経験談


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精神科を紹介されて、初めて精神科医にかかるとき、予診なども含めて普通の精神科では初診には30分くらい時間をかけます。そうでない精神科は、あまりよくないと言えるでしょう。
精神科では対話によって、診察がされます。
精神科ではどんな質問が用意されているのでしょうか。
医師:「どうしました?」
自分:最近数週間の自分の状況について話す
ここから、医師の質問は話した自分の状況から、さまざまに掘り下げていく内容になっていくことが多いです。

典型的な質問は以下のとおりです
医師:「眠れていますか?」
自分:睡眠の状況について話す
医師:「不安がありませんか?」
自分:不安があるかないかについて話す、それ以外のことについても話す
医師:「希望がありますか?」
自分:希望があるかないかについて話す
医師:「今、困っていることは主に何ですか?」
自分:生活や学業、仕事など普段できていて、今はできなくなったこと、気分や精神の変化などについて話す
医師:「何か言葉が聞こえるとか、人から何か言われることがありますか?」
自分:普段と違う正体不明の声などがある場合、説明する
医師:「何か他に気になることはありますか?」
自分:伝えきれなかったことについて、話す

できれば、伝えたいことについて、箇条書きでもいいので事前に整理しておくといいでしょう。では、他の人はどんなふうに精神科医を使っているのでしょうか。薬物療法中心になりますが、「こころの元気+」9号の特集から見てみましょう。


主治医と薬とこうしてつきあっています


薬は私を支えてくれる仲間だと思います
小松達也/千葉県

薬をのみ始めたころは「のんでも変わらない」と思っていました。
医師からも充分な説明がなく、与えられた薬を何も知識がないままに、知識を与えられないままに、無理矢理のまされているというような思いでした。
そして、薬の重要性に気づくまでは、親に「のみなさい」と言われないとのまないような状態でした。現に二か月間まったく薬をのまなかった時期もあります。
しかしそれは無知からくるものでした。療養が長く続くにつれ、統合失調症のことを勉強するにつれ、薬の重要性に気づきました。
病気のことを知ることを怖がる人も多いかと思いますが、「何者か」がわからないと無用に怖がることになり、深みにはまっていきます。私もそうでした。
しかし病気を理解し、薬の知識を得ることで、必要以上に怖がることがなくなりました。それからは積極的に医師にも質問するようにしています。積極的に薬と関わっていくと、自分も前向きになってきます。
「何者かわからない病気にむしばまれている」
と思っていたのが、薬のことを知り、医学的に病気を知ることで、無理をせず、自分らしく、病気と闘わずに生きていこうと思えるようになりました。今の私にとって薬は自らを支えてくれる大事な仲間です。
大げさな言い方かもしれませんが、「薬に生かされている」部分も多いと思います。
しかし、それでいいと思っています。薬は、よりよく生きていくための「工夫」の一つだと思います。
誰にだって弱い部分があります。その弱い部分に、「工夫」として薬を使うことにより自分らしく生きていけるなら、何も怖がることもないし、不安がることもないし、後ろめたく思うこともありません。
「誰もがもっている弱い部分が私の場合、病気なんだ」
「でも、工夫して乗り越えているじゃないか」
と胸を張っています。


自分の希望を思い切って医師に伝えたら…
熊田貝/神奈川県

私は高校三年生のときに入院しました。お薬は出されるままにのんでいました。当時の主治医は生活指導に重点を置いていて、薬について話し合いをした記憶はありません。
専門的なことについて、素人は口を出さずに、専門家に丸投げして託すという時代背景がありました。そして当時の私は、医者まかせを疑問に思いませんでした。
のんでいる薬の種類の多さも、言ってみれば「偉大なる医師」という聖域が私のなかに生まれる要因でした。患者が薬について自分の希望を言うための権利と方法があることを、この雑誌の「統合失調症の薬と安全につきあう」を読んで知りました。
処方について言及するのはたくさん専門知識がいると思っていました。薬の話を医師と共有する方法もわかりませんでした。
ある診察時間、現在の主治医に前々からの願いを思い切って言いました。
「もし副作用止めが処方されているなら、できるだけ減らしていただきたいのですが」
すると、
「あなたの場合、単剤処方にすることは考えられませんが、時期を見て副作用止めを減らして行くことはできます。ただし、処方を変えるのは症状が安定しているときにします」
と、単純明快な答えをもらいました。しかし、診察時間に薬について質問することは気がひけます。他の患者の待ち時間を長引かせる気がするからです。処方された後に、薬剤師の方に聞くことにしています。
自分がのんでいる薬の、商品名だけは暗記しています。しかし個々の働きや、副作用止めがどれかは理解していません。時間的・精神的な余裕がある環境がほしいです。薬について医師と話し合いができるのはそれからだと思います。


僕たちも患者もかしこくなろう
川北誠/三重県

精神科に通院して一二年、現在の薬をのむようになって九年になります。以前に通院していた病院で処方された薬では、下痢と便秘を繰り返し、そのことを訴えると、医師から「どんないいお薬にも、副作用はあるんだから…」と言われました。
「いいお薬」を実感する前に、ひどい副作用が現れるとつらいです。現在では、服用している薬の具体的な効能は知りませんが、主治医を信頼して、服薬を続けています。「こころの元気+」第4号の特集「薬の副作用を減らして元気になる!」もたいへん参考になり、その記事を通して、主治医とディスカッションもしました。
薬の量が多くてお悩みの方もあるかと思いますが、僕の場合は、調子が悪いと訴えても薬は変わらず、それが逆に不満であったりもしました。
それも、第4号の「状態が悪くなったらすぐに薬を変えるべきなのか?」を読んで、納得しました。調子が悪いときは、主治医のアドバイスにより、薬以外の要素を調整しています。
服薬を納得して続けるには、僕たち患者もかしこくならなければ、と思います。そして、疑問点はすぐに尋ねられるような、医師との信頼関係も不可欠だと思います。それは、一朝一夕に築けるものではないと思います。
アドヒアランスという言葉も「こころの元気+」で知りました。これは何も精神科に限った概念ではないのですよね。僕は現在、内科や眼科でも薬を処方されていますが、飲み合わせに注意しなければならないので、お薬手帳を活用しています。これを医師や薬剤師に見せることによって、複数の科の薬を、安心して服用できています。以前は「薬をのまなくていいようになりたい」と思い続けていましたが、現在では「薬をのんで元気にいよう」との考えに変わりました。
それは、医師との信頼関係ができて、自分が自分の病気を認めて、薬の有効性に気がついたからだと思います。


こころの元気+9号 特集より