中央省庁、地方公共団体における障害者雇用者数の水増し問題についての声明  2018年8月27日


2018年8月27日 

「中央省庁、地方公共団体における障害者雇用者数の水増し問題」についての声明 

認定特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構・コンボ 

共同代表理事 宇田川 健 

 地域精神保健福祉機構・コンボ(以下=コンボ)は2007年1月に設立された認定特定非営利団体です。精神障害者への根拠に基づいた情報発信の活動、権利擁護の活動、精神障害者同士での相談支援を推進する活動、精神障害者が普通に地域社会で暮らせるための活動を推進しています。

現在、調査が進められている各中央省庁および地方公共団体の障害者雇用者数の水増し問題は、予想以上の広がりをみせており、障害者の雇用率制度の存続の危機にもつながりかねない重大な問題と捉えています。また、精神障害者も今年から障害者雇用率に正式にカウントされることとなりました。その意味で今年は大きな節目となる年ですが、このような問題が明らかになったことを極めて遺憾に感じています。 

 この問題の本質 

 本質的な問題の一つ目は、行政機関が障害者基本法の基本的な理念を自ら空洞化させたことです。つまり障害者の自立や社会参加を阻害する行為を行ってきたことです。共生社会とは「健常者」が「障害者」に施しを一方的にするということではありません。今回の問題に照らし合わせて言えば、むしろ障害者が行政や民間企業に雇用され内部からものが言うことができる仕組みを作り、よりよい社会をつくることが目的だと思います。国、地方公共団体は現状をそのように変えようとしなかったことがこの問題の一つ目です。 

本質的な問題の二つ目は、障害者雇用促進法理念を踏みにじっていることです。今回、中央省庁、地方公共団体が障害者であるかないかを勝手に判断していることが明らかになりました。勝手に障害者と位置付けられた人の思いを忖度する担当者はいなかったのでしょうか。
 そもそも制度上は障害者手帳の所持をもって障害者とカウントすることが原則です。それを適用する場合も、本人が障害者雇用率の対象となることに同意することが「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」に明記されています。ある人に対して、あなたは障害者であると勝手に位置づけるなどということは、人道に反する最悪の行為と言わざるをえません。これを、国・地方公共団体は障害者雇用率制度が始まった頃から行なっていたということが明らかになりました。 

本質的な問題の三つ目は、障害者差別解消法に関連することです。誰がどのような障害を持っているかを決定するのが恣意的であればこの法律は機能しなくなります。「あなたを障害者として障害者雇用にカウントする」「もう障害者雇用にはカウントしないので、あなたを障害者としない」と国・地方公共団体の担当者が勝手に判断することが可能になり、またそのことで、逆に障害を持っている人たちを差別し侮辱する行為となっています。 

早急に信頼回復を 

一般企業より高い法定雇用率が課せられている国・地方公共団体は、障害者施策を推進し、共生社会を実現する立場にあります。この制度での一般企業のロールモデルとなるべきですが、その信用が完全に失われたとコンボでは認識しています。 

また、その上で一般の企業が障害者を積極的に雇用しなくなることを心配しています。さらに、法定雇用率を守らなくてもいいのだという認識が一般企業に広がったり、障害者の雇用率制度をなくすべきという議論が起こることを危惧します。 

 ここに提起した一つ一つの問題について、政府・国会を問わず「なぜこのようなことが起きたのか」という原因追究を徹底して行い、早急に障害者雇用率制度の信頼回復につながる措置が取られる必要性を強く訴えます。

以上