身近になる認知療法Q&A(医師)


こころの元気+ 2010年8月号特集より


特集5
身近になる認知療法Q&A

(注意:2010年8月号時点での回答になります)

解答者
慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室助教
佐渡充洋


Q 薬をのまずに、認知療法だけを行う治療法はありますか?


うつ病や不安障害に対して、薬を使用せず、認知療法だけで治療を行うことももちろん可能です。
ただし、これまでの研究結果から、薬と認知療法を比較した場合、効果はほぼ同じ程度になることが明らかになっています。
一方、薬と認知療法を併用すると、薬もしくは認知療法単独で治療するのに比べて、効果が大幅に上がることがわかっています。
このようなことから考えると、薬か認知療法か、二者択一的に考えるのではなく、両者をバランスよく組み合わせていくことで、治療の効果を最大限に高めていくことが重要ではないかと考えます。


Q カウンセリング、精神分析・心理療法などの精神療法と、認知療法は違うものですか? また、認知療法と認知行動療法の違いは何ですか?


認知療法も精神療法の一つですので、他の精神療法と多くの共通点を持っています。
たとえば、しっかりと傾聴する点、当事者の方との良好な関係が必要である点、支持的に接することが重要である点などです。
一方、認知療法には、他の精神療法には見られない特徴もあります。
物事の受け止め方や考え方、すなわち認知に焦点をあてて、その認知をよりバランスのとれたものに改善していく点は、認知療法の大きな特徴のひとつです。
また、認知をバランスのよいものに改善していくために、治療者は、「そのように考える理由はどこにありますか?」、「少し別の見方は考えられませんか?」といった具合に、当事者の方に積極的に質問をします。
これも、他の精神療法ではあまり見られない特徴です。
また、認知の修正のために知人に意見を聞いてもらったり、普段の生活で抱えている問題の解決に取り組んでもらうなど、治療以外の日常生活の場面を治療の題材とする点も特徴のひとつになるでしょう。
さらに、これらの経験を、当事者の方と治療者とが協力しながら取り組んでいく点(これを協同的経験主義といいます)も特徴のひとつです。
このように、他の精神療法と、多くの共通点を持ちますが、認知(考え方)に焦点をあて、より現時的な問題解決のために、当事者と治療者が協力して取り組む点が認知療法の特徴といえるかもしれません。
なお、認知療法と認知行動療法の違いについてですが、臨床的には、特に違いはなく同じものと考えてよいと思います。


Q 認知療法は病院にいかなければ受けられませんか?


認知療法が保険の適用になるのは、保険医療機関において、入院中の患者以外の患者について、認知療法・認知行動療法に習熟した医師が、一連の治療に関する計画を作成し、患者に説明を行ったうえで、その計画に沿って三〇分以上認知療法・認知行動療法を行った場合になります。
よって、認知療法を保険診療で受ける場合には、診療所、病院などの保険医療機関で実施してもらう必要があります。カウンセリングルームなどでも認知療法を実施しているところがありますが、保険診療の対象にはなりません。


Q うつ病以外の人でも保険の対象になりますか?


二〇一〇年の診療報酬改定で認知療法が保険適用となりましたが、対象は、うつ病などの気分障害に限られています。よって、今のところ、気分障害以外の疾患では認知療法は保険適用になりません。


Q 認知療法を行っている病院は、どうやって見つければよいですか?


最寄りの保健所や、各都道府県の精神保健福祉センター、病院などで問い合わせるのがよいと思います。

 


コラム
本やツールの選び方

慶應義塾大学教授
大野裕


認知療法・認知行動療法を受けたいと思っても、それが可能な医療機関はまだ多くありません。
だからといって、あきらめないようにしてください。あきらめてしまうと、可能性があっても消えてしまいます。これも認知療法・認知行動療法の考え方の一つです。

その場合には、本やサイトを利用して自分で認知療法・認知行動療法を試してみてはどうでしょうか。
専門的にはビブリオセラピー(読書療法)と呼ばれている方法で、気持ちをやわらげる効果があるということが実証されています。
一人だけでするのがむずかしい場合には、家族や友人、主治医に助けてもらうとよいでしょう。

それでは、どのような本を使えばよいのでしょうか。
私は、本選びは主治医選びと同じだと考えています。
自分にあった本、自分にあった主治医が一番です。できれば本屋さんに行って、実際に何冊か手にとって目を通してみてください。
比較的スムーズに内容が頭に入ってくる本が、あなたにあった本です。
もちろん完璧に自分にあう本というのはないかもしれません。ほどほどにあっていればいいのです。完全を求めないというのも、認知療法・認知行動療法的な考え方です。
それは、本の内容についても同じです。
本を読んでみると、「なるほど」と納得できる内容もあれば、「どうも違うぞ」と思う内容も含まれています。
そこで大事になるのが、すべてを受け入れようとしないで、自分に役に立つように使うという姿勢です。認知療法・認知行動療法では、何事につけても、最初から決めつけないで実際に試してみることをおすすめします。
これは、本を読むときも同じです。