サプリメントとのつきあい方(専門職)


こころの元気+ 2012年3月号特集より


特集3
サプリメントとのつきあい方

大阪精神医学研究所 新阿武山病院 栄養給食室長
井戸由美子


ストレス社会ともいわれる現代において、規則正しい生活習慣を維持するのはなかなかむずかしいものですそのため、健康を気にしてサプリメントを利用される方も多いのではないでしょうか。

しかし、サプリメントは使い方を誤ったり間違った効果を期待すると、思ったような結果が得られなかったり、かえって体に悪影響を及ぼすこともあるので注意が必要です。
サプリメントとは、英語のダイエタリーサプリメント(Dietary Supplement)を略したもので、食事で充分にとりきれていない栄養素を補うための補助食品を総称したものです。あくまで食品ですので、何か「特別な効能」をもたらすものではなく、決まった成分を集中的に摂取することで「特定の効能」を期待するものなのです。

食品の機能は、三つに分けられます。

①一次機能・・・栄養機能(カロリー、たんぱく質、脂肪、ビタミン等必要な栄養素を補給して生命を維持する機能)
②二次機能・・・感覚機能(味や色、食感、香りなど、食べたときにおいしさを感じさせる機能)
③三次機能・・・体調調節機能(微量成分による生体防御や老化防止、疾病の予防・回復効果など、生体を調節する機能)

たとえばトマトをあげますと、一次機能は100gあたりエネルギー19Kcal、たんぱく質0・7g、脂質0・1gとなります。
二次機能は、酸味や甘味になります。
三次機能は、がん予防、降圧作用・美肌効果、肝機能向上となります。

いわゆるサプリメントは、食品のこの三次機能を期待して利用されることが多いといえます。その用途には実にさまざまな種類があり、そのなかで自分に普段の生活ではどうしても補いがたいものがあるとき、付加的に利用するものなのです。

また国の制度としては、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を定めた「保健機能食品制度」があります。この保健機能食品制度では、食品は「一般食品」と「保健機能食品」に分けられます。いわゆる「健康食品」には法律上の定義はなく、一般食品に分類されています。
さらに保健機能食品には「特定保健用食品(特保)」と「栄養機能食品」があり、日本でのサプリメントの考え方はこれに近くなります。なかでも特定保健用食品は、ヒトで試験した結果をもとに、安全性や有効性が評価され、国によって機能表示が認められているものです。

栄養満点の栄養失調?

私が栄養指導をしていると、疲れやすいから・体力がないからと菓子パンやお菓子を食べ、甘いジュースを飲むと言われる患者さんが意外と多いのです。ところがこれは、ほとんどがエネルギー不足が原因で疲れるのではなく、エネルギーをつくるためのビタミン不足の場合が多いのです。

糖質(ブドウ糖)を代謝するのに必ずビタミンB1が必要です。ブドウ糖の点滴にはビタミンB1が必ず入っており、夏バテや疲れのドリンク剤などもビタミンB群が多く入っています(ビタミンB2は脂質代謝に関与)。ですから、身体がだるい、なんだか疲れやすいといったときは、まんじゅうやケーキなどを食べるのではなく、ビタミンB群をとるのが正道なります。
要するに、カロリーは過剰にとれているのに、それを代謝するのに必要なビタミン・ミネラルが不足しているという「栄養満点の栄養失調」の状態ということですね。

サプリメントは薬ではありませんので、病気の治療目的では使用しないことが重要ですし、アレルギーなどにも注意する必要があります。自分の生活で何が不足して、何を補ったらよいかをしっかり吟味して使用することが重要です。
知人が使ってよかったから自分によいというものではありませんし、健康食品によくある体験談は根拠があいまいで、ねつ造されている可能性もあるので注意しましょう。

そのためには、まず成分表示や原材料をよく見て、適応疾患を確認し、禁忌にも注意しましょう。医薬品をのんでいる場合の相互作用や複数のサプリメントを併用している場合などの、過剰摂取による健康被害にも注意が必要です。(下記参照)
「天然」、「植物性」、「自然」、「有機(オーガニック)」という言葉は、原料の特性を示すだけであり、必ずしも製品の「安全性」を保障するものではありません。
まずは、食生活が基本であることを忘れずに、常に正しい情報と知識を身につけて活用することを心がけましょう。

 

影響を受ける医薬品とサプリメントの相互作用の例

サプリメント…影響を受ける医薬品…薬効への影響

セントジョーズワード(西洋オトギリ草)…抗てんかん剤、抗うつ剤、パーキンソン病治療薬…薬の代謝促進、血中濃度低下。また、このサプリメントに抗うつ作用があり、作用が増強される可能性あり

ビタミン C …精神神経用剤(トリフロペラジン、ノバミン)… 効果(抗精神作用)を減弱させることがある

葉酸…抗てんかん薬(アレビアチン)…効果(抗けいれん作用)を減弱させることがある

ビタミンB 6… パーキンソン病治療薬… 薬効が促進し弱くなる