こんな訪問なら来てほしくない(専門職)


こころの元気+ 2012年12月号特集より


特集6
精神障害者アウトリーチ推進事業ってなんですか?

こんな訪問なら来てほしくない

ACT-K 理事
佛教大学保健医療技術学部准教授
苅山和生


利用者にあまり評判のよくない訪問サービスについて、ACTチームのスタッフに聞くとすぐに次の二つがあがりました。

一つは、いわゆる同伴訪問(別名=連れション訪問)です。 利用者本人はスタッフ一人で来てほしいのに、スタッフ側が不安なのか、経営面での都合なのか、あるいは他のスタッフへ交代するためか、とにかく本人の知らないところで訪問者が増えたり、希望以外の人が複数で訪問したりすることです。
スタッフの継続支援には、後進の育成のためなどやむを得ない場合もあると思いますが、利用者の緊張に配慮せず、希望を取り入れることのできない複数スタッフでの訪問は、利用者にとって負担以外の何ものでもないのです。

もう一つは、栄養剤訪問(別名=ア ○ナミン訪問)といわれる「お薬のみましょうね」が前面に出る訪問です。
これはまちがいなく医療への強い引き継ぎを連想させ、もし困ることがあったら、薬を増やしたり入院させるというスタッフの後ろ盾に頼る方針が見え隠れします。

この二つの訪問には共通点がありそうです。
それは、「私一人では用が足りないから、別の人、あるいはお薬を使いたい」という訪問者の逃げの姿勢です。
アウトリーチは、そもそも医学的管理を強化したり薬物治療を強要したりせず、人とのつながりを第一の手段として支援するものです。
そこへ片足は家の外(病院や薬)へと逃げ出しそうな訪問者に来られても、誠意ある支援としては受けとめにくいですし、そんな訪問ならお断りしたくなるのが自然な気持ちだと思います。
訪問者が言う「あなたを地域で支えたい」と、態度や行動で示す「あなたを私はこう支えます」の間に、利用者はきっと、裏切られない一貫したものを待ち望んでいるはずですから。