経験談


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精神科にかかる病気が見つかるには、いろいろなきっかけがあります。身の回りで起こっていることも、体に起こっていることも、きっかけと言えることはさまざまです。自分や周りからは、急になまけるようになったと思われることもあります。気分の変化や体調の変化など、自分では精神科にかかったほうがいいのでは、と思っても、それを否定したい気持ちが高まることがあります。また、自分一人では対処できないことも起こります。「こころの元気+」45号の特集から見てみましょう


特集1

みんないろいろな問題を抱えています


今月号の特集テーマはいろいろな問題にどのように対処すればよいのか、ということです。他の人がどのように対処しているのか —その工夫と知恵をご紹介します。


一人では何も見えなくなる
三重県
川北誠さん 

勤め先で、受け入れ難いことを店長に言われました。そこには長く勤めていて、不満が積もっていました。抗議しましたが、取り合ってもらえませんでした。
怒りが爆発し、明日にでも辞表を提出しようというときに、信頼できる方に話を聞いてもらいました。
その方は「やめてはいけない」とは言わず、「ひどいね。やめてもいいよね」と聞いてくれました。そして、「店長があやまってきたら、どうする?」と投げかけました。怒りに我を忘れていていた僕は、冷静になって、「あやまられても、怒りがおさまらないですね」と展開し、店長と話し合う気持ちになりました。結局、話し合いにすら応じてもらえず、他にも仕事をしていたので、一か月後にやめると申し出て、退職しました。
一人では何も見えなくなるものが、違う風を入れると冷静になれます。一人で判断していたら、突然やめたでしょう。筋を通せてよかったです。
相談したときに、「仕事だからいやなことがあるのはあたりまえ」と言われたら、怒りが増したでしょう。
僕の気持ちを受け止めてくれたので、筋を通す心境になりました。傾聴と共感ですね。
いやなやめ方をせず、お世話になったことには感謝できましたし、あいた時間も前向きに使っています。


「しゃあないじゃん」と言ってみる
神奈川県
須藤仁志さん

私の悩みは、職場での人間関係です。職場は、私みたいな人間をどう扱っていいかわからないようです。
私自身も、過去を引きずり、職場の仲間と腹を割って話せません。コミュニケーションがなかなかとれない毎日なので、職場では毎日さびしく過ごしています。仕事も暇だし、つまらないです。
私に無理をさせまい、という配慮なのでしょう。でも話し合いがあって決まった仕事ではなく、納得できていません。
本当は、環境ごと変えたいところですが、異動などになると会社が決めること。自分では、どうしようもありません。
今までは、いづらくていづらくて、職場のことを考えると、うつ状態になることがいまだにあるんです。
最近、「しゃあないじゃん」という言葉を連発するようにしました。
そうしたら、どうしようもないということを悩んでいても、意味がないことに気づけたみたいですね。
「他人と過去は変えることはできない」
「だったら、しゃあないことは悩まない」
開き直りだけで、解決になってないのかもしれませんが、ある意味認知の修正ができたのかもしれません。
居心地は相変わらず悪いですが、とりあえず今の職場で耐えらるようになったような気がします。


