仲間の力ってすごい! (本人)


こころの元気+ 2011年8月号特集より


特集1
仲間の力ってすごい!


立ち位置が似ていることの安心感
大阪府
小西文明さん


私は、現在、作業所と当事者会に所属しています。
私はこれまで、薬を怠薬し、入退院をくり返してきました。しかし、作業所の仲間が、毎日ていねいに薬をのんでいる姿を見て、私も欠かさず薬をのむようになり、今のところは入院していません。

私は、若い頃から薬をのみ続けることにかなり否定的でしたが、仲間が態度で私を諭してくれた感じがします。
また、私は、作業所で仲間と話したり、当事者会で活動しているとき、なぜか心がなごみます。
それは、仲間同士は、病気のしんどさや生活のしづらさを共有しているかもしれません。
つまり、立ち位置が似ているところに、安心感や癒いやしをお互いが持つのでしょう。
もちろん、当事者が地域に根づくには、家族、主治医、ワーカーの力添えは欠かせません。
そして、仲間の存在も大切です。
それは、当事者の教科書は、当事者なのだからです。


SSTで出会った仲間に
福岡県
相川知子さん


統合失調症、当事者歴一三年の者です。二年前に、長かった学生生活を終えました。
卒業して、いざ就職活動を始めた頃に、無理がたたって体調を崩し入院してしまい、その入院を機にSSTに参加するようになりました。

同じ心の病いを持つ仲間の声を耳にする機会が与えられたことで、私はたくさんの病気に対する知恵と対処法を手にしました。
学生時代は、統合失調症のことを公にしていなかったので、苦しいときの対処法を知らず、ひたすら耐える日々が続き、気力が摩耗していました。
発症前と同じ生活を望むと、体が悲鳴をあげます。そんななか、自分と似た体験をした人や、発症という大きな苦しみのなかで新たな生き方を模索している人と出会い、話し合いました。自分の弱い部分、病気の症状の対処法、症状が苦しいときにする工夫の話などをします。

私は、疲れがたまるといつも、「なんで私だけこんな厄介な病気を抱えているのだろう …」と孤独に思っていました。調子が悪いとき、自分が役に立ってないなぁなんて考えると、以前は悲しくて涙するほかありませんでした。

でも今は仲間の声があります。
つらいときに仲間の声を思い出し、何もできないときに、じっとうずくまっているのは私だけじゃない。苦しいときに仲間は工夫したり、耐えていたりするのだ、病気に一人で耐えているわけではないから、孤独を感じる必要はないと思えるようになったことが、仲間の力だと思います。


仲間っていいなあ
大阪府
秋桜さん


私は四三歳のとき、仕事のストレスから精神病になりました。
始めは精神病になったことがショックで、誰にも言えませんでした。

私には、中学生からの友達が何人かいます。
小さいときから喘息で体の弱かった私は、両親が高校への受験を無理だと考えて市立の中学校に行かせてくれました。そのおかげで、今でもずっとつきあってくれる友達ができました。
私は、いつも心配してくれている友達に、本当のことを話さないといけないと思いました。偏見を持たれるのはあたりまえだと思っていました。
ところが、いざみんなに話してみると、拍子抜けするくらいあっさりとしていました。
口々に「しんどかったんやなあ」とか、「がんばりすぎたんやわ」とか、「これからはのんびりした方がいいわ」とかいうあたたかい言葉をかけてもらいました。
涙が出るほどうれしかったです。

私は何年か前、退院をきっかけに一人暮らしを始めました。
私が一人なので気をつかわないのか、みんなでよく遊びに来てくれます。冬になったら、みんなでお鍋を囲むのが楽しみです。ワイワイがやがやしていたら、時間がたつのも忘れてしまいます。大切な友達です。これからもずっとずっと友達でいてほしいなあと思います。

 


病気の経験が役に立つ
新潟県
田中さん


私は統合失調症ですが、発病してすぐは、自分の病気をなかなか認められませんでした。
そんなとき、デイケアで知り合ったある人のことを、自分よりよほど具合が悪いようだ、と思っていました。
その人からあるとき、「おれより悪いみたいだね」と言われたのです。
そういわれてみれば、私は、自分が疲れやすくて、寝てばかりの日が多くて、予定を立てられなかったり、出かけるのをことわったりすることがあるのです。
初めてそれを、「具合の悪いこと」と自覚したのでした。

また、月に一度自助グループの集まりに行くのですが、そこで新しく来た人が、自分の症状をいろいろ話すのを聞くと、「自分もそうだ」とか、あるいは、「そうだった」と思うことがとても多いのです。

そこで、「眠れないときは、呼吸を一〇まで数えることをくり返しています」とかアドバイスをしたり、あるいは、「私も昔同じでした。今は大丈夫です」と言ってあげたりできるので、病気の経験がむだにならないで役に立っていると感じて、とてもうれしいのです。
また、その経験が、思っていたより、ずっと多いことにも気づいて、驚くのです。仲間が引き出してくれた私の価値だと思って、病気の経験の一つひとつを大事に思うようになりました。