働くために必要な配慮とは?(専門職)


こころの元気+ 2013年7月号特集より


特集7
働くために必要な配慮とは?

大阪精神障害者就労支援ネットワーク統括所長
金塚たかし


「就職したい」と考えたとき多くの悩みや不安が出てくるでしょうが、障害を開示して(以下オープン)就職するか、非開示にする(以下クローズ)かは、就職活動の開始にあたり、皆が悩むことだと思います。
クローズで就職して、長く続かず離職してしまった方もおられると思います。
ただ、オープンでの就職を考えたとき、「就職先があるのか」「差別されないか」「給料は安くならないか」など多くの不安がつきまとうでしょう。
しかし障害をオープンにして、配慮をしてもらいながら働き続けている方は多くおられます。

今回は、障害をオープンにして各人に合わせた配慮をもらいながら働くことについて考えてみたいと思います。

それでは企業において実際にどのような配慮をしていただいているのでしょうか?

 

面接に支援者が同行できる

面接の場面は緊張するものです。極度の緊張から自分の病気や障害、就労への思いや企業担当者からの質問にうまく答えられないこともよくあります。 そんなとき、支援者が横にいるだけで安心感がありますし、配慮してほしいことを支援者から企業側に伝えてもらえます。

 

仕事場への支援者の同行(ジョブコーチ)

新しい環境、初対面の人たちの中で仕事を始めるときには、緊張から仕事が手につかないことでしょう。 そこで、仕事や環境になれるまで支援者が横について見守り、一緒に仕事をしたり、環境調整をしてもらうこともあります。

 

キーパーソン(担当者)の配置

仕事の指示や報告・連絡・相談するなどの作業担当者を1人に決めてもらいます。 そうすることで1度にいろいろな人から指示が出たりすることが防げますし、仕事に迷ったとき、相談をすべき人がわかっていれば不安を減らせます。
また1対1の関係をつくり、そこから徐々に人間関係を広げるほうがスムーズに環境になれるでしょう。
1番大きな安心感は、自分の不得意なものを理解している人がいることだと思います。

 

労働時間や日数、休憩時間などの配慮

不安と緊張の高い人にとって、仕事初日から週5日、フルタイムでの仕事には相当な疲労があると思います。
そのため、その人の体力や緊張度合いに合わせながらシフトを決めてもらったり、休憩時間においても安定した作業能力を発揮できるような配慮をしてもらいます。

 

業務内容での配慮

仕事になれるまで、不安と緊張で本来の自分の能力を発揮できないということはよくあります。 そこで作業の幅を狭めて、ミスなく作業し、その作業になれることに重点を置きながら少しずつ幅を広げていったり、不得意な作業を避けて得意な作業に配置してもらったりしています。

 

通院日の確保

精神障害のある人にとって通院は欠かすことはできません。そのために、必ず通院日の確保については配慮をしていただいています。

 

3者面談

当事者と作業担当者、支援者の3者で、作業のふり返りや仕事上での困りごと、スムーズに作業できるようなアイデアを出し合ったり、解決策を探る話し合いを定期的に実施したりしています。

 

以上のような配慮事項は誰がどのように伝えたらよいのでしょうか?
自分で伝える点は伝え、うまく伝えられない点は支援者から企業担当者に伝えていただくとよいと思います。
また、配慮をしてもらうためには何が必要でしょうか?
それは自分自身のことをよく知ることです。 自分自身が考える得意・不得意と、第三者から見た得意、不得意を照らし合わせ、得意なこと、努力すること、配慮してもらうことを就職活動の前に確認しておく必要があると思います。
お住まいの地域には就労支援機関やハローワークなどがあります。
まず、就労支援機関を訪問し、働くために準備しておくことを確認し、必要であれば訓練を行い、支援者とよく相談をして、企業にお願いする配慮事項を確認したうえでオープンでの就職にチャレンジしてみてください。

オープンで働いている皆さんが口にするのは安心して働けるということ。「まわりを気にせず薬をのめる」「病気を隠している後ろめたさがない」「困ったときに支援者や会社の人に相談できる」などと話されます。安心して自分の強みを大いに発揮し、自分の夢に向かって就労継続への道を探ってください。