悩むことも人間の証拠
秋田県
如月さん

私は、在職中に強迫性障害の診断を受け、その後三年間は通院しながら仕事をしていましたが、診断を受けて四年目の夏に心身ともに過労となってしまい、出勤できない状態が続いたため、会社から進退を迫られ、「退職します」と答えました。
「何とか上司に頼み込めばよかったのに」と思われるかもしれませんが、田舎の会社の小さな部署にいた私は、部署内に自分の代わりはいないため、決断を早期に下さなければなりませんでした。
その後、二度の再就職の失敗から人が怖くなってしまい、退職から五年たった今も、月一回のアルバイトしかできていない状態です。
幸い、アルバイトの他に内職の収入も少しあります。それで解決になったわけではなく、もちろん収入面で不安はあります。
これからも病気とつきあいながら、いくらかでも円滑に日常生活を営める道を探らなければならないわけですが、「追いつめられた」と思っても、自分です。
発病して一番つらかったときは、幻覚や幻聴に悩まされていました。ピアノを習っていたのですが、私が休もうとすると、「また休むのか」、「どんどん弾ひけなくなるぞ」などという声が聞こえたのです。
なりに探れば多少でも楽になる方法はあるのかもしれない、と思いました。医師に、「人が怖くて安定した仕事ができない、というのは私のなまけでしょうか?」と聞きました。医師の答えは、
「なまけだったら悩んだりしないよ」悩むことも人間らしい証拠かな、と思いました。

 


解決できなかったけど、なんとかなりました


自分の気持ちを変える
石川県
あゆむさん 

私にはいまだに解決していない、抱えている問題があります。それは、買い物に出かけたりすると、まわりの人から「あの人は馬鹿だ」などと後ろ指をさされている感じがすることです。
思い違いだとか被害妄想だとか思われがちですが、病気のことを知っている人や、実際過去に馬鹿な経験もしましたので、そういった理由からそう言われているんじゃないかと思うのです。
そう言われたときに、どう対処するかですが、私の気持ち次第のように感じます。
思い違いだと思えるときは早く忘れればいいのですが、万が一、現実に言われてつらく感じた場合は、そういうことをいう人は少し変なのではないか? と思い切って責任転嫁してみたり、たとえばレジに割り込みをするおばさんのように、ずうずうしく物事を考えて相手にしないのが得策だと思いました。
今でも、ときどき言われる感じがしてつらいのですが、もし他人が悪く言うのならば、その他人の気持ちを変えることよりも、自分の気持ちを変えるほうが簡単なので、自分の意識から変えてみると、その問題から解放されるような気がします。


役所へ行っていろいろ相談
埼玉県
灯路さん

私は、月経前気分障害になって八年ほどになります。
いらいら感がひどい・孤独感が強いなど …気分にむらがあり、どうしても月の半分ほどは体調もすぐれないときがあります。
会社に事情を話して、体調に配慮していただきながら働き始めました。
けれども、今度はあまり働けなくなったことで、将来の経済的不安が頭をよぎるようになりました。
仕事の日数が減ったこともあり、さらに不安になってしまったようです。
働きたいけれど、働き過ぎると調子を崩す。家族には年齢的に迷惑をかけられないし、自分は働きたいと思っているので無理をしてしまう。悪循環の連続です。
このままでは、病気までが悪化してしまう。そこで、役所へ行っていろいろと相談にのっていただき、支援が受けられるようになりました。
もちろん、症状や環境により支援が受けられるわけでもありませんが。きちんと相談して対応してもらえば、何とかなるものなのですね。
根本的な解決ではないので、今後は治療をして回復するのと同時に、今の職場でフルタイムを働けるようになれればと思っています。

 


他の人が問題を抱えているときに私ができること


「一緒にギター弾かない?」
長野県
ケルトの霜さん

私は、統合失調症歴四年、精神障害一級の者です。こんなことで、問題の解決になるのか?いや、ならないだろうな、ということですが、書きたいと思います。
私は趣味でギターを弾ひいているのですが、病気で問題にぶち当たっている人がいたら、「一緒にギター弾かない?」と誘います。音楽は、よくセラピーとしても使われますが、やはりその力は大きなものです。ギターを担いでその人に会いに行き、一緒にギターを弾きます。そうすると、
「少し元気になれた。ありがとう!」って言われます。ギターじゃなくても、何でもいいと思うのですが、私にとって一番身近な楽器がギターなので、ギターを使います。
弾けない人でも、簡単なやり方を教えて、一緒にセッション。そうすれば、音楽の力は大きくて、少し心に余裕が出るようです。 


こころの元気+45号 特集より