発達障害のイイトコサガシ(専門職)


こころの元気+ 2013年11月号特集より


特集6
発達障害のイイトコサガシ
3つのワード

札幌市自閉症・発達障がい支援センターおがる
加藤潔


発達障害のことをどう説明したら多くの人にわかってもらえるかと日々考えているのですが、私ごときの未熟者にはとてもむずかしいミッションで、なかなか思い浮かばないまま時間だけが過ぎています。 長々とした説明ではなく、シンプルな言葉で伝えられたらいいなと思ってはいるのですが…。
そんな中、このタイトルで原稿を書く機会に恵まれました。 せっかくいただいた機会ですから、「イイトコサガシ~3つのワード」として、私の頭の中を整理しながら書いてみることにします。
ただ、頭の中の整理はもともとできていない人なので(頭の中だけではなくあらゆる整理も)、意味不明の文章になっているかもしれませんがご容赦ください。

なんてたってマニアック

脳の神経伝達の仕方が多数派の脳とは異なっているという「少数派の脳のタイプの持ち主が発達障害」だと私は考えています。
ですから、当然、多数派が気づかなかったり関心をあまり寄せなかったりする分野に発達障害の方々はヒットするわけです。それがイイトコなのですよ。

たしかに、そのマニアックな視点が希少価値となって、科学や芸術などの分野で多大な貢献をされる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、世間からはそのマニアックさに「ふーん、それで?」という評価しか受けることができない方も多数いらっしゃいます。
でも、そこにある違いは、たまたまその方にヒットしたマニアックな分野が、その時代やその地域の求める希少価値とマッチしたかどうかだけのことで、マニアックぶりの偉大さに違いはありません。 自信を持って、マニアックぶりを極めてほしいのです。

愚直なまでの律儀さ

地方都市から札幌に出てきた発達障害の青年がいました。
地下鉄で最寄り駅まで来て、そこからバスに乗るという手順を何度も確認し、いざ初めて来所相談にお越しになるという日。 約束の時間になってもいっこうに現れません。

2時間後、疲れ果てた表情でやってきた彼はこう言いました。「地下鉄駅に4列にお並びくださいっていう表示があって、4列になるのをずっと待っていたら、なかなか4列にならなくて乗れませんでした。札幌の人たちは4列にならなくてもどんどん乗っていて、ずるいですね」
私は、すぐに彼にこう伝えました。
「4列という意味は最大4列ということなので、札幌の人たちがずるいわけではないのですが、まわりに流されることなく、自分の信じたルールを律儀に守り続けたあなたは、人として一流です。愚直という言葉は時に否定的に使われるかもしれませんが、私は愚直という言葉を最大のほめ言葉としてあなたに贈ります。それがあなたのイイトコです」
要領よく生きようとするより、愚直に生きていくことのほうがはるかにかっこいいということに誇りを持ってほしいのです。

それでも健気に生きている

最大のイイトコはこれです。
少数派は、劣っていることでも悪いことでもありません。少数派というだけのことです。 でも、少数派であるがゆえに、多数派社会の中では生きづらいことがたくさんあるでしょう。
生きづらさをかかえながらも、それでも健気に生きている発達障害の方たちがいるという事実、これが発達障害のイイトコ、いやスゴイトコだと思います。
私はリスペクト(尊敬)しています。 少数派として、これからも堂々と生きていってほしいのです。