典型的な事例と対処法2


精神科を紹介されるときは、いろいろな身体症状の原因が他の科では治らなかった場合です。いろいろな可能性を否定した後、初めて精神科にかかることにしましょう。 

精神科にかかる前に、たいがいの人がすることは以下のようなことです。
いろいろな人や医師に精神科に行くべきか相談する
精神科の知識を集める
紹介された病院の情報を集める

初めて精神科にかかってみると、「おや」と思うことがあります。
主治医が、世間を知らないので、困ってしまう

そこで、このように対処することもできます。
通院する病院を代えることも可能だった

精神科にかかって、はじめの頃は外来ですみます。
薬を処方されたら、決められた分だけ飲む
薬を飲むと体が辛くなるので、それを主治医に訴えて、自分にあった薬を探してもらう
次の予約を入れられることが多いので、その時には通院する

精神科の初診では、どんなことが聞かれて、どんな風に振る舞えばいいのでしょうか。
睡眠や過ごし方について聞かれます
精神科の症状と思われることを素直に話します
精神科と関係ないかもしれない症状についても話します
ここのところどうやって過ごしているか、話します
気圧や気候の変化と体調について話します

それから、精神科でも症状や薬物療法にともなって必要になる検査があります。こちらから依頼しないとしてくれない場合があるので気をつけましょう
血液検査、血圧の検査をしてもらうよう依頼する

経験談を「こころの元気+」の特集から見てみましょう
筆者の所属は執筆時の所属先です。


薬を減らして元気になる!


薬と、そして多くのスタッフ
奈良県/井上和哉さん

 

初め私が受けた治療は、薬物療法でした。その頃は新薬もなく、副作用が非常に出やすい薬ばかりでした。ところが二〇年たつと、副作用の非常に少ない新しい薬が出てきたおかげで、当時一日五〇錠ほどの薬を服薬していましたが、今では全部あわせても一日二〇錠ぐらいで症状は出ません。一〇年前は薬を大量にのんでいたので、動悸や息苦しさなどさまざまな症状が出ました。
そして意欲減退で何もできず、そのことを医者に伝えると「薬の調整のための入院をしませんか?」と言われ入院しました。初めは怒りやムカつきがありましたが、徐々にそれらの症状もなくなりました。
入院中に起こった出来事といえば、看護師さんが非常にやさしくしてくださったこと、そして主治医からの言葉で「もうすぐ退院ですよ」といわれ、一分でも一秒でも地域に出たいと思いながら退院したのを覚えています。
そして退院したときに同じ病室の患者さんから、「もうこんなにつらい所に来ないようにがんばってね」と言われました。
その頃は、神経過敏で何事も真剣に考えていて、まわりが見えなかった様子がうかがえました。そしてそんな時代を乗り越えて、今があると思えるようになりました。
病院で出会った仲間の恩、親に対する恩についても考えます。自立支援法についてヘルパーさんと会話していると、「親を大切にしてあげてくださいね」「親孝行ができるのは、親が生きている間だから」と言われます。毎日、楽しくヘルパーさんとのコミュニケーションを楽しみながら成長してゆく私の姿を見て親は安心しています。
私自身もストレスを抱え込むことなく、楽しい毎日をおくっています。「統合失調症も風邪と同じく症候群なのかな?」と主治医に話したら、「そうかもしれないですね」と言われました。


僕はあなたを信じる
大阪府/神澤郷子さん

 

私が一五年前に統合失調症を発症した頃は、主に処方されるのは従来薬で、その他にも副作用止めや数種類の眠剤が出ていました。
それまで薬とはほとんど無縁の生活だったので、体がついていかず絶えず強い眠気やのどの渇き、倦怠感に苦しめられていました。新薬に切り替わってから副作用は減ったものの、病状はなかなか安定しませんでした。そのためか主治医も減薬には慎重で、私が少し下り坂になると、頓服が追加されるといった具合でした。
しかし、支援センターでの就労移行支援に参加するようになり、日中の眠気が困ると相談して、昼食後の薬を抜いてもらうことになったのです。
ところが直後に、人間関係のもつれから不調に転じ、封印していた自傷癖が出そうになりました。薬が増えることを覚悟で次の診察時に、つらかったことを隠さず正直に話しました。「でも自傷はしなかったのですよね?」「はい」「どうやってふんばったの?」「傷跡が残ったら、それを見てつらくなる人がまわりにたくさんいると思ったから」。主治医は、それを聞いて安心したように「神澤さんが自分でそれに気づいてふみとどまった。僕はあなたを信じる。調子を崩しても、心配のない方法で解消できるってわかったから、昼の薬は完全になくしましょう」とおっしゃいました。
初めて心から主治医に信頼されたと確信でき、大きな自信になりました。減薬して一か月たちましたが、今のところ大きな波はありません。むしろだるさがとれて日中活動的になったおかげで、夜もよく眠れるし、「元気になったね!」と言われます。周囲の支えが、今の私の何よりの「薬」です。


薬はやめられないけれど
三重県/川北誠さん

 

私は三七歳、精神科に通院して一三年です。
ピーク時は、服薬は一日三回と眠剤でした。現在では、一日一回、眠剤はなし、となりました。一日三回から、朝晩の二回に、そして晩の一回にと減りました。こちらの希望を主治医に伝えて、主治医の指導のもと、減らすことができました。眠剤は徐々に弱くしてもらって、なしにすることができました。
薬が減ったことによって、体のだるさ、日中の眠気がなくなり、活動的になりました。また、僕の場合は、眠剤を使っていたときは熟睡感がなかったのですが、自力で眠れるようになって、グッと眠れるようになりました。
また、夕食後に定期薬を服用すると、七時・八時に眠くなってしまうことを相談して、定期薬も寝る前に服用することになりました。
ただ、これで薬なしにはならないのですね。以前は主治医に、「いつまで服薬を続けなければならないのですか?」
とよく尋ねていましたが、今ではそのような質問をすることもなくなりました。服薬の必要性を、自分で認識できたからだと思います。
服薬を勝手にやめると、再発する可能性が大きいとよく聞きます。実際僕も、服薬こそ当時の医師の判断で中止しましたが、通院を勝手にやめて再発しました。
服薬を続けることによって元気でいられるのなら、それでいいと思います。ただ、少なくてすむのなら、やっぱり少ないほうがいいですよね。それには、自分の希望をはっきりと伝えることが必要だと思います。


私たちも薬の勉強を
茨城県/あゆみさん

 

誰でも一番理想なのは、医師との信頼関係があって、なおかつ副作用のない薬を処方してくれることです。ですが、そんなケースはごくまれです。では、どうしたら理想に近づけるのか。まずは、自分の病状を理解することです。たとえば、「イライラする」のなら、いつ、どんな状況でイライラするのか。四六時中イライラしているのか、あるいは特定の人の前や特定の状況でイライラするのか。これだけでも、薬は変わっていきます。
次に、その病状を主治医により正確に伝えることです。主治医にとっては、どんな些細な情報も、薬を選ぶ重要な基準です。医者とて人の子、ゴマンとある精神薬のなかから、一発でピタリとあう薬を選べるわけではないのですから。
そして、処方された薬について疑問や不安を感じたら、すぐに主治医や薬剤師に聞くことです。私の場合は、副作用で太らないのか、そしてだるくならないのか、この二点に重点をおいて、薬が変わるときに主治医に確認しています。そして、あとは処方された薬をきちんと服用するのみです。
今は、主治医の処方通りに黙って薬をのむ、という時代ではありません。私たち患者側も、積極的に薬について学ばなければいけないのです。なぜなら、自分が元気になりたいから。だから薬をのむのではないですか?


薬との長期戦を覚悟
小久保美紀/埼玉県

 

私は強迫性障害(強迫神経症)歴二二年です。しかし、病院に行き始めたのは昨年の二月です。症状が軽いので行かなかったのではなく、精神科の門をたたくのが怖かったのです。
一つの症状がある程度続くと、今までの症状は治まっているのに、また新たな症状が…の繰り返しでした。本来の強迫の症状以外にもうつ状態にもなり、「疲れて体は寝たいと言っているのに、心はざわざわして眠くない」本当に頭と心と身、すべてがバラバラに歩き出して行ってしまうような…。早朝覚醒にも一年ぐらい悩まされ続け、眠剤をもらうようになってからも、量の調節がうまくいかず、半年ぐらいかかってやっと普通に近い眠りをもらえました。
私は、本当に薬を処方してくださった主治医の先生とまさに薬に助けられました。薬の調整、とくに精神などの薬は、薬が効いてくるのに時間を要することもありますし、微量の調整でよくもなり、悪くもなりますし、副作用に悩まされている方も多いはずです。
私はここまできて、やっと「薬に頼るしかない」と、長期戦になることを覚悟しました。今は薬で治まっていますが、今の私がまたあの状態にもどるといわれたら、できる限り薬を増やしてもらうでしょう。
もちろん先生との信頼関係がなければ、できないことだと思います。自分の症状を訴えても、後は自分自身の問題ですからねぇ…「それは薬の範囲じゃないんですよ」なんていう医者には、かかりたくものないですね。


こころの元気+15号 特集より