光トポグラフィー検査は精神科医療をどう変えるのか?(医師)


こころの元気+ 2014年1月号特集より


特集9
光トポグラフィー検査は精神科医療をどう変えるのか?

群馬大学大学院医学系研究科 神経精神医学
福田正人


「目に見えて病気がよくなる」という表現があります。
高血圧や糖尿病は、血圧や血糖値という数値が見える検査があることで誰でも診断を理解できますし、治療の効果を知ることができます。心の病も目に見えるようにしたい、それを期待されているのが、「光トポグラフィー検査」です。

光トポグラフィー検査は、光を使って脳の働きを調べる検査です。脳が活動すると、活動した部位の血液の流れが増えます。
大脳皮質におけるその増加を、近赤外線という光を頭の上からあてることで測定します。脳血流をとらえることで、脳の働き具合を調べるわけです。

光を使う検査ですので、痛みや体への害はなく、座った姿勢で受けることができます。
測定の原理を表す略語を用いてNIRSと呼ばれることもあり、脳外科では保険適応が認められている検査です。

この検査結果に、心の病における脳の働きの不調が反映されます。うつ病では前頭葉の反応性が小さくなっており、双極性障害では遅れて生じやすく、統合失調症では働きのタイミングが悪くなっていることがわかります。

この検査は、精神科で唯一の先進医療「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」として、全国の25施設で行われています(平成25年10月1日現在)。

鑑別診断とは、うつ症状の原因になっている病気を見分けるという意味で、その補助として役立つかを検討しています。
心の病にはさまざまな検査が検討されていますが、いずれも研究段階でした。それを臨床検査へと一歩進めた点が、この先進医療の意義といえます。
検査として実用化できると、診断を確実にしたり治療を評価するために医療者に役立つだけでなく、当事者や家族が診断に納得し、治療に意欲的となるための手がかりとなります。
そのように、当事者中心の精神科医療を実現するために役立つことが、心の病についての検査を実用化することの最も大切な意義だろうと思います。