや運動の時間…。
そんな管理的な病棟運営に抗する主人公は、懲罰としての電気ショックにもめげずに、患者たちに“普通”の感覚を取り戻させるのです。
病院のマイクロバスを拝借して、みんなで無断外出、病棟に女性を招き入れてパーティー…。
管理された病棟の中でトランプをするよりも、もっと自分自身で生きることに目覚めよと。 
やがてマクマーフィーは脱走を企てますが…。

映画史上あまりにも有名なラストは見てのお楽しみです。 
この映画では病棟の中を描いていますが、病棟の外でも同じようなことはないでしょうか。
そこではあたりまえとされるルールに従う静かな利用者さん。 
カッコーの巣から出たけれど、また別の巣の中で今日も鳴いているのかもしれません